北に走ることもある

昨日は定休日。予定では、笠沙の海辺にある某レストランか、開聞岳麓の唐船峡そうめん流しに行くつもりだった。最初の信号にさしかかって、どちらに行くか迷っているとき、ふと、前日にいらしたお客様との会話を思い出した。ひとりは佐多岬を周遊する特殊な船に乗って海中を眺めたといい、もうひとりは、阿久根の長島でグラスボトムボートに乗り、ガラス越しにイルカと挨拶を交わしたという。イルカとコンニチハ…。しゃれてる。佐多岬は遠いが、長島だったら2時間ちょっとで行ける。ぼくは左折ウインカーを戻し、車を直進させた。入来峠を越え、出水経由で阿久根に入った。窓は全開。春の匂いが気持ちいい。黒の瀬戸大橋を渡り、右折。まずは、視界の開けた場所でコーヒーを飲むことにした。行人岳に到着。なぜか人が多い。年配のオッサンたちが、駐車場の北側の柵に沿って横一列にカメラを並べ、異様な緊張感を醸し出している。いったい何事であろうか。カメラの砲列は北の空をじっと見据えたまま、一触即発の様相を呈している。恐る恐る近寄って見ると、どのカメラにも、ん十万円はする立派な望遠レンズが取り付けられている。そう、このオッサンたちは、UFOが表れるのを今や遅しと待ちわびているのだった。世の中にはいろんな人がいるものである。感心しながらトイレに向かうと、壁に次のような貼り紙がしてあった。
「ツルの北帰行をお待ちの皆さんへ。ほとんどの場合、ツルは午前中に旅立ちます、午後に帰ることはあまりありません」
コーヒーを飲み、一息ついたところで、山を下り、イルカウォッチングをやっていそうな方に車を走らせた。小さな島だから、適当に走っていれば、イルカウォッチング屋に着くだろう、と、軽い気持ちで車を走らせていたが、すぐに迷ってしまった。それらしいところになかなか辿り着かない。どこかで食事をし、そこで聞いてみようということになった。道の駅があったので、そこのレストランで、海鮮丼とあら炊き、そしてアラカブの味噌汁を食べた。時計を見ると、もう2時過ぎ。K銀行に用事があるので、道の駅の看板地図で探すと、ここからはけっこう遠い。しかもそこは先ほど迷って近くまで行ったところだった。戻るのもバカらしいので、阿久根の街のK銀行に行くことにした。というわけで、イルカウォッチングは次の機会に委ねることになったのである。