アンテナ

今これを読んでいるあなたもそう感じることがあるのかもしれない。そう思いたくて書いてます。自分が急に変わってしまったことに気づくことはないですか?
昨年末、冬至が来たころ、自分が別人になったような感覚があったのですが、数日前、再びそれが起きました。なにが変わったのか。「自分の感受性くらい」という茨木のり子さんの詩を読んで気づきました。感受性が変わったのです。冬至の頃、ぼくの機能のうちの、なにがそれを必要としたのか、アンテナが一本、中空に伸びました。そして、つい数日前、それは引っ込み、かわりに別のアンテナが立ちました。奇妙な表現ですが、そういう感じなのです。変な人と思われるかもしれませんが、しかたありません。自分の体は自分でコントロールしていると思いたい気持ちはわかります。

いそしぎ

空が明るい。どうやら冬も終わったようだ。ほっとする。
この冬は何事もなかった。no problem.
頭の中の具合がずいぶんちがう。
この前まで、満ちた潮が飽きもせず堤防を洗っていた。
今は潮が引いて、砂浜ではイソシギが遊んでいる。

花はどこへいった

さっき読んだ本に、日本の女は結婚したとたん堕落する、女でなくなる、と、書いてありました。女は放っておけば中年にならなくたって居直ったオバハンになっちまう。とも。
ふ~ん、そうかな。
ぼくは珈琲を飲みながら、しばし思い巡らしてみました。
これは女性にとっての不幸ではなく、男の悲運を嘆いてるわけですね。もっとも、女としての魅力を失うことで男に愛されなくなれば、それは女にとっても不幸かもしれない。
安心した人間からは魅力、色気なんて出てこないんだそうです。
結婚は(本人は気づかなくとも)根本的に女性を安心させるものなのでしょうか。

フロントグラス

20060220
天気予報では午後から晴れることになっている。たいてい当たらないので信じなかったが、海の近くで食事をすることにした。海沿いの食堂は、月曜だというのに、大変混んでいた。店の定休日を変えようかと本気で思ってしまう。食事を終え、堤防に車をとめて珈琲を飲んだ。雨に濡れたフロントグラス。その向こうの暗い空と海。このシーン、映画「悲しみよこんにちは」にあったような気がした。でも、思い出せなかった。雨は一日中降っていた。

長い坂道

第三日曜日で休み。お昼過ぎ、Nさんちに遊びに行った。Nさんちは、ぼくの家から見ると南に位置している。これはどういうことかというと、地球儀を見ればすぐわかることだが、下のほうにあるということである。下にあるということは、下り坂をチャリンコで降りるような気分で行けるということだ。物理的には間違っているかもしれないが、心理学的にはそうなっていると思う。少なくとも、ぼくにはそうだ。高速道路で行くと近いのだけど、山道を選んで二倍くらいの距離をかけて辿り着いた。これも大事なことである。住宅を設計している人なら理解しやすい。ファサードに属するアプローチ設計の問題だ。いや、もっと簡単に言うと、東京に行くのに飛行機を選ぶか夜行列車を選ぶかの問題である。飛行機を選ぶと、体が東京に着いても、心はまだ広島あたりをぐずぐずしていたりする。少なくとも、ぼくはそうだ。心と体がひとつになって、N邸に到着。ここまで辿り着くのにずいぶん紙面を浪費してしまった。というわけで、
中略
内容の濃い、芳しく(シンナーが)有意義な一日であったと思う。

ボタン

ズボンのボタンが取れた。
いつもなら家人にお願いするのだが、ひまがあったので自分で付けることにした。
何年ぶりだろう。
結婚して以来、一度もやった覚えがない。
とにかく始めてみた。
糸を通すのにずいぶん難儀した。
針の穴って、こんなに小さかったっけ。
やり始めたら、手が憶えていた。
完成。
やりかたに間違いがなかったかネットで調べたら少し違っていた。

役に立たない能力

朝一番にいらしたお客様。彼女と会うのは二ヶ月ぶりだった。
けさ、ベッドから起き上がった瞬間、脈絡もなく彼女の顔が浮かんだ。朝、起きがけにふっと頭に浮かんだ人と、その日なんらかの形でかかわることがよくある。また、初めて会った人と話していて、あ、ぼくはこの人の誕生日を知っている、と思うこともある。聞いてみると、ぴったり一致する。大変驚かれるのだが、種も仕掛けもない。調子に乗って「誕生日を当ててみましょうか?」などと言って、当てようとするとさっぱり当たらない。ちなみに、うちの店では「あなたは水瓶座でしょう」というと、かなりの確立で当たることになっている。

コロッケ

ばんごはんのおかずはコロッケだった。
という日記がここにあったのですが、後で読んだら頭痛が痛くなったので消しました。もし、ぼくと同じ目に合われた方がいらしたら、深くお詫び申し上げます。ちなみに今夜(17日)の晩ごはんは、とうふ横丁の豆腐が入った豆乳鍋です。

Wednesday

朝から雨が降っていた。
大滝詠一の「雨のウェンズデイ」が店で流れているとき、黒いドレスの女性が入ってきた。
「懐かしい曲ですね」
彼女は静かにそういった。ドラマはこうして始まることもある。
ある晴れた日、空に一切れの黒雲が流れてくる。
やがて空は雲に覆われ、風が吹き、雨が降り出す。

傘がない

まるで魔法をかけられたようにみえる。
「考え方がどんどん狭くなって辛いのです」
初老の科学者は見えないボールを手ですぼめるような仕草をしながら微笑んだ。
トレードマークだった磊落な笑いは消えうせ、なにかに怯えているような目つきでぼくを窺い見る。
交通事故をきっかけに精神を病んでしまったそうだ。
暗い魂の奥からおびただしい数の触手が伸びてきてぼくにまとわりつく。それほどに救いを求めている。
しかしそれはぼくの一言で瞬時に引っ込んでしまう。
雨に濡れながら歩いている人に傘を差してあげられない。
謝るのもおかしな話だが、本当にどうしようもない。