
先週から新しいブレンドコーヒーを開発中なのである。名前はナルシス。深煎りなので、けっこう苦い。試作品を何名かのお客さんに飲んでいただいているが、ウマイと言う方もいれば、首をひねる方もいる。だが、人の評価など、どうでもいい。ぼくが飲んで、うまければ良い。それがナルシスなのだ。夕方、お客様の一群が去り、カップを洗っていると、荒々しい爆音が近づいてきて店の前で止まった。ドアが開き、やがて表れたのは常連のAMさんであった。
「嫁さんにバイクは止められているんだけど、買ってしまいましたよ」
危ないから、バイクだけはダメ、と言われているらしい。
kawasaki W3というバイクだそうだ。
「濃いのをいっぱい飲ませてください」
ぼくはナルシスβバージョンを作った。
「うまいですね、これ」
彼の好みははっきりしている。気に入らないときは何も言わない。
彼とぼくはカーキチなので、車やバイクの話題でひとしきり盛り上がった。ぼくらは車に対する考え方が、驚くほど一致している。コーヒーの好みも。
きな粉日和

午前中、ぼくの車は遠い砂漠から飛んできた黄色い砂の中を走った。フロントガラスが黄色い粉で染まっていく。そのせいか知らないが、同乗者が途中寄ったスーパーで「そううつだものさんのところで紹介されていた、きな粉のお菓子を見つけた~♪」といって、奇妙なお菓子を買ってきたので、車を走らせながらそれを食べた。ぼくは思った。これをゴビ砂漠のみやげ物屋で売れば名物になるに違いない、と。ゴビせんべい、とか。昼はソバを食った。エビ天ソバ大盛りで1000円。食べながら思った。ソバに1000円払うのは、なんか変だ。1000円あればスシが食えるし。価値観の問題だろうけど。午後はヒョウの中を走った。フロントガラスに白い粒が当たってカチカチ音を立てた。なんだか今日は変な日だった。
はるがきた
はるがきた。ぼくを起こそう。
冬は終わった。
酒の準備をしよう。
北に、東に、南に、そして西に向かって、目覚めたぼくは乾杯する。
音楽を選ぼう、慎重に慎重に。
目覚めたぼくが、夏に向かって歩きだすため。
静かな土曜日
知らないことばかり
ゆめのそら
昼メシ準備完了
何か

今、某豆屋の皇徳寺店で、小花さんちの小さな布小物展を開催しているのだけど、これが予想外の盛況ぶりなのです。展示してあるのは手作りの布小物。どうしてなんだろう。ぼくは正直なところ、驚いてます。でも、その理由、作者のブログを読むと分かるような気がするのです。作者の人柄が作品に表れているんでしょうね。それは、うまく言えないけど、最近、失われつつある何か。
シンデレラの草履
運動不足を感じた夜

天気が良かったので、パンとコーヒーを持って某動物園横の某公園に行った。動物園は有料だが、この公園は入場無料なのでぼくはとても気に入っている。公園を歩いていると、たまにライオンやシマウマ、オットセイの恐ろしげな叫び声が聞こえてきて、思わず足が止まる。ぼくのDNAに刻まれた防衛本能がそうさせるのだろう。この公園の歩道はすべて坂である。坂。それは人生を連想させる。ぼくはコーヒーの入ったポットとパンの入った袋、そしてカメラをぶら下げて急な坂を上った。そう、人生とは重き荷を背負いて坂を上るようなものなのだ。坂は長かった。といっても50メートルくらいだったが。坂を上りきると眺望が開けた。そこでぼくらはベンチに腰掛け、パンを食べた。空腹はパンで満たされる。しかし、ぼくの心はどこか陰のある人のように、うつろだった。人はパンのみにあらず。ぼくが本当に欲しいのはパンではないのだ。腹がふくれるとそう思う。時計は2時を回った。今日は4時からOさん宅でリエットの作り方を教わる予定だ。リエットとは、簡単に言うと豚肉で作ったコンビーフのようなもの。フランスパンにはさんで食べると涙が出るほどウマイ。ような気がする。
午後3時59分45秒。ぼくの運転する車はOさん宅の玄関前に停まった。ぼくはドライブの達人である。門限ピッタリに同伴者を送り届けるのは朝飯前なのだ。ぼくとドライブしたことのある人ならだれでも知っている。6時過ぎ、完成したリエットを前に、ビールで乾杯。さっそくそのできばえを試してみると、それは冬だった心に思いがけず春が訪れ桜が咲き、ウグイスが鳴き始めたような、つまりパノラマ的感動を呼ぶ大変うまいものであった。ぼくは静かに食べるように最近心がけている。イメージチェンジを図ろうとしているのだ。静かに食べていると、突然、左のフトモモがつった。食事中に足がつったのは初めてだった。昼間、重き荷を背負いて坂を上ったせいに違いなかった。しかし、座の面々からはぼくの運動不足を指摘する声が上がり、次のような体操が効果があるとのことで、全員立ち上がり、某ヨッパライの指導の下、不気味な体操が始まった。それは、ガキデカというマンガの主人公がとるポーズに酷似していた。知らない人が見たら、なんと思うか、ぼくはそれが気になった。









