冬の砂浜

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いろいろな件がほぼ落着し、熟睡できるようになった。ぐっすり眠ることは大切だ。睡眠が足りないと、動きが緩慢になり、心のキャパまで狭くなる。思いやりが足りなくなる。冬の海だ。灰色の空。砂浜を歩くと、なぜかうれしい気分になった。砂に半分埋まった流木をしばらく見つめていた。眠りが足りているせいか、安易に感情が流されない。強い風が巻き上がることもない。打ち寄せる波が、今日はいつもと違って見える。昨日のぼくにさよなら。毎日がぼくのお葬式。

防波堤にて

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ズボンを洗濯しようとしたら、尻の部分が破れかけていたので新しいズボンを買いにでかけた。試着したところ、すその補正は不要であった。一本3000円、二本で5000円だという。悩んだ末、同じズボンを二本買ってしまった。ズボンを買ったその足で、ぼくは南に向かった。1時間弱で指宿の某家族湯に到着。一人で家族湯を利用する人はいるだろうか。背中に唐獅子牡丹をペイントしてるわけでもなく。ぼくが家族湯を利用する理由はほかでもない、湯をぬるくすることができるから。ぼくは熱い風呂が嫌いだ。むかし、銭湯の湯が熱かったので、水をじゃんじゃん入れていたら、偏屈なオヤジにドえらく叱られた。それがトラウマになって、ぼくは銭湯に行かなくなってしまった。061204_01家族湯に一人きり。湯舟に浸かって空を見ると、ずいぶん高いところでトンビが輪を描いている。いい気分だった。ふいに、木塀を隔てた隣の湯から声がしはじめた。若い女性が二人入ってきた模様である。二人で盛んにしゃべっている。ぼくは塀の隙間から覗いてみたが、向こうは見えない仕掛けになっていた。ぼくは彼女等の声を聞き流しながら、ゆったりと湯舟でくつろいでいた。すると、女性二人の会話に突如、若い男の声が加わった。ぼくは仰天した。いったい隣は、どんな家族なんだろう。061204_02温泉を出て、池田湖を見下ろす静かな公園に車を走らせた。ポットに詰めてきた熱い珈琲を飲みながら、沈んでいく夕日を眺めていた。心に散らばってしまった様々な事柄が、一つ一つ所定の位置に納まっていく。ところで、今日の目的は、フラワーパークのイルミネーションを見ることなのだった。太陽が沈み、あたりが暗くなると、ぼくはまた車を走らせた。開聞岳の麓を走りぬけ、左カーブを曲がり、フラワーパークの入り口にさしかかった…と思ったら、門にロープが張ってある。なんと、閉館していた。イルミネーションは土日だけなのだろうか。ぼくは死ぬほどがっかりした。ぼくは最近、よく死ぬ。しかたなく、指宿休暇村の防波堤に座って、ぼんやり月を眺めていた。風が死ぬほど冷たかった。

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ポケットの砂

061113_01今日は日本晴れのはずだった。しかし、窓をあけ、眠い目をこすって見上げた空は、遠い山の向こうまで曇っていた。雲間から覗いた小さな青空が、申し訳なさそうだった。
「ふっ、いいってことよ。人生なんて、そんなもの」
今日は定休日。ぼくはドライブに出かけた。たいてい、はっきりとした目的無しに出かけるのだけど、きょうは、あの、東シナ海に面したレストランの様子が気になって出かけたのだった。前回行ったとき、店のドアは開いたままだったが、店の中はがらんとしてだれもいなかった。昼食をとって、亀ヶ丘の展望所から東シナ海を見下ろした。北から吹く風の中で、ポットの熱いコーヒーを飲んだ。風に吹かれていると、言葉にあらわせない不思議な感動がやってきた。それは大いなる者と深い意思の疎通がなされたような、畏れに似た喜ばしい気持ちだった。自分の卑小さに気づくことの安心とでもいおうか。例のレストランに行ってみると、ドアは、やはりわずかに開いたままだった。だれもいなかった。浜砂に座り、ぼんやりしていた。波の音。波の音。その単調な繰り返しは複雑な模様を織り成す機織。家に帰った夜、ポケットに手を突っこんだ時、思いがけず触れた砂の感触に、海を吹く風の音を聞いた。

reflections

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雲ひとつない空。車は峠を超え、山をくだり、広い真っすぐな交差点で止まった。時々、胸のどこかが痛くなるのはキンモクセイの匂いのせい。なぜだろう、いろんなものが距離を縮め、ぼくの体と同化しようとする。いつもなら、距離を保って自分の外に置いておけるのに。今日のぼくは、そういう力が弱っている。061016_02海岸線を走っていると、春じゃないのに、桜の花がたくさん咲いていた。でも、今日は、それが当たり前のように感じられる。ぼくの世界は反射し、リバースする。反射した光は何を失ったのだろう。061016_03

エンドルフィンの夏

Entrance
今日は定休日。休日は早く目が覚める。低血圧なので、しばらくベッドに座ってぼんやりしていた。小さな電球が点るように、スイッチがひとつひとつONになっていく。数分後、ぼくは立ち上がり、カーテンを引いた。空いっぱい、ネズミ色の雲だった。水を500cc飲んだ後、ニンニクと唐辛子を炒め、ペペロンチーノを作って食べた。南の空が気になってしょうがなかった。ふと、遠くに青いものが見えた。それは青空だった。ぼくは急に冷たいアイスモナカが食べたくなった。Gaitou_01アイスモナカは加世田の海浜公園で食べるとウマイ。かもしれない。透き通った青空と白い雲。ぼくは、いい気分で山道をとばした。海浜公園を奥に進むと砂浜に出る。草いきれの松林を抜けると美しい渚が広がった。ぼくはつくづく思う。鹿児島はほんとうにいいところだ。海浜公園を後にし、いつもの海辺のレストランに向かった。杜氏の里というだけあって、道に沿って奇妙な街灯が立っている。目的のレストランに着いた。でた。「準備中」。こういうこともタマにある。いや、よくある。ちなみに、定休日は木曜だったはず。B_uno仕方ないので、風車村に向かった。春に行ったとき、このアミューズメントパークの入り口には「当分の間休業します」との看板が立っていた。すばらしく立派なプールもあるし、このまま廃墟化するとは思えなかった。夏になれば、きっと復活しているに違いない、と、その時は思った。村の手前のカーブを曲がったあたりで、うまそうな匂いが車内に流れ込んできた。駐車場に車を止め、石段を駆け上がり、湯気の立ち昇る店の暖簾をくぐった。が、だれもいない。カウンターには珍しい食べ物が何種類も並べられ、いい匂いを放っている。
「金は後で払えばいいさ」
ぼくは大皿に盛られた食い物を片っ端から箸でつかみ取り、夢中になってほおばりはじめた。

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海辺のレストラン

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二日前のエントリーで、エンドルフィンのことを書いた。書いたあとで、また間違ったことを書いてるんじゃないか不安になり、ネットで調べた。いつも思うことだけど、書く前にちゃんと調べればいいのである。調べてみると、けっこうおもしろい。以前書いた「ひらめき脳」の茂木健一郎さんのwebマガジンもエンドルフィンでヒットした。うまいものを食うとエンドルフィンが出る、というわけで、うまいものを食べに南へ向かった。うまいものを食うだけなら、わざわざ遠くに出かけなくてもいい。しかし、ぼくのエンドルフィンはウマいだけでは出ない。空気が良く、価格が安くないとダメなのだ。12時過ぎ、いつもの笠沙の食堂に到着。日替わりは何?と聞くと、白身魚のフライとのこと。迷わずそれにした。ご飯のお代わり付きで630円。エンドルフィンが噴水のように出てる様子を想像しながら食べた。Bul_01食後のコーヒーは、海辺にある、例の変なレストランにした。(なお、ぼくがよく使う「変な」は「ステキな」「おもしろい」あるいは「グレート!」と同義語です。念のため)
海に面したデッキでコーヒーを飲んでいると、マスターが気を利かせてBGMをカントリーからムード音楽に変えてくれた。「グレート!」ぼくは思わず叫びそうになった。カントリーのままでいいに決まってる。帰りにマスターと話していたら、「トンネルの先の海沿いにおもしろい店ができているから行ってごらん」とのことだった。若い姉妹がやっているそうだ。失念したが、ラフィーヌ?みたいな名前だった。今度行ってみる事にしよう。帰りに枕崎の某量販店で、マグロのカマ一個48円を5個と、トビウオ一匹30円を3匹を買って帰った。
Makurazaki_01なお、冒頭の写真は、20年近く前によく行った公園。帰りに寄ってみたら、遊具はほとんど撤去され、草ぼうぼうになっていた。

ベンチにて

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一枚の写真が人を特別な場所にいざなうことは、よくあることだ。ちょっとまえ、多分、それは深夜だった。ぼくはBuraBuraで一枚の写真を見た。ベンチの写真だった。そのベンチは、休みの度に出かけるフラワーパークに置いてあるものだった。Bench_00もちろん、ぼくはこのベンチに何度も腰掛け、何度もコーヒーを飲んでいる。でもそうじゃない。ぼくは彼のカメラに写った、あのベンチに腰掛けたいと思う。なのに、ぼくがそばに行くと、いつも決まってそっけない表情でぼくを迎える。
(BuraBuraマークの写真はBuraBuraのRogiさんのものです)

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風車村

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始まりがあれば終わりがある。きょうで5連休も終わり。某温泉のスタンプカードが満杯なのに、使用期限は5月いっぱい。コーヒーをポットに詰め、南に車を走らせた。
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某温泉の待合所に腰掛けてると、小さな犬がヒョコヒョコやってきた。カワイイ顔をしてるけど、11才のおじいさん。DOG55と書いた服を着ている。ん?どこかで見たような。腹が減ったので、フラワーパークで昼食。たくさんのハルゼミが鳴いていた。池のスイレンがきれいだった。フラワーパークを後にし、近くの港に寄ってみた。Fp_01途中、怪しいトンネルを発見。もしかすると、フラワーパークにタダで入れるのかもしれない。さっそく通り抜けてみたが、そこはフラワーパークの中ではなかった。港を出た車は西に向かった。今日は、通るたびにいつも気になっていた、坊津の風車村に行ってみた。20年以上前に行ったきりだ。Windmill_00ほとんどの施設が封鎖状態だった。景色はとてもいいし、駐車場も広い。悪くないと思った。トイレが使えないのが残念だけど。以前来たときは、小さな風車があちこちで勢いよく回っていたが、朽ち果てて面影もない。でも、いいところだ。次もまた来よう。ポットのコーヒーが切れたので、例の海辺のレストランに寄った。「準備中」だった。Windmill_01

Purple Rain

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今日は定休日。昨日、今日と、晴天が続いている。ただ、黄砂のせいでカスミがかかっている。いつもは南の方に走るのだけど、今日は北に向かった。というのは、時々(勝手に)おじゃましている、あやさんのブログに、次のような文章を見つけたからなのだった。以下、牧園町和気公園「藤まつり」に行ってきたという記事から勝手に引用します。スミマセン。
— 牧園の清浄な空気の中に藤の香りが立ちこめ、何ともいえずいい感じであった。いい感じすぎて皆一様にテンションが上がっていたようであった —
ここ数日テンション下がりっぱなしのぼくの目に、この文章はヒジョーに魅力的に映った。高速道路を飛ばし、1時間弱で和気公園に着いた。おお、たしかに甘い匂いが漂っている。これは…そう、ファンタグレープの匂いだ。ファンタスティック!入場料300円を払って、満開の藤棚の下を歩いた。これだけたくさんの藤の花が咲いている下を歩くのは初めてだった。まるで紫の雨に降られているような幻想的な気分。(BGMはPrinceのPurple Rainでお願いします)
Miike_01テンションがあがってきたところで、ぼくは高千穂峰の麓、御池に車を走らせた。いつものように、二人乗り手漕ぎボートでのタイムトライアル。昨年10月のトライアルでは、屈辱の13分40秒。前回の記録を55秒もオーバーし、ショックを受けたのだった。今回は大幅な記録更新を狙い、必死で漕いだ。その甲斐あって、12分14秒。前々回の記録をも31秒も短縮し、新記録を達成した。
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霧島市立和気公園 藤まつりのホームページ

B.D

Monaka_01朝起きたときの気分は良くないことが多い。99.9%良くない。寝床で、やれやれ今日も仕事か、と思ったら、ほんとは朝から休みだった。ぼくは今日が月曜ということを忘れていたのだ。休みと気付いたとたん、元気になった。「最近ドライブに行ってないし、今日は朝からドライブに行こう」的気分になった。きのう福岡まで車を走らせたことも忘れていた。コーヒーをポットに詰め、南に向かって走り始めた。とりあえず「加世田の海浜公園でアイスモナカを食べる」という目的を設定した。ぼくの中で海浜公園はアイスモナカを食べる所になっている。Bontan_0モナカを食べ終えると亀ヶ丘という見晴らしのいいところに行った。風に吹かれながらボンタンアメを食べた。ちょうど昼になったので、笠沙の玉鱗という食堂で日替わり定食を食べた。今日はアジの唐揚げだった。とても美味しかったのでご飯をお代わりした。車は坊津の丸木浜に向かった。海辺のレストランを通り過ぎたとき、心がほんの少し痛んだ。だれもいない海。こわれたレコードのように繰り返す波の音。海を見ながらコーヒーを飲んだ。車はフラワーパークに向かった。ロビーはいつもよりお客さんが多かった。玄関で帽子を目深にかぶった若い女性とすれ違った。知っている人だと思って振り返ったけど思い出せなかった。
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