オレンジの匂い

Orange_01当店のビルの屋上にはプチ農園があり、ほうれん草やパセリ、レタスなど季節の野菜が植えてある。高い場所にあるせいか害虫が来ない。だから無農薬。その隅にレモンとオレンジの木が植えてあって、毎年数百個の実をつける。それらの肥料は、当店のコーヒー滓だ。ヒマなときぼくが屋上まで運んでいる。運んだついでに、オレンジを10個ほどちぎってくる。それを絞り、ジュースにして飲む。芳香豊かで実にウマい。しかし難点がある。店に充満しているコーヒーの匂いとオレンジの匂いが混ざって複雑な匂いになる。さっきいらしたお客さんも、あたりをきょろきょろ見回し、「なんだか変わった匂いがしますね」とおっしゃった。

月齢十五

夜のアスファルトは滑らか。闇の中をすべるように車は走る。ゆるやかな左カーブの交差点。信号待ちをしているぼくを、誰かが、じっと見ている。それは桜だった。道路向こうの暗い闇からこちらをうかがっている。その花は生まれたてのくせに大人の気配。心が揺らぎ、ぼくは不安定になる。信号が変わった。左折して丘を下る。遠くの雲に亀裂が入り、そこから大きな月が現れた。心の安定を欠く月夜。

歯医者にGo!

起床9:00。窓を開けると空は灰色、予報どおり天気が悪い。今日の行動予定は天気次第。天気が良ければコーヒーを持って花見にドライブ。悪ければ歯医者にドライブ。というわけで歯医者にGo! 病院が好きな人はいないと思うが、ぼくは異常なほど病院がコワイ。きっと、なにかトラウマがあるに違いない。歯科医院の電動リクライニングシートに身を沈め、ぼくは目をつむって脳と体が分離しているイメージを描く。「ぼくは脳である。歯ではない。痛い、というのは、細い神経を介して脳に届く、きわめて微弱な電流に過ぎない」というイメージである。マスクをしたキレイなお姉さんが、歯茎の ポケット とかいう部分を針のようなもので順次つついていく。これが痛い。しかし、痛いといって騒ぐとカッコ悪い。男はつらい。診察の結果、虫歯もなく異常なしであった。虫歯になりにくい人は歯周病にかかりやすい。今回、歯医者に行ったのも、歯周病が怖いからで、ぼくは歯周病の原因となる歯石を取ってもらうために、定期的に歯科医院に通っている。といっても2年ぶりだったけど。

お世話になりました

早いもので、このブログを立ち上げて二年が経ちました。1日400アクセスを数えていた当ブログも、今では100を少し超える程度。力強く輝いていた太陽も、いつしか西に傾き、やがて夜を迎えようとしています。思えばいろんなことがありました。長いようで短かった二年間…。
それではみなさん、さようなら。
いつかまた会う日まで。
2007年4月1日 スプーン

Let’s begin

以前、F少年から借りて読んだ「海馬/脳は疲れない」を再び借りて読んでいる。自慢じゃないが、ぼくの脳は忘却力に優れているので、以前読んだ内容をすっかり忘れてしまっていた。この本には、たとえば、こんなことが書いてある。行動を起こすことの大切さ。ぼくは事務仕事がキライなので、つい後回しにして溜め込んでしまう。結果、ユウウツになって、遠~いところに逃避したくなる(逃避大好き微熱少年)。しかし、思い切っていったん始めてしまうと、あら不思議、加速度的にぐんぐん調子が出て、いつの間にかおもしろくさえなり、一気に片付いてしまう。みなさんも掃除などで経験がおありでは? これは脳の仕組みがそうなっているからなのだそうだ。行動を起こすことで、脳の特定の場所が興奮し、やる気がぐんぐん湧いてくるのである。行動を起こさないことにはソコは働かない。つまり、始めないことには始まらないのである(あたりまえやんか)

浅きゆめみし

歯が痛い。正確には歯グキが痛い。そしてスゴク痛い。こんなときフツーの人は薬を飲む。しかしぼくは飲まない。薬は毒だ。歯が痛くて眠れない。夜中に目が覚める。今朝はひどい夢を見た。ひどすぎる。もしここで話したら、ぼくの人格が疑われる。世の中にはぼくより不幸な人はイッパイいる。あたりまえだ。しかしそんなことより歯が痛い。薬はキライだ。病院はもっと嫌いだ。また夜が来た。眠い。でも夢が怖い。

北に走ることもある

昨日は定休日。予定では、笠沙の海辺にある某レストランか、開聞岳麓の唐船峡そうめん流しに行くつもりだった。最初の信号にさしかかって、どちらに行くか迷っているとき、ふと、前日にいらしたお客様との会話を思い出した。ひとりは佐多岬を周遊する特殊な船に乗って海中を眺めたといい、もうひとりは、阿久根の長島でグラスボトムボートに乗り、ガラス越しにイルカと挨拶を交わしたという。イルカとコンニチハ…。しゃれてる。佐多岬は遠いが、長島だったら2時間ちょっとで行ける。ぼくは左折ウインカーを戻し、車を直進させた。入来峠を越え、出水経由で阿久根に入った。窓は全開。春の匂いが気持ちいい。黒の瀬戸大橋を渡り、右折。まずは、視界の開けた場所でコーヒーを飲むことにした。行人岳に到着。なぜか人が多い。年配のオッサンたちが、駐車場の北側の柵に沿って横一列にカメラを並べ、異様な緊張感を醸し出している。いったい何事であろうか。カメラの砲列は北の空をじっと見据えたまま、一触即発の様相を呈している。恐る恐る近寄って見ると、どのカメラにも、ん十万円はする立派な望遠レンズが取り付けられている。そう、このオッサンたちは、UFOが表れるのを今や遅しと待ちわびているのだった。世の中にはいろんな人がいるものである。感心しながらトイレに向かうと、壁に次のような貼り紙がしてあった。
「ツルの北帰行をお待ちの皆さんへ。ほとんどの場合、ツルは午前中に旅立ちます、午後に帰ることはあまりありません」
コーヒーを飲み、一息ついたところで、山を下り、イルカウォッチングをやっていそうな方に車を走らせた。小さな島だから、適当に走っていれば、イルカウォッチング屋に着くだろう、と、軽い気持ちで車を走らせていたが、すぐに迷ってしまった。それらしいところになかなか辿り着かない。どこかで食事をし、そこで聞いてみようということになった。道の駅があったので、そこのレストランで、海鮮丼とあら炊き、そしてアラカブの味噌汁を食べた。時計を見ると、もう2時過ぎ。K銀行に用事があるので、道の駅の看板地図で探すと、ここからはけっこう遠い。しかもそこは先ほど迷って近くまで行ったところだった。戻るのもバカらしいので、阿久根の街のK銀行に行くことにした。というわけで、イルカウォッチングは次の機会に委ねることになったのである。

せっけんの匂い

手作りの石けんをもらって、それを大事に使っている。ぼくは、気に入ったものを大事に使う。その石けんはビロードのように滑らかで、とてもやさしい。そしてぼくの好きな匂いがする。何の香りか分からないのだけど、遠くから、うすいオレンジ色の風が吹いてきたような気分になる。それは生きることが爽やかにみえる不思議な時間。