日が暮れるのが、ずいぶん遅くなってきた。とてもうれしい。
帰り道、窓を全開にして車を走らせた。風はまだ冷たい。虫の声が通り過ぎる。時折、悩ましい匂い(ワカル人には解る、アノにおい)が車内をすり抜ける。思わずニンマリ。夏のスイッチが見えてきた。何か悪いことをしたくなるような、浮き足立った気分。
故郷の空
ここ数日、目の奥が痛いのは、隣の国から飛んできた黄色い砂のせいだと思う。店にいらっしゃるお客様も、そう言っていた。今日は朝から少し雨が降り出した。フロントグラスに落ちてくる雨粒が、心なしか黄色く見える。
幼い頃ぼくが住んでいた所では、空はいつもこんな具合だった。
火星からいらした人なら、そう言うかもしれない。
initiation
蝶は卵からイモ虫になり、サナギになって羽化、どこかに飛んでいく。その体(ハードウェア)は劇的に変化し、当然、それをコントロールするソフトウェアもがらりと変わる。もし、蝶に感情があるとしたら、自分の意思に関係なく起こる身体の激変をどう受け止めるだろう。果たして支えきれるのだろうか。想像を絶することである。(想像だけど)
時に人は、こころを閉ざし、あたかもサナギのようになることがある。果たしてそれが病気なのかは分からない。あの小さな虫でさえ、驚異的なプログラムを複数備え、巧妙に切り替えて外界に順応している。ならば人間に同様のことができても不思議じゃない。つまり、ある者は環境に応じてサナギになり、取って置きのプログラムを発動して変化している可能性がある。サナギ化は一種のinitiation(通過儀礼)というわけだ。もちろん、それは自分の意思によるのではなく、大自然の声による。そういえばぼくは最近、野菜より甘いモノが好きになった気がする。そろそろ蝶になって飛んで行くのかもしれない。
それではみなさん、さよ~なら~
Purple Rain
今日は定休日。昨日、今日と、晴天が続いている。ただ、黄砂のせいでカスミがかかっている。いつもは南の方に走るのだけど、今日は北に向かった。というのは、時々(勝手に)おじゃましている、あやさんのブログに、次のような文章を見つけたからなのだった。以下、牧園町和気公園「藤まつり」に行ってきたという記事から勝手に引用します。スミマセン。
— 牧園の清浄な空気の中に藤の香りが立ちこめ、何ともいえずいい感じであった。いい感じすぎて皆一様にテンションが上がっていたようであった —
ここ数日テンション下がりっぱなしのぼくの目に、この文章はヒジョーに魅力的に映った。高速道路を飛ばし、1時間弱で和気公園に着いた。おお、たしかに甘い匂いが漂っている。これは…そう、ファンタグレープの匂いだ。ファンタスティック!入場料300円を払って、満開の藤棚の下を歩いた。これだけたくさんの藤の花が咲いている下を歩くのは初めてだった。まるで紫の雨に降られているような幻想的な気分。(BGMはPrinceのPurple Rainでお願いします)
テンションがあがってきたところで、ぼくは高千穂峰の麓、御池に車を走らせた。いつものように、二人乗り手漕ぎボートでのタイムトライアル。昨年10月のトライアルでは、屈辱の13分40秒。前回の記録を55秒もオーバーし、ショックを受けたのだった。今回は大幅な記録更新を狙い、必死で漕いだ。その甲斐あって、12分14秒。前々回の記録をも31秒も短縮し、新記録を達成した。
霧島市立和気公園 藤まつりのホームページ
夜の鳥
低空飛行は続いている。なにかに迷い込んだらしい。
「かんじんなことは、目に見えないんだよ」
サンテグジュペリ、星の王子様に出てくることば。
夜間飛行
深夜、一人で見る空。とても暗い空。
動いている星は飛行機。
なんだかんだ言っても、結局は一人なんだな、と思う。
愛する人も、愛してくれている人も、ぼくのことを忘れて眠っている。
低空飛行中
アスファルトの穴がよく見える。
今日は浮力が下がっている。
落ちそうで落ちない。ぼくはその辺がうまい。
なにもないのです
冷たい風が吹いている。窓から見える西の空はぼんやり煙って、溶けたノーミソにうまくシンクロしている。ノーミソを起こすためにコーヒーを飲んだ。コーヒーを飲みながら、遠くのカバみたいな白い雲を眺めていたら、ムーミン谷の冬は終わっただろうか。そんなバカなセリフが浮かんだ。そしてなにか古い、とても懐かしい記憶がわき上がる気配を感じて、しばらく待ったが、なにもなかった。
春の青空
晴れているのに空はかすんでいる。
山の向こうに白い雲が見える。
夏の雲と違って輪郭が溶けてぼやけている。
青い水たまりにソフトクリームを落としたような空。
ぼくと君を分けているのは何だろう。
空から降る黄色い砂のせいで境目がはっきりしない一日。
confusion
昨夜はF氏から借りた「ロング・エンゲージメント」というフランス映画を見た。謎解きになっているのだけど、謎にかかわる登場人物が多い上に名前がおぼえにくく、すぐに頭痛がしてきた。途中、ジョディ・フォスターそっくりの女優が出てきてフランス語をしゃべったために、ますます混乱した。フランス人なら、きっとここで笑うんだろうな、という場面が多数あったが、ぼくはどうしても笑えなかった。ぼくのコンディションが悪かったのかもしれない。変な映画だったが印象に残った。いや、かなりおもしろかった。やっぱりフランス映画はいいなぁ。