豆を焼き終わってホッとしているところに電話が鳴った。
「お忙しいところ大変申し訳ありません…」若い女性の声。
「株式会社○○と申します…」
時々電話してくるサラ金会社であった。
ぼくが金に困っているのをどこで知ったか、定期的にかけてくる。
いつもは軽薄そうな男がなれなれしく話しかけてくるのだが、今日は違った。
テレビで見た覚えがあるのだが、頭にヘッドセットをかぶり、愛想良く話しかける、あのカワイイ声だった。
ぼくは一瞬たじろぎ、
「いまはお金がたくさんあるので、いるときはお願いします」
なんて言ってしまった。
フールオンザヒル
今日は月曜日。お店は休み。
少し前の天気予報によると、今日は雨が降るらしい。
しかし、朝から思い切り晴れている。雲ひとつない。
ドライブ日和であったが、懸案の庭の草を刈り取る作業をすることにした。
草刈機に、先日ナフコで買ってきたワイヤーブレードをセット。
近所迷惑な派手な爆音を撒き散らしながら作業を続ける。
ぼくはよく思う。近所の住人たちは、ぼくらのことをどう思っているのだろう。
1、変人
2、危険人物
3、バカ
退化論
ざる
一週間のうちでどの曜日が一番ヒマか、と問うなら
その答えは用意がある。
金曜日。
なぜだかわからない。というより、わかる気がない。
昨日は金曜日。やはりヒマだった。
そう思ってるのに、レジを締めてみると売上がけっこうある。
ぼくの記憶を元に計算すると、今日の売上はこの半分のはず。
不思議だ。
記憶されなかった作業時間があるとしか思えない。
ぼくをすり抜けていく記憶がある。
ザルになりつつあるぼくの記憶システム。
わかりやすく言うとボケが始まっている。
入梅
夕方になって、雨が降り出した。
ずいぶん遅れたけど、梅雨に入りそう。
この季節、ぼくの住む皇徳寺では雨蛙が鳴き始める。
皇徳寺は山の上だ。
どこで産卵するのか分からないが、わが家の庭にも毎年姿を見せる。
ぼくは蛙は嫌いじゃないが、わが家には大の蛙嫌いがいる。
雨蛙はきれいな色をしている。
アジサイの花によく似合う。
観賞用として飼ってもいいくらいだ。とぼくは思うのだけど。
記憶
今夜の映画は寺尾聰主演の「半落ち」
久しぶりに観る邦画だ。
アルツハイマー病で呆けていく妻を愛するゆえに手に掛ける。
サラリーマン時代、懇意にしていただいたお客様の話を思い出した。
彼女の父は医者であったが、老境に入ってまもなくボケが始まった。
医者であった彼女の父は、これから自分がどうなるのかはっきり悟った。
記憶の喪失、それはつまり愛する娘、家族との別れであった。
父は、娘を前に号泣したという。
現在、彼女の父は入院しているが、彼女を娘として認識できないそうだ。
六月蝿
頭の中を、いろんな悩みがハエのようにブンブン飛び回ることがある。
ここ数日、そんな感じだ。
どのハエも、捕まえてみると、たいしたことなかったり、ぼくの手には負えないことだったりで、結局悩むだけバカらしいのだけど、ハエは相変わらずブンブン飛び回る。
そんな時は、多分酒で気分を紛らわすのがよさそうなのだけど、
ぼくにはそれができない。
薬嫌いな性分と根は同じなんだろうと思う。
とうふや
昨日、ドライブの帰りに豆腐屋に寄ったら豆腐は売り切れていた。
その豆腐屋は仏壇で有名な川辺町の山奥にあって、友人が営んでいる。
なんでも、水がうまいからここにしたのだそうだ。
確かに彼の豆腐はうまい。だからわざわざ買いにいく。
まずければ、いくら親しい友人の豆腐であっても買わない。
彼の店も、うちと同様、月曜日が定休日である。
というわけで、月曜日に行くと売り切れていることが多い。
たまに前日のが残っていることがあるのでそれを買う。
彼はイイ男なので、定休日にやってきて豆腐がないのをぼやく悪友のために、わざわざ配達してくれることがある。
今夜は彼が届けてくれた豆腐を冷奴にして食べた。
うまかった
潮風のメロディ
今日は月曜日で休み。
いつものように朝からドライブに出かけた。
山川町の温泉に行くつもりだったが、指宿スカイラインを走ってたら気が変わった。
2週間前に行った笠沙町にある食堂の日替わり定食を食べたくなったのだった。
そのときの日替わり定食は、カワハギの唐揚げ。
途中、加世田の海浜公園に寄った。売店でアイスクリームのショーケースを開くと、どの袋も霜がべったりこびりついている。去年のアイスクリームかも。霜のついてないアイスモナカを選んだが、噛んだらカチカチ。これもビンテージものだったらしい。今日はついてないようで、笠沙町の食堂の日替わり定食はヒレカツ定食だった。ここではぼくは魚料理しか食べたくない。焼魚定食からカマ焼きを選んだ。これはうまかった。笠沙まできたら例のあそこに寄らずに帰るわけにはいかない。例のあそこに行くと、哀愁を帯びたハーモニカの調べが潮風に乗って聞こえてきた。そこのマスターが吹いているのだった。マイクで増幅し、道路端のラウドスピーカーを派手に鳴らしている。だれもいないのに。