架空の記憶

数名のお客様の相手をしてる時に電話が鳴った。
「いつもの豆を各1キロ、明日取りにきます」
相手はそういった。市内の喫茶店からだった。どうしたことか、ぼくはその注文をコロリと忘れてしまったのだった。それを思い出したのは、深夜、音楽を聞き終えて、プレーヤーからCDを取り出した時だった。ぼくは冷や汗が出た。あわててメモを取り、仕事着のポケットに入れた。明日はいつもより早く出勤し、余計に豆を焼かなくてはならない。翌朝、出勤して真っ先に電話のメモを調べた。注文を受けた形跡がない。妙だな、と思った。書いたメモを読み忘れることはあるが、メモを書き忘れることはないからだ。とりあえずぼくは注文どおりの豆をそろえ、お客様を待った。しかし、お客様はついに現れず、夜が来て閉店時間となった。これはどういうことだろう。昨日の電話は幻だったのか。ぼくは架空の記憶を思い出して、せっせと豆を焼いたというのか。ぼくはその喫茶店に電話をした。だれも出ない。閉店時間を過ぎたらしい。ぼくは不安になった。変な話、最近ぼくは奇妙な幻を見ることがある。そうだ、ぼくは壊れはじめているのだ。そう納得するに足る根拠がいつの間にか出揃っているのに気づき、ぼくは愕然とした。とにかく明日の朝一番で喫茶店に電話をしなくては。

“架空の記憶” への6件の返信

  1.  最近 まったりとしすぎてニューロンの断線や脳内ファイルの断片化が進んでいるようですな。そういう時はバーボンをロックで4~5杯あおって、仕上げにサイドカーとダイキリを数杯いれる。総仕上げに超ドライなマティーニを流し込んでデフラグ終了!もちろん のり一も忘れずに(^^)

  2. ☆あきこさんはどう思いました?
    やはりぼくのアタマが変なんじゃないかと思ったでしょう。
    でも、違ったんです。お客さんが、すっかり忘れてたんですよ。かなり几帳面な方なんですけどね。
    いや~、ほんとに、ホッとしました。
    ☆えぼりさん、そうそう、いつもこのパターンでしたね。あの頃を思い出しました。いまでも、のり一、あるんでしょうか。あの塩味ラーメンは、飲んだ後にぴったりでしたよね。
    脳のデフラグ、今度いっしょにやりましょう。

  3. あきこさん、えぼりさん、ぼくも「鮮明なかんちがい」+「脳内神経の断線」だと思っちょりました。が、
    とりあえず、セーフでしたがよ。 ;^_^A

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