requiem

車で通勤している。最近カーラジオを聞かなくなった。なぜだかわからない。もっぱら、クラシックのCDをかけている。性格を反映してか、暗い曲をかけることが多い。暗い夜道をなにも考えずに走り続ける。ぼくは夜にとけて、ぼくが車なのか、車がぼくなのか分からなくなる。気がつくと、目の前をドイツの高級車が連なって走っていた。カーステレオからはモーツァルトのレクイエムが流れている。ぼくは葬送の列の最後を走っているような気分になった。

まずい夢

まずい夢を見た。何がマズイかというと、「ぼくが、こんなことをするはずがない」と、信じていることをやっちゃう夢。法に触れるとか、人に迷惑をかけたりすることじゃないのだけど…。自分が自分であるために、ぼくは独自のルールを作って密かに守っている。それを嬉々として破る夢だった。なんだか不安。自分の中でナニか変化が起きてるのカモ。やぁね。寝る前に酒を飲みすぎたせいかしら。

秋だから

わけもなく反省する日々が続いている。
こんなに反省してどうするんだ、というくらい反省している。
だから疲れている。(甘いものが欲しい)
反省はエネルギーを消費するのだ。(酒も消費する)
いつものことだから、心配はいらない。
心配してくれる人がいればの話だ。

風車

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朝起きると青空が見えていた。台風は昨夕長崎をかすめ、日本海に抜けたらしい。西向きの窓からさわやかな風が吹き込んでいる。屋上に上がって遠くを眺めやると、いつになく指宿の知林ヶ島がはっきり見える。台風の後は、遠くまで見通せることが多い。今夜の星空が楽しみだ。ぼくは台風の後片付けをはじめた。飛んできた葉っぱや小枝を拾い集める。さらりとした、気持ちのいい風が吹き続けていた。見上げると天は高く、薄く広がったうろこ雲の下を、群れを成した羊雲が先を急いでいる。ずいぶん前に、どこかで同じ空を眺めていた。そんな気がした。風は見えないが、いろんなことをする。風車を回し、羊雲を追い、人の作ったものを壊す。夕方、風に吹かれながらビールを飲んだ。遠い山の端で、風車はいつものように回っていた。
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(写真上は屋上から見える北の風車、下は西の風車)

炎の揺らぎ

台風が通過中だ。風と雨が原初的なリズムで叫んでいる。その間隔、強弱は恐ろしくセクシー。ぼくは好奇心をおさえきれず、屋上に出てしまう。雲は流れ、風が脈動している。しばらく無風状態が続いた。たいしたことねえな、と油断していたら、暴力的な風がドカンと来た。思わずよろめき、はいつくばって、あたふたと退散。規則的でもなく、ランダムでもない。人の脳は、こういうアルゴリズムに弱い。抗いきれない。生命のリズムが規則的でなく、かつランダムでもないならば、人がこのようなアルゴリズムに惹かれるのは理の当然なのかもしれない。人を口説く天才の才とは、ひょっとすると、このリズムなのでは、などと、突然くだらないことを思いついたりして。

vodka

Vodka_03さいきん、また酒を飲みだした。と言っても、寝る前に少しだけ。酒を飲むと、時は、あっという間に過ぎる。時間がもったいなくて、酔えない。でも、自分との会話には、酒がすこし必要だ。秋になると、自分との会話は、ちょっと、しんどい。もう一人の自分、My Friend. もう少しがんばろうか。

魔法の鏡

ミラーマンが、また事件を起こしたのだという。
ネット上の新聞にそう書いてあった。
わけが解らずに、本文を読んでみた。
やれやれ。
ぼくの知ってるミラーマンとは違う人だった。
荒井由美の歌に、「魔法の鏡」というのがある。
魔法の鏡を持っていたら
あなたのくらし映してみたい
もしもブルーにしていたなら
偶然そうに電話をするわ
つくづく思う。鏡は女の持ち物だと。

air

朝、エンジンがかからないことがある。
車なら…古い車は、チョークを引く。
濃い混合気がシリンダーに送られ、やがて火がつく。
心が弱ると、体も疲れやすい。
寒い朝は、チョークを引く。
ぼくのイメージする心は、空気エンジン。
それは空気で動き、風を送り出す。
空気エンジンのチョークは、ある朝、ゴッホのひまわり。
ある午後は、米米クラブの浪漫飛行。
空気と音楽と絵で動き出す、クラシックエンジン。

ちいさいひまわり

今朝のこと。川の手前のゆるい右カーブ。一群のひまわりが風に揺れていた。ひまわりの季節は終わったはずなのに。昨夜のことを思い出した。ぼくは、ある詩を見つめていた。広い野原。だれかが、ぽつんと一人、ひざを抱えている。そんな詩だった。

ブラジル

今日も天気が悪い。
ひまだなあ、と思ってたところに、常連のオジサンがきた。
オジサンと言っても、もうオジイサンに近い。
「ふられたよ」
顔色が悪いな、と思ってたら、開口一番、そういった。
「彼女に?」
「うん」
「はー、これが切れたんやろ」
ぼくは指でワッカを作ってみせた。
「わしは金は使わんよ」じろりと見た。
「ふーん、実力か。えらいね」
ぼくは本心で言った。
でも、考えてみれば、えらいというのも変だ。
「その、ブラジルを飲ましてくれ」
ぼくは、いつもより丁寧にいれてあげた。
「うまい。ほんとうにうまい」
目が輝いた。雲間から日が差したような笑顔だった。