夏空に白いアイスクリームが映えるように、冬の曇った空には焦げた焼芋がよく似合う。寒い冬の休日は、老哲学者のように黙々と庭の枯葉を集め、落ち葉焚きをするのが良い。人生の哲学とはそういうものだ。しかし、焚き火をすると当局に通報される。本当かどうか知らないが、最近さかんにヘリが飛び回るのは、焚き火を見つけるためだという。そういうわけなので、曇り空の今日、ぼくは哲学者のような顔で庭の枯葉を黙々と掻き集め、穴を掘って、埋めた。救いのないエンディングである。まるでフランス映画だ。そこでぼくは先日友人から頂いたサツマイモをガスコンロで焼き、それをジャケットのポケットに入れ、屋上に上がった。屋上のテーブルに焦げた焼芋を並べてみると、それはミルク色の冬空によく似合っていたのだった。
新しい天体
夜の高速道路は星空に続く滑走路のようだ。ぼくの運転するスバルは、かすかなタービンノイズを残し、闇を切って加速していった。今夜はOさん宅で年末恒例のお食事会。午後8時、車は予定どおり閑静な住宅街に進入した。ドアを開けると、明りを落とした室内には落ち着いたピアノ曲が流れていた。それはどこか影を持つ大人の雰囲気…つまり、ぼくにピッタリの選曲であった。後で知ったのだが、このアルバムはF少年のブツらしかった。あとで借りることにしよう。Oさん宅での食事会が楽しい理由については、その会話内容が繁多な日常から遠ざかっているせいもあるが、なによりも奥様が心をこめて作った手料理に負うところが大きい。今夜もまた、珍しい作品の数々がテーブルを囲む馴染みの面々を楽しませていた。さて、酔いが回りだしたころ、テーブルでは「テリーヌ」という料理が話題になっていた。「あのテリーヌはテリーヌではない」と、ご主人が頑なに主張されているのだった。そのテリーヌとは、今回奥様がこしらえたテリーヌのこと。ぼくはさっそくそのテリーヌ?を所望し、テーブルに運ばれるのをワクワクしながら待った。それは上質なハンバーグのようで、とてもすてきな、ぼく好みの味だった。はて、これがテリーヌでない理由とは…。ご主人の定義するテリーヌとは、もっと野趣があって…etc、ということらしかった。おそらくテリーヌにも色々あるのだろう。作る人の数、いや、星の数ほど。そういえば、ブリア・サヴァランという人は、その著書「美味礼讃」で、新しい星を発見するよりも新しい料理を発見するほうが人間を幸せにするものだ 、と言っていた。なるほど、新しい料理の発見は、たしかに人をしあわせにしそうだ。そしてそれは、意外と簡単なことなのかもしれない。と、ぼくは少し酔ったアタマで考えた。新しいテリーヌ?をぜいたくに味わいながら。
スイーツ(笑)
今年ネットで流行った?流行語に「スイーツ(笑)」というのがあるのだという。ほんと? ぼくは、はじめて目にしたけど。いったい、なんだろうと思って、リンク先を見ると、
「スイーツ(笑)」
特に、マスメディア(おもに女性誌)の女性向けの特集にならうことがおしゃれであると考え、特集を鵜呑みにして気取っている女性を揶揄する言葉。実際はメディアに踊らされているとしか言えない状態であることが多いのだが、当人にはその自覚はない。そのような女性が洋菓子・デザートのことをスイーツと呼ぶことに由来する。いつ、誰が、どのような経緯で使い始めた言葉なのかはさだかではない。
Hatena Diary Keyword
だそうだ。 ほんとかしら。
R35
昼すぎ、人妻 F がコーヒーを買いにきた。ちょうど今朝、新しい種類のグアテマラを焼いたので、彼女に試してもらうことにした。
「コーヒー、おごるけど、飲む?」
「飲む飲む飲む~~~~!」
予想通りの反応だった。彼女はいつも飢えている。
「ねえ、なんか、いいCD持ってない?」
彼女がうまそうにコーヒーを飲んでるのを見ながらぼくは聞いた。
「うん、持ってるよ。あーる35」
「あーる35?なんじゃそれ」
「もう一度妻を口説こう、というコンセプトで作ったアルバム、だって」
「はぁ?」
くだらねえ、と、ぼくは思った。が
「で、今持ってるの?」
と聞いてみた。
「うん、車の中」
「貸してみ」
「いいよ」
ぼくは借りてみた。
コンセプトは実にくだらないが、ナカナカいい曲が入っている。これを書いている今も聞いている。
夕焼けの焼芋は失恋の味だった
好きを貫く
梅田 望夫「ウェブ時代をゆく」の書評をAmazonで読んでいたら、その書評のひとつに「…それは、Only the Paranoid Survive(病的なまでに心配性な人だけが生き残る)、Entrepreneurship(自分の頭で考え続け、どんなことがあっても絶対にあきらめない)、そして、Vantage point(見晴らしのいい場所)だ。この説明の中にスティーブ・ジョブズの言葉が出てくる。とにかく、好きを貫くこと。プロセス自体を「苦難の道」と捉えるのではなく、楽しんでしまうということ…」 というくだりがあった。そこで次に、スティーブ・ジョブズの言葉 というキーワードでネットを検索してみた。すると、次のページが見つかった。
「スティーブ・ジョブスの10の教え」
このページは、「10 Golden Lessons From Steve Jobs」
を訳したものだそうだ。その中から、心に残った文を以下に写します。
すばらしい仕事をするには、自分のやっていることを好きにならなくてはいけない。まだそれをみつけていないのなら、探すのをやめてはいけない。安住してはいけない。心の問題のすべてがそうであるように、答えを見つけたときには、自然とわかるはずだ。
あなたがテレビのスイッチをオンにするのはあなたが自分の脳のスイッチをオフにしたいからだと思います。それに対してコンピュータで仕事をするのは、脳のスイッチをオンにしたいときではないでしょうか。
あなたの時間は限られている。だから他人の人生を生きたりして無駄に過ごしてはいけない。ドグマにとらわれるな。それは他人の考えた結果で生きていることなのだから。他人の意見が雑音のようにあなたの内面の声をかき消したりすることのないようにしなさい。そして最も重要なのは、自分の心と直感を信じる勇気を持ちなさい。それはどういうわけかあなたが本当になりたいものをすでによく知っているのだから。それ以外のことは、全部二の次の意味しかない。
好きを貫く。 いいね。でも、できるかな。
アナーキーな1日
朝起きると10時だった。遅刻だ!と思ったら今日は休みだった。カーテンを開け、ブラインドを上げると山の向こうまで青空が広がっていた。しかし、天気予報によれば、午後から曇り、そして雨なのだという。最近、天気予報はよく当たる。そんなわけで、たまには家の仕事でもしよう、的気分になったので、家の外壁にコンセントを付けよう、ということになったのだった。ぼくはコンセントが大好きなので、家のあちこちに無駄なコンセントがある。もちろん、外壁にも付けてあるのだが、数年前からクリスマス前にイルミネーションを点灯するようになり、延長コードがのたくって見苦しいので、イルミネーションの近くにもう1個追加しようと思っていたのだった。作業自体はそう難しくない。めんどくさいだけだ。まず、東開町のホームセンターに出向き、防雨型コンセントと防水用のコーキングを購入。ついでにプランター用の土を4袋買った。数日前お客さんからいただいたハーブの苗を植えるためだ。それにしても産業道路は混んでいる。大型ショッピングセンターがオープンしたせいかもしれない。家に戻って作業開始。の前に、腹ごしらえ。テイクアウトのこむらさきラーメンを作って食べた。これはいわゆる一つの、チョー本格的。店で食べるラーメンと比べ、いささかの遜色もない。で、作業開始。作業の流れはこうだ。屋内のコンセントをはずす。その後ろの壁に穴を開ける。そこに電源コードを通し、屋外用のコンセントにつなぐ。穴の隙間をコーキングで埋め、屋外のコンセントを固定する。壁がコンクリートなので、振動ドリルを使って穴を開ける。コンクリートが硬いので、まず小さなドリルを用いて開ける。位置出しがめんどうだったので、屋内側から穴を開けた。すると、ドリルの丈が足りず、向こう側まで届かなかった。2番めに大きなドリルにタッチ。手ごたえがスッと軽くなって貫通。表に回ってみると、外壁の一部が脱落し、周辺の塗装もハゲていた。予想はしていたが、思ったより大きい。でも、コンセントで十分隠れる範囲。さらに太いドリルで穴を広げ、コードを通す。
コンセントを固定するネジ穴を開け、プラグを打ち込み、結線したコンセントをネジ止めして終了。完成したコンセントを眺めながら熱いコーヒーを飲む。ふと、家のモミジがきれいに紅葉しているのに気づいた。今日は穴あきーな一日だった。
今夜のぼくは
金曜の午後
ながく残るものをつくってみたい。
そんなことを ふと思った。
外は冷たい雨が降っている。
こんな日は、もらったミカンを食べながら ぼんやり過ごす。
☆写真の器は陶工房fooの作品です。