月齢十五

夜のアスファルトは滑らか。闇の中をすべるように車は走る。ゆるやかな左カーブの交差点。信号待ちをしているぼくを、誰かが、じっと見ている。それは桜だった。道路向こうの暗い闇からこちらをうかがっている。その花は生まれたてのくせに大人の気配。心が揺らぎ、ぼくは不安定になる。信号が変わった。左折して丘を下る。遠くの雲に亀裂が入り、そこから大きな月が現れた。心の安定を欠く月夜。