よほど疲れていたらしく、昨夜から今朝にかけて、11時間も眠ってしまった。朝になっても、眠った頭はなかなか起きなくて、解凍するのにものすごく時間がかかった。からだはオートマチックに動くのだけど、言葉がうまくいかない。そんな状態でカメラを覗いたら、ふだん見慣れたものが不思議なくらい輝いて見えた。
アイロン

人のことなど何も考えないぼくだったが、人のことが人一倍気になる妹による有無を言わせぬ指令により、市内で一人暮らしをしている伯母の家を訪ねることになった。妹いわく、伯母の家の中は言葉を失うほどの恐るべき状態なのだという。妹は普段、その状態を形容するのに声の強弱をも最大限利用するが、今回は目の前のぼくに、10メートル先にいる耳の悪い人に訴えるのに等しい音量で語った。その内容は早い話
「私の手に負えない部分がある、アニキも行って掃除して来い!」
82歳の伯母は近年脚を悪くし、重いものを持てなくなったらしい。
「パーッと済まして天文館でシロクマを食おうぜ」
ぼくは同行のヨッパライ某にそう提案すると、ピクニックにでも出かけるような軽い足取りで現場に向かった。
中略
最後のゴミ袋を玄関先に出したとき、時計は4時を回ろうとしていた。空はいつの間にか雨雲が低く垂れ込め、短い間隔で雷鳴が轟いている。疲れていた。昼食もとっていない。空腹のピークはとっくに過ぎ、ただ、ひたすらシャワーを浴びたかった。
中略
シャワーを浴びたぼくは、屋上のテーブルで200円のシロクマをしゃくっている。もちろん、いつものようにラムをたっぷりかけて。
夕焼けが赤い。夕焼けが赤い。
切り絵になった山の端から広がる夕焼けを背景に、そんな言葉がリフレインしていた。やれやれ、またひとつヒューズが飛んだようだ。
叔母の部屋の掃除をしていると、ガラクタに混じって古いアイロンが出てきた。彼女は洋裁のプロだったので、プロ用の道具をいろいろ持っている。
「これ頂戴」
ぼくはアイロンをもらった。

スプートニクなぼく
ビールを飲んでいる。
そんなわけで、
ぼくは7.9km/sで地球を回っている。
というわけで、
地球は青かった
とでも言っておこう。
おやすみなさい。
あしたは休みです。
おやすみなさい。
マークII
朝、店に着いて、いつものようにFMラジオのスイッチを入れると「今日は一日フォークソング三昧」という特別番組をやっていた。ずいぶん古い曲を流している。知らないと思うけど、たとえばビリー・バンバンの「白いブランコ」とか。1970年頃に流行った曲だ。しばらく聞いていると、吉田拓郎の「マークII」がかかった。ぼくはびっくりした。なぜなら、それがラジオでよくかかるスタジオ録音版ではなく「よしだたくろう・オン・ステージ!!ともだち」というライブ版のものだったからだ。この「ともだち」というアルバムのCDが欲しくてたまらなかったのだが、差別語があるとかで復刻されていない。ぼくはラジオから流れる拓郎の声に耳を澄ました。おかしい。スクラッチノイズが無い。これは絶対レコード盤の音ではない。もしや…わずかに出回っているという、あの幻のCD? ぼくは家に帰りつくと、早速googleで検索してみた。すると…な、なんと、復刻されているではないか。即、amazonの購入ボタンをクリックしてしまった。
☆写真は愛蔵のアナログレコード。
残念ながら、プレーヤーが無いので聞けません。
P.S.
さっき、おともだちブログを回っていたら似たような人を発見した。
オフコースは秋のはじまり
6時を過ぎる頃には、もう、外は暗くなっていた。
夏もいよいよ終わろうとしている。
「もうすぐ大好きな秋ですね」
夕方いらしたお客様に、ぼくはそう言った。
「ええ。でもまだまだ暑いですわ」
そういって彼女は額の汗をハンカチでぬぐう仕草をした。
「秋になると、ぼくはオフコースが聞きたくなるんです」
コーヒーを袋につめながら、ぼくは勝手な話を始めた。
「いいですよね。小田和正さんは私と同じ年なんですよ」
彼女はいつもの上品な笑みを浮かべた。
「彼は、女性に多くを求め過ぎてると思いませんか」
ぼくの口調には少し皮肉がこもっていた。
「そういう男の人って、ステキですよね」
彼女はそう言った。
男の顔は
A LONG VACATION 最終日

昨日と同様、寝覚めがひどく悪かった。おそらく一昨日の熱中症によるダメージがまだ残っているのだろう。車を飛ばして約20分。あっという間に吹上浜に到着。軽い準備運動を済ませ、海に突入。今回は発泡スチロール製の小さなサーフボードを持ってきていたので、沖に出てそれに寝そべった。いつもなら潜ってばかりいるのだけど、今日はどうも調子が悪い。ちょっと長く泳ぐと気分が悪くなる。そんなわけで、今日は泳ぐのをあきらめ、もっぱら能天気なアメンボのごとく水面をプカプカ浮いていた。サーフボードは小さいがゆえに、上に寝そべると海面下に沈んで見えなくなる。遠目には、ミスター・マリックが海面スレスレに浮いているように見える。海面を浮遊する変な男。海面スレスレで寝ていると、空がやたら広く見える。魚眼レンズという特殊なレンズがあるが、ぼくの目はちょうどそんな感じだった。青い空、白い雲。波の音、風の音。
A LONG VACATION その二日目

休日の朝だというのに、切れの悪い寝覚めだった。アタマがフラフラする。水平感覚がおかしい。おそらく昨日の熱中症によるダメージがまだ残っているのだろう。今日はお盆の二日目。ぼくの辞書によれば、お盆とは家族全員でソバを食う日のことである。お昼前、あまり気乗りしない様子の家族3人を連れて松元町の某ソバ屋に出かけた。ぼくはエビ天の載ったみぞれソバというのを注文。体調が悪いせいで味があまりしない。家族そろってソバを食い、今年も由緒正しいお盆を過ごしたような気分に浸りつつ店を後にした。
帰りに某園芸センターに寄ってみたが、客がほとんどいない。この時期、販売される草花の苗はめっきり少なく、屋外の売り場は絵を失った額縁をそのまま飾っている年寄りの家のような侘びしさがあった。ふと視線を感じて振り返ると、赤や緑の中から、ぼくに涼しいまなざしを送るものがいる。寄ってみるとそれは、なんとかという青い花であった(名前は忘れた)。商品なので手折るわけにもいかず、ぼくはその清楚な草花を買い求めることにした。家に帰り着き、さっそく鉢に植えつけてみた。思いのほかいい感じで、見つめているだけで心が和んでいくのがわかった。夏の日の恋とはこういうものだろう。
日の沈む頃には、ぼくの車は薩摩半島を南に下っていた。昼過ぎまで暗雲に覆われていた空も、今ではすっきり晴れ渡り、遠くどこまでも澄み切っている。全開にした窓を抜ける風は爽やかで心地よい。それはまるで軽井沢の別荘地のよう。行ったことないけど。海岸に沿って南下し続けた車は、やがて右折し、深い湖のほとりに出た。時は黄昏。土産物屋もシャッターを下ろし、人気も無い。広い駐車場もひっそりとしている。人の気配がなくなると、この湖には1億5000万年の太古から棲んでいる恐ろしい怪物が現れる。この日ぼくは運よくそれを撮りとめることに成功した。湖を後にした車は開聞岳のふもとをぐるりと走り抜け、巨大植物園に進入。
今夜は特別なイベントが開催されており、エントランスホールはめずらしく老若男女でにぎわっていた。夜の植物園は不気味である。お化けでも出そうな雰囲気があって、意外とおもしろい。真っ暗な順路を案内板にしたがって歩いていると、闇に仄かに浮かんだ竹灯籠をカメラに収めるべく、ストロボを焚いている人を多数見かけた。はたしてあの幽玄世界がうまく写っているだろうか。園内のレストランで食事を済ませ、園を出たのが9時。車は今夜の目的を果たすべく、さらに深い闇へと走り出したのだった。

☆右のほうに写っている小さなボンヤリはアンドロメダ座M32。
A LONG VACATION 第一日目
暑い中、ススにまみれて機械の分解掃除をしていたら、だんだん頭がフラフラし始め、やがて、すぅ~っと意識が遠のいていった。立っていられなくなったぼくは、イスに座って意識が戻ってくるのを待った。少し良くなったので、ふらふらしながら作業を続けた。日が沈む頃に作業が終わったので戸締りをし、帰路に就いた。セルフ式の給油スタンドに寄り、車を給油機の横に停め、給油ノズルを給油口に差し込もうとしたら…なんとぼくの車の給油口は無くなっていた。ぼくはほんとにびっくりした。だが、ぼくは反対向きに車を停めていたのだった。信じられなかった。今までこんなマヌケなミスは一度もしたことがない。ここに来てやっと自分が異常な状態にあることに気がついた。その時ぼくは意識が朦朧としていて真っ直ぐ歩けないほどだったのである。今だから分かるのだけど、分解掃除中に意識が遠のいた後、ずっと異常な状態は続いていたのだ。つまり、異常であったがために、自分が異常であることが分からなかったのである。おそらく熱中症か何かで脳細胞が10万個ほど死滅したのだろう。こうして書いている今もフラフラしている。というわけで、ブログのお返事、BBSのお返事は明日になるような気がするのだった。




