山の向こうに何があるのだろう。たぶん、だれも知らない。少なくともぼくは知らない。冒険はいつもこのようにして始まる。そしてぼくは今日も美しい白馬にまたがって山を超える。ような気分で汚れて灰色になった白い車のアクセルを踏んだ。
山を下って信号を右折し、まっすぐ走っていくとそこは海。海の向こうに何があるのだろう。たぶん、だれも知らない。少なくともぼくは知らない。しかし、今日はそんなことはどうでも良かった。遠い目で海を眺めながら、お客様から頂いたリエットをおごそかにパンに塗りつけて食べるのが今日の目的なのだから。その前に海の写真を撮ってこようと思い、海に面した岸壁に車を止めた。
「写真を撮ってくるからパンを切って準備していてくれ」と、となりのヨッパライ某に言い残し、海岸に出た。写真を撮って車に戻ると、ヨッパライ某がうれしそうな顔をして「ニュースがある」という。ぼくはイヤな予感がした。
「リエット、忘れちゃったー」
実にすばらしいニュースだった。パンだけではあまりに悲しすぎるので、車はUターンし、某食堂に向かった。1050円の定食を食べ終えると車は近くのカメが多か、という丘に上っていった。
その丘の眺めのいい展望所には桜を植えた庭園があり、池があった。カメはいなかったが、オタマジャクシが1600匹近く泳ぎ回っていた。
帰りに海浜公園に寄って、しばらく池を眺めていた。
サルの握手
ひさしぶりに海に来て、だれもいない波打ち際を歩いた。
どこまでもどこまでも歩いていると、水際にきれいな白い鳥がいた。
写真を撮ろうと思って、そうっと近づいていった。
でも飛んでいった。
数日前の、某ブログの記事を思い出した。
———- ここから ———-
私は自分が若い日に傾倒した哲人の言葉を思い出していた。正確な言葉ではないが、子どもの教育にも打ち込んだその哲人は、子どもから、「わたしはリスが好きなのに、わたしが近づくとリスは逃げてしまいます。どうしらたいいのですか」と問われた。彼の答えは意外なものだった。そしてその答えは、私の心にずっと残った。彼の正確な言葉は忘れたが、こんなふうに答えた。「リスがきみに安心感が持てるように、毎日リスのいる木の下でじっとしていなさい。何日も何日も。」 その奇妙な答えは彼自身が自然のなかの暮らしで実践していたものだった。大樹の下で禅定ともなく静かに日々座って、リスや山の動物たちが彼を恐れなくなるまで慣れさせ、そしてやがて彼の体にリスが乗り駆け回るようまでなった。猿がやってきて握手を求めたともあった。
猿の握手。私はそんなバカなと思ったが、別途動物学の本で、仕込んだわけでもなく自然の猿にそういう習性があるのを知った。
ショーシャンクになれなかった
しまった、パトカーだ!
ぼくは車を急転回させ、民家が軒を並べる狭い路地に逃げ込んだ。背後でサイレンがけたたましく鳴り響く。ぼくは最初の十字路を左に折れ、目についた高級住宅のコンクリート車庫に車を突っこみ、シャッターを下ろした。
と、そこで目が覚めた。いやな夢だ。
今日は雨のはずだった。しかし、カーテンを開けると、空はどんより曇っているものの雨は降っていない。
くそっ。
ぼくは舌打ちした。週間予報では今日は雨だった。そのつもりで、きょうはショーシャンクな一日を計画していたのだ。つまり、指宿の某貸切温泉の外湯に浸かり、全身に雨を受けながら喜びに満ちた顔で空を仰ぐ予定だったのである。
しかし、あきらめるのは早い。もしかすると指宿は雨かもしれない、と思って、とりあえず車を走らせた。が、天気はますます良くなり、雲間から青空が見えはじめた。ショーシャンクな計画は失敗に終わったのである。
天気が良くなってきたので某植物園まで足を延ばし、そこで食事をとることにした。温泉横の山を超えて池田湖を半周し、しばらく走るとそこが植物園だ。つづら折の坂を上りきると空が開け、気分も明るくなってきた。が、そこには黒白ツートンカラーの車が待ち構えていた。ちなみにスバル・レガシーターボ。
「どちらへ行かれるんですか?」
車を止め、窓を開けると、背筋のピンと伸びた立派な体格のお兄さんがニコニコしながら聞いてきた。
ぼくの顔は思い切り引きつっていたが、となりのヨッパライ某がうまく応えてくれた。まったく心臓に悪い。
植物園の花壇に、きれいなキャベツが噴水のように植えてあった。
ここのチューリップ畑はほんとにきれいだ。
いつかわが家の庭もこんな風にしようと思う。
レストランで昼食。
ホワイトクリームと焼サーモンのスパゲティーなんとか。
公園にて
昨夜は某駅ビル映画館でMamma Mia!をみた。おもしろかった、というより、楽しかった。ABBAの曲を使ったミュージカルなんだけど、だれかがABBAの曲を歌うたびに、その歌詞が字幕に出る。ああ、なんてステキな詩なんだろう。ABBAの曲って、こんなにすばらしかったのか。ぼくは素直に感動しました。
何も考えず、楽しむための作品です。ぼくは十分楽しめました。
ビールでも飲みながら見るといいよ。
というわけで、ぼく的にこの映画のキロク: ★★★★★
コーヒーをポットにつめて海に向かった。
昨夜、某F少年のブログで見た某公園のベンチの色が変だったので、途中、某公園に寄って確かめてみた。やはり塗りなおしてあった。ぼくは些細なことでも気になると眠れなくなる。
公園にはぼくの好きな遊具がいくつかある。特に好きなのがバネの付いたカバたちだ。やったことのある方なら分かると思うが、これにまたがって前後左右に揺さぶると、子どもに比べて重心が高いせいか、おもりを先につけたメトロノームの針のように派手に振れまくる。子供用の遊具とは思えないほどのスリルに、われを忘れて熱中してしまう。なめてかかると投げ出され、顔面から地表に激突し、鼻血が出たりする。なかなかの優れものだ。しかし、夢中になっているところをケータイなどで激写され、ヘタすると「変なおじさん発見!」などといったブログネタになる恐れが高い。まったく油断ならない世の中だ。
ベンチを見て安心したので、海に向かうことにした。駐車場の木に、まっくろくろすけがたわわに実っていた。
その海に抜ける細い道には、昼も夜も雨の日も風の日も、黒い服を着た目つきの鋭い男の人が立っている。
着いた。ポットから熱いコーヒーを注ぎ、冷たい風の中で海を眺めていた。
空気に溶けた一日
湯治な一日
寒い日が続いたせいで、店のコンクリートの床がコチコチに凍りつき、ぼくのデリケートな足の指に赤いしもやけができてしまった。そこで、そんなかわいそうな足の指をいたわってやろうと思い、指宿の某温泉に行くことにした。いつもの温泉に行くと、八つある湯部屋のうち、縁の湯と恵の湯が空いていたので、今日は縁の湯を選んでみた。湯舟の隅に石臼が据えてあって、そこから温泉が流れ出している。うーん、これはいい。このつぎ家を建てるときは、わが家の風呂もこんなふうにすることにしよう。
かわいそうな足の指がふやけてきたので、いつもの温泉を後にし、湖を半周していつものハーブ園に行き、いつものランチを食べた。
こうしょっちゅう行っていると、まるで自分の家のような気がしてくるから不思議だ。
正月モード4日目
朝起きたら晴れていた。
そういうわけなので、今日は南に走ることにした。
海が輝いている砂浜を歩いていると、懐かしい記憶が次々に蘇ってきて、なんだか切なくなる。ぼくにとってここは記憶の海。
腹が減ってきたので、ハーブ園にあるレストランに行った。
すると、注文をとりにきた店の方が
「ギックリ腰はよくなりました?」
と言って微笑んだ。ぼくはすっかり忘れていたのだが、前回この店に来たときに、あの白いチャンピオンベルトを店の人に見せびらかしたのだった。デザートはもちろん、ハイビスカスのシャーベット。ぼくはこれを食べないと年が明けない。ような気がする。
食事を終える頃、大粒のうろこ雲が空を覆いはじめていた。ぼくは某植物園へ行き、太陽の下でキラキラ輝くチューリップを見たかったのだけど、植物園に着いたときには空はもうすっかり曇っていた。曇り空のチューリップたちは、こころなしか申し訳なさそうに見えた。でも悪いのは君たちじゃない。もちろん、ぼくでもない。
この植物園には伊豆の踊り子という早咲きの桜が植えてあって、2月上旬には満開になる。見ると、つぼみがふくらみ始めている。よく見ると、気の早い花が二輪咲いていた。春よこい。
見晴らしのよいベンチに座って、ポットの熱いコーヒーを飲んだ。ニューギニアで大きな地震があったそうだが、ここから見る海は静かで穏やかだった。
正月モード3日目
寝坊したと思ってあわてて起きたら、まだ休みだったのでほっとした。正月三日目の朝は思い切り晴れていた。というわけで、コーヒーをポットにつめ、車を走らせることにした。正月ということで、とりあえずいつもと違う方向に走ってみた。積雪が残る高い山を二つ超え、左折すると、いつの間にかそこは海であった。
海に面したドライブインで、ぼくは潮騒定食、ヨッパライ某は期間限定ウニ丼を注文。アラカブの味噌汁と刺身が絶品であった。
いつものように道に迷いながらテキトウに走っていると目的の展望所についた。
駐車場は満杯だった。駐車場の一画には焼いも屋とたこ焼屋が出店していた。なるほど、正月なんだなぁと感心した。ぼくは人が集まるところは苦手なので、早々に展望所を後にした。
海を右手に見ながら走っていると、なんとなく絵になる自動販売機を発見してしまった。海に沈む夕日を眺めながら飲む缶コーヒーは、さぞやココロに沁みるだろう、と思ったが、ぼくは試す気はない。
先ほどのドライブインの下に漁港があったので、寄ってみた。夕日に向かって、漁船が次々に出港していく。ドラマチックな風景だ。ぼくはテトラポットに腰掛け、太陽が海に沈むまでそれを眺めていた。
And Winter Came
冬がくる。ぼくはF少年から借りたエンヤの新しいアルバム、And Winter Cameを準備して車に乗った。山を超えたあたりで、アイルランドにあるような冬らしい空になってきた。ムーミン谷のカバたちはもう冬眠しただろうか。そんなわけで、そろそろエンヤをかけようと思い、カーステレオにつないだiPodもどき(iPodは高いので、ぼくは似たような安いのを愛用している)のボタンを押した。
すると、思いがけず天地真理の「恋する夏の日」が鳴りだし、かなりうろたえた。運転しながらiPodもどきを操作するのは難しいのである。なかなかエンヤを探し出せないうちに車は某海浜公園に到着してしまった。すると、ここはもう正月が来ていたのだった。とにかくメデタイような気がしたので写真を撮り、公園を後にした。
車は更に南下し、東シナ海に面した曲がりくねった道路に出た。とても冷たい風が吹いていた。某美術館の屋上で、海を眺めながら、持ってきた熱いコーヒーを飲んだ。