プレゼント

雨は上がり、朝からあたたかい日差しが降り注いでいる。ガラス越しに空を眺めていたら、遠くに浮かんだ小さな雲がキャンディーの袋に見えた。あけてごらん。赤はイチゴ。青く透き通ったのはソーダ。白はハッカ味。ぼくへのプレゼント。

カーネーション

ここ数ヶ月、ぼくの趣味は皿洗いだ。いやがる妻を説得し、夕食後の食器類や鍋を洗っている。CDをかなりの音量でかけながら洗う。良くかけるのはモーツァルトのレクイエム。ラクリモサが終わる頃には、あらかた洗い終わる。きょうは井上陽水の「センチメンタル」を選んでみた。このアルバムには映画「かもめ食堂」に使われていた「白いカーネーション」が収められている。いつの間にか歌っているぼくがいた。カーネーション、お花の中ではカーネーション、一番好きな花。

風が吹いているだけ

聞き古したレコードをターンテーブルに載せる。
それは、ずいぶん長い時間、休みなく回り続けた。
いつもと寸分変わらぬ動作で、ぼくは静かに針を降ろす。
スピーカーから、いつもの音楽が流れ出す。
今日は定休日。
ドライブはそのようにして始まった。
冬の海。海に面したレストラン。だれもいない。
ぼくはもう知っているのに。
ぼくは同じことを何度も繰り返す。
何も変わらない。答えは出てしまっている。
同じ箇所を永遠に繰り返す
古いレコード。

悪いね

ぼくはタイクツが嫌いだ。
日曜日、お店は案外タイクツである。特に、朝から天気が好いと、心理学的にタイクツになることが多い。心理学者の河合隼雄もそういっている。かもしれない。一方、脳科学者、茂木健一郎は、タイクツは脳に必要な状態の一つ、といっている。ような気がする。ナニかを懸命に考えている最中には、ヒラメキは起きない。その集中から開放された状態になって、すばらしいヒラメキが起こる、というのである。つまり、脳に「ゆとり」が生じた状態、つまりタイクツな時に、それまで脳にインプットされた情報の処理結果が素晴らしい完成度でアウトプットされるのだ、と。
実は、こんなタイクツな話はどうでも良いのである。
ぼくはタイクツが嫌いだ。という話なのだ。で、どうするか。
あらかじめ、ひまそうなヒトにメールしておくのである。
「店に遊びに来ないケ」と。
タイクツを未然に防ごうというわけだ。
これは予防医学という観念の応用に過ぎない。
P.S.
今年、ぼくのタイクツを救ってくださったステキなMy Friendsのみなさん、ありがとうございました。来年もよろしくお願いします。

年末っぽい

なんだかピンと来ないのだけど、いよいよ今年も終わりらしい。お客様の数は、いつもとそう変わらないのだが、年末年始の休みに備えて、ふだんの倍くらい豆を買っていかれる。そのせいで、昼過ぎには、いくつかの豆が売切れてしまった。明日からは多めに豆を焼かなくては。
と、いうわけで、ここで年末年始の休日の案内。
年内は29日(金)まで。明けての営業は5日(金)から、です。
よろしくお願いします。

見えないもの

Kazetabi_02仕事のあいまに、先日ネットで購入した「風の旅人」を読んでいる。ページをめくっていて、写真に目が釘付けになることがしばしば。ページをめくる手が止まる。感動しているわけだが、その理由が分からない。でも多分、それは言葉にしない方がよいのだと思う。整った言葉に置き換えて納得してはいけない。言葉にすると、大切なものが漏れ落ちる。逆説的だが、大切なものは目に見えない。

air pocket

冬至の前後に起こる落下については毎年のことだし、慣れたものだ。原因は空の様子とか風、気温、など、森羅万象に強く係わっている。すべてをのせた渦が静止し、ゆるやかに逆転を開始する。冬至の前後、ぼくは低空飛行をイメージしながら落下に備える。高度を保つためのエンジンにはエネルギーを送り続ける。
音楽、写真、絵画、詩、海。
そしてDance!Dance!Dance!

黒いシャツ着て

どこか翳のある人、を、シブく演じたいと思っているのに、なかなかそのようにならない。先日、ズボンを買ったついでに黒いシャツを買ったのだが、これを着ていると、
例えば、近所のA子は
「おお、良く似合うじゃん、ユニクロが」
なぜ分かるのだろう。ユニクロで1950円だったのだ。
また、あるお客様は
「いいわね、若く見えるわよ、あなた、いくつになったんだっけ。55?」
どうしてだろう。
ぼくの考えるボクのイメージと、他から見るボクのイメージには想像以上にギャップがあるということか。
最近、自分のイメージに自信が持てない。

流星

Flower_0
空は晴れ渡り、風も穏やか。白い雲は微笑み、ぼくをいざなう。今日は定休日。熟睡の日が続いているので、体調は良好。ぼくが南に行かない理由はどこにもない。ぼくには南に向かって、どこまでも走る権利がある。だが、権利ばかり主張していけない。今日は高三の息子の三者面談があるのだった。はっきり言おう。ぼくは行きたくない。できることならサボりたい。しかし、権利ばかり主張するのは良くない。これはさっきも言った。三者面談は5時15分から。遠出をすれば、5時には帰って来れない。近場に行っておもしろいわけがない。ぼくはあきらめた。コーヒー片手にソファで本を読みはじめた。一昨日届いた「風の旅人」。せめて心だけでも遠出させよう。
 -中略- 
時は夕方。時計は4時半を指している。そろそろ三者面談に行かなくては。その時すでに、ぼくはある計画を思いついていた。しかし、そのためには三者面談を早々に片付けなくてはならない。三者面談を早く終わらせるコツは話を脱線させないこと。息子の担任は、ぼくの脱線を楽しみにしているフシがある。ぼくは素早く話の主導権を握り、まんまと脱線させず、早く終わらせたのだった。車は黄昏ゆく街を忍者のように走り抜け、進路を南に取った。Flower_03海沿いの道路を約一時間走ると、そこは指宿のはずれにある巨大植物園。そう、フラワーパーク。クリスマスまで大規模なイルミネーションをやっているのだ。レストランもこの期間、オーダーストップは8時30分。というわけで、まずはレストランで腹ごしらえ。いつもなら780円のスパゲティセットを頼むのだが、メニューのどこを見てもそれがない。1200円、1500円といった数字が並ぶ。当然だろう、この期間、ここにやってくるのは恋人同士がほとんど。580円だの780円だのを注文したのではムードも台無し。かも。Flower_01イルミネーションを堪能し、いい気分でフラワーパークを後にした。国道に出る途中、車を路肩に寄せ、外に出て空を見上げた。満天の星。開聞岳がシルエットになって、素晴らしい眺めだ。今夜も地球は星降る夜空を航行中。