トカゲとぼく

わが家の庭にはトカゲがいっぱいいる。
トカゲと言っても、いわゆる銀トカゲではなく、カナヘビ。
今朝、玄関に腰掛けてると、いつものようにトカゲがやってきた。
首をかしげ、片方の目で、じっとぼくを見ている。
ぼくは試しにテレパシーを送ってみた。
「なに見てんだ、ばか」
反応はなかった。

不思議な音

今夜は満月だったのだろうか。とても明るい月が出ている。ビールを飲みながら月を見ていたら、月と、その周りの雲がみるみる大きくなってきた。怖くなって目をつむった。目を開けるともとの月に戻っていた。海の上に浮かぶ雲が、それはとても平凡な形の雲なのだけど、たおやかで美しかった。北の方から吹いてきた風が、缶ビールの口で不思議な音をたてた。

岩に染み入るセミの声

朝早くからクマゼミがうるさく鳴いている。メスを呼ぶためだそうだが、色気もクソもない。「ジャージャージャージャー」明らかにぼくの存在を無視している。ヒグラシというセミがいる。松林を好むようで、吹上砂丘付近でも「カナカナ」という特有の声を耳にする。こいつは感心なやつだ。あの声はココロが和む。ショパンのノクターンに似た趣があって、感傷的な気分を誘う。ツクツクボウシという小さなセミがいる。こいつは大嫌いだ。ツクツクボーシ、ツクツクボーシ、ツクツクボーシと忙しく鳴く。訳すとこうだ。「ほらほら、もう夏も終わりだ、終わりだ、終わりだー」キンチョールをぶっかけたくなる。

天気晴朗なれど

Hukiage_05空は晴れ渡っていた。指宿スカイラインを走り、山を越え、信号を曲がり、松林を抜けた。鹿児島は山を越え、信号を曲がり、松林を抜けると、たいてい海に出る。台風が近づいているという。天気晴朗なれど波高し。しかし、波はほとんどなかった。実は、きょうは初体験の日なのである。ウフ。昨夜、某量販店で、ついに度付きゴーグルを買ったのだ。2000円出して、173円の釣り。Hukiage_06_2海にメガネは似合わない。これでメガネともオサラバである。前回は、泳いでる時に足がつったので、ちょびっと準備運動をして海に入った。もちろん、ゴーグルをつけて。おー、これは快適だ。海の中がバッチリ見える。見てはならないものまで見えそうだ。ウヒヒ。しかし、なぜか今日は生物の影が薄い。いるのはフグやハゼ、カニ、クラゲの幼生など。つまらん。Hukiage_04今日は一人で来ているので、あまり深いところでは潜らないことにした。喜んで泳いでいると、水上バイクがやってきて、沖を行ったり来たりはじめた。エンジンの音がうるさい。興ざめである。いつものように海に浮かんで、波の音、青い空、白い雲、波間を渡る風を楽しんでいると、ブワワ~~~ッとやってくる。ぼくは叫んだ。うるせぇこのやろう、こっちに来るんじゃねぇ!(うそです)
文句を言う勇気もないので、いつもより早く帰ることにした。
Tako_01

標準レンズ

Smc12
写真を撮るのが好きなお客さんがけっこう多い。ぼくも好きなので、写真やカメラの話になると、営業時間が過ぎても話し続けることがある。今日は、写真好きの常連のお二人と、写真やカメラの話で盛り上がった。ぼくはデジイチは持たないので、この写真もコンデジで撮った。ぼくは明るい標準レンズが好きだ。上の写真はフィルムカメラ用のレンズなので、今は使ってないけど、もう一度このレンズで、いろんなものを撮りたいと思う。

射手座

天の川は射手座付近で大きな広がりを見せるが、これは言うまでもなく銀河系の中心の膨らんだ部分(バルジ)が射手座の方向にあるためだ。今夜の月は、この広い流れに気持ちよさそうに浮いている。丸みを帯びはじめた、色っぽい上弦の月。雲と月のせいで星の数は少ないが、白鳥座とベガ、アルタイルははっきり見える。酒を飲みながら屋上で寝転がっていたら、いつの間にか寝てしまった。いつものことだけど、目が覚めたとき、ぼくはあわてた。
ここはどこだ!

70’暑い部屋

遠いむかしの話である。だれでもそうであるように、学生の頃、ぼくは麻薬に興味を持った。ある雑誌に麻薬の作り方が載っていたので、直ちに実行することにした。それによれば市販されているある種のサボテンには麻薬成分が含まれており、簡単に抽出できるという。さっそく近くの園芸店に行ったが、売ってなかった。その足でバスに乗り、市内の植物園に出向いてサボテンコーナーをうろつきまわった。しかし、やはりそういう名のサボテンはなかった。あったらネコババする気でいたのかもしれない。今のぼくからは想像できない話である。かもしれない。海外に出かけた時チャンスは訪れた。いわゆるグラスが手に入ったのである。タバコをほぐし、中身を入れ替えて一生懸命吸った。いつの間にか眠ってしまっていた。失敗に終わったのである。その時は粗悪品をつかまされたのだと思った。しかし、あとで聞いた話によれば、いったん吸い込んだ煙は、しばらく腹にためるのがコツなのだという。とにかく部屋が暑かった。西日の差す、クーラーの効かないボロホテルだった。

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おもいでの渚

仕事の合間、椅子に腰かけ、ぼんやりと渚を想像することがある。顔にあたる陽光、波の音、ぬるい潮風、匂いまでリアルに感じることができる。たぶん、何度も何度も海に行っているおかげだと思うのだけど、けっこう不思議な感覚だ。一番リアルなのが、時折耳に当たる風の音。一定の間隔でゴワゴワ、ガサガサ音を立てる。遠く続く波打ち際、背後の砂丘を見回すが、だれ一人いない。多分、吹上浜だと思うのだけど、絵に描いたような美しい渚。

ParadiseHappy

勘違いしてハジをかくことがよくある。その失敗談はこのブログにも書いた。同じ失敗を何度もやらかす人を世間はバ○と呼ぶが、ぼくはその人である。人の言動を自分の都合の良いように解釈する傾向が強いのだろう。悲劇である。いや、喜劇だ。しかし、遅れ馳せながら、最近その失敗プロセスを感知するプログラムが脳内にやっと完成した模様である。ある日ある夜、はっと気づくのである。とりあえず失敗を回避できるのだ。これはありがたいことである。が、少し残念な気がしないでもない。勘違いしている最中のぼくは、たいていパラダイス・ハッピーなのだから。

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8月の空

海沿いのカーブを曲がると、景色がまるで変わってしまう。それが8月のはじまり。7月のはじめ、ぼくはガソリンを満タンにしたオープンカーで出発した。ドラマはクライマックスに向けて目くるめく展開をみせたが、ぼくの心は満たされなかった。それは始まる前から分かっていたことだった。満たされることのないカップの向こうで、8月の空はまだ明るい。