touzi

071222_01
ぬるい海を泳いでいたら、人間の形をしたクラゲに出会った。とりあえず会釈して通り過ぎた。

ぼくのドアを叩くもの

夜だ。風の音が気になって屋上に出てみた。南東の風が吹いている。さっき見えていた月も黒い雲に隠れてしまった。息のある強い風だ。北風とは明らかに違う気配があって、生命を感じさせる。海の向こうで今日も生きている。それは夏。

PRESENT

071220_01
もうすぐクリスマス。ぼくは子供じゃないから、プレゼントをもらってもうれしくない、と思われているかもしれない。しかし、ぼくはプレゼントがほしい。でも、家のクリスマスツリーは小さいから、ちいさな靴下しか、ぶら下がらない。庭に大きな木が植えてあるから、そこに巨大な靴下をぶら下げてみたい。そして、北の空に向かって叫ぼう。
おーい、サンタ、靴下はここだ。

仕事男

ネクタイをはずして7年になる。腕時計も引き出しの中で止まったまま。写真の男は古い友人N。彼はネクタイ、腕時計がよく似合う。ケータイをもつ姿もナカナカさまになっている。店の女性客の何人かが彼のファンだ。本人は知らないかもしれないが。

こたつ

何年も前から、ぼくの家にはコタツがない。コタツで食べるミカンはうまい。ババ抜きや7ならべ、スゴロクをするのも楽しい。コタツがあれば、嫌いな冬も少しは楽しくなるのかもしれない。そういえば、冬が嫌いになった頃と、わが家からコタツが消えた時期は一致するような気がする。

曇り空

071217_02
夏空に白いアイスクリームが映えるように、冬の曇った空には焦げた焼芋がよく似合う。寒い冬の休日は、老哲学者のように黙々と庭の枯葉を集め、落ち葉焚きをするのが良い。人生の哲学とはそういうものだ。しかし、焚き火をすると当局に通報される。本当かどうか知らないが、最近さかんにヘリが飛び回るのは、焚き火を見つけるためだという。そういうわけなので、曇り空の今日、ぼくは哲学者のような顔で庭の枯葉を黙々と掻き集め、穴を掘って、埋めた。救いのないエンディングである。まるでフランス映画だ。そこでぼくは先日友人から頂いたサツマイモをガスコンロで焼き、それをジャケットのポケットに入れ、屋上に上がった。屋上のテーブルに焦げた焼芋を並べてみると、それはミルク色の冬空によく似合っていたのだった。

新しい天体

071216_01
夜の高速道路は星空に続く滑走路のようだ。ぼくの運転するスバルは、かすかなタービンノイズを残し、闇を切って加速していった。今夜はOさん宅で年末恒例のお食事会。午後8時、車は予定どおり閑静な住宅街に進入した。ドアを開けると、明りを落とした室内には落ち着いたピアノ曲が流れていた。それはどこか影を持つ大人の雰囲気…つまり、ぼくにピッタリの選曲であった。後で知ったのだが、このアルバムはF少年のブツらしかった。あとで借りることにしよう。Oさん宅での食事会が楽しい理由については、その会話内容が繁多な日常から遠ざかっているせいもあるが、なによりも奥様が心をこめて作った手料理に負うところが大きい。今夜もまた、珍しい作品の数々がテーブルを囲む馴染みの面々を楽しませていた。さて、酔いが回りだしたころ、テーブルでは「テリーヌ」という料理が話題になっていた。「あのテリーヌはテリーヌではない」と、ご主人が頑なに主張されているのだった。そのテリーヌとは、今回奥様がこしらえたテリーヌのこと。ぼくはさっそくそのテリーヌ?を所望し、テーブルに運ばれるのをワクワクしながら待った。それは上質なハンバーグのようで、とてもすてきな、ぼく好みの味だった。はて、これがテリーヌでない理由とは…。ご主人の定義するテリーヌとは、もっと野趣があって…etc、ということらしかった。おそらくテリーヌにも色々あるのだろう。作る人の数、いや、星の数ほど。そういえば、ブリア・サヴァランという人は、その著書「美味礼讃」で、新しい星を発見するよりも新しい料理を発見するほうが人間を幸せにするものだ 、と言っていた。なるほど、新しい料理の発見は、たしかに人をしあわせにしそうだ。そしてそれは、意外と簡単なことなのかもしれない。と、ぼくは少し酔ったアタマで考えた。新しいテリーヌ?をぜいたくに味わいながら。

スイーツ(笑)

今年ネットで流行った?流行語に「スイーツ(笑)」というのがあるのだという。ほんと? ぼくは、はじめて目にしたけど。いったい、なんだろうと思って、リンク先を見ると、
 「スイーツ(笑)」
特に、マスメディア(おもに女性誌)の女性向けの特集にならうことがおしゃれであると考え、特集を鵜呑みにして気取っている女性を揶揄する言葉。実際はメディアに踊らされているとしか言えない状態であることが多いのだが、当人にはその自覚はない。そのような女性が洋菓子・デザートのことをスイーツと呼ぶことに由来する。いつ、誰が、どのような経緯で使い始めた言葉なのかはさだかではない。
Hatena Diary Keyword
 だそうだ。 ほんとかしら。

R35

昼すぎ、人妻 F がコーヒーを買いにきた。ちょうど今朝、新しい種類のグアテマラを焼いたので、彼女に試してもらうことにした。
「コーヒー、おごるけど、飲む?」
「飲む飲む飲む~~~~!」
予想通りの反応だった。彼女はいつも飢えている。
「ねえ、なんか、いいCD持ってない?」
彼女がうまそうにコーヒーを飲んでるのを見ながらぼくは聞いた。
「うん、持ってるよ。あーる35」
「あーる35?なんじゃそれ」
「もう一度妻を口説こう、というコンセプトで作ったアルバム、だって」
「はぁ?」
くだらねえ、と、ぼくは思った。が
「で、今持ってるの?」
と聞いてみた。
「うん、車の中」
「貸してみ」
「いいよ」
ぼくは借りてみた。
コンセプトは実にくだらないが、ナカナカいい曲が入っている。これを書いている今も聞いている。