車が目的地に着いたとき、時計は1時をまわっていた。
とにかく腹が減っていたので、湖畔にある食堂で昼食にした。その店の前には、そうめん流し機も並んでいて、そのうち数台がスタンバイしていた。
以前、ここで食べた時、鯉のあらい定食がおいしかったので、今日もそれを頼んだ。注文すると、おかみさんが大きな網を持って店の前の生簀に向かう。店は質素だけど、ここの定食は一級品だ。ほんとにおいしかった。
腹がふくれたので、いつものようにボートに乗ることにした。
目立ちたい年頃の某F少年なら、きっと派手なピンクのミッシー号を選ぶであろうが、
ぼくはもう十分に大人なので、目立たない、ふつうの手漕ぎボートを選んだ。
湖の中央付近にボートを停め、ぼくは湖の深さを想像した。この湖の水深は、その大きさの割にけっこう深く、100m近くある。あのジャック・マイヨールによる素潜りの世界記録が105m。ほんとうに深い。
スイカモード
天気もいいし、ぼくは霧島にボートを漕ぎに行くつもりでいたのだが、それをヨッパライ某にいうと「わたしは魚が食べたい」というので、車は山を越え、信号を左折して坊津方面へと走りはじめた。いつもならポットにコーヒーを詰めて出かけるのだが、今日は海に面した某レストランにも寄ってみよう、ということで、コーヒーの準備はしなかった。片浦にある魚料理店に着いたのが昼前だった。ぼくは地魚定食、ヨッパライ某は寿司定食を頼んだ。運ばれてきたお膳を見ると、ぼくの頼んだ分にはスイカが付いていた。
昨日書いたとおり、ぼくはまだスイカを食べる気分になっていない。だからといって残すのももったいないので、期待せずに食べた。
うまい! そして懐かしい。
その時ぼくの中のナニかがカチッと反応した。夏だ。夏のスイッチの一つがONになった。ぼくはもっとスイカを食べたくなった。いや、食べなくてはならない。今やスイカは、ぼくのココロのご飯になったのだ。家に帰ったらさっそく箱から出し、すぐに冷やそう。
店を後にし、食後のコーヒーを飲むために海に面した某レストランに向かった。駐車場に車を停めてドアの前に立つと、なんだか様子が違う。ドアが新しくなっている。それに、あのひどく読みにくい手作りの看板がない。どうやらリニューアル中らしい。ということは、休みなのだろうか。そういえばドアの下に「準備中」の札が落ちている。呼んでも返事がないので、デッキのほうに行ってみると、屋根に梯子がかかっている。屋根のペンキ塗りをやっているのだろうか。そうか、ペンキが切れたので買いに行ったのだろう。ぼくはそう思うことにした。
とにかくコーヒーは飲めそうにないので、ぼくは引き返すことにした。某海浜公園でしばらく遊んだ後、車は帰路に就いた。まだ2時半だった。帰るのがいつもより早いのは、早くスイカが食べたかったからだ。
家に帰り着くと、ぼくはスイカの入ったダンボール箱を開け、顔を出したスイカのアタマをコツコツたたき、音の低いほうを箱から取り出した。ああ、なんという美しく立派な果実。ぼくはまずその天上なるデザインを称え、撫で回し、そしてほおずりした。
魚肉ハンバーグな休日
天気もいいし、風もさわやかだ。こんな休みの日には、ぬるめの温泉にでもつかって、道端の花でも見ながらポチポチ歩いて、腹が減ったら青空の下でニッスイの魚肉ハンバーグが入った弁当を広げる、みたいな一日を過ごすのが良いかもしれない。みたいな結論に達した。カメラには最近お気に入りの古いレンズをくっつけることにした。このレンズで撮ると人も風景も適当にボケてくれて、アナログっぽい写真が撮れるのである。
まず、予定通り某温泉に到着。外湯につかって、空を見ながらぼーーっとしていると、体のほうも、「ん? 今日は休日らしいぞ。じゃあぼくもぼーっとしよ~」という感じで、ぼーっとしてくる。
身もココロもぼーっとしてきたところで、温泉を後にし、車は山をひとつ越えて某植物園に着いた。
園内を歩いていると、あちこちでアジサイが咲いている。
梅雨も間近だ。
ニッスイの魚肉ハンバーグにマヨネーズをかけたのが入った弁当を広げる。ぼくがかつて日本人らしい日本人だったころ、弁当に魚肉ソーセージや魚肉ハンバーグが入っていると涙が出るほどうれしいものだった。ような気がする。
魚肉ハンバーグ弁当を食って、園内をぶらつく。サーロインステーキクラスの贅沢な休日とはいえないが、今日もいい気分だ。
初夏の日差し、空は秋色
デジイチに古いレンズをくっつけて、ドライブに出かけた。
古いレンズだから、ピントは手で合わせる。時間はたっぷりあるので、のんびりとピントを合わせる。遅いからといって、だれも怒ったりしない。風の音、鳥の声、川の流れる音。今日は、いつもとコースを変え、ダムの横を通って南九州市の岩屋公園に走った。
川のそばのベンチでランチタイム。パンに手作りリエットをはさんで食べる。珈琲はもちろん、某珈琲店の珈琲。
アサーッ! なわけないか
このはし、渡るべからず。
崖になにか彫ってある。
帰りに、中山インターチェンジ近くの園芸屋さんでアイビーゼラニウムというのを買った。
勇気があれば
今日は全国的に月曜日であるが、某珈琲店は定休日であった。予定では霧島の御池でボートを漕ぐはずだったが、出発直前になって突然気が変わり、車は薩摩半島南端に位置する某町営そうめん流しへと走り出していた。
指宿スカイラインをぶっ飛ばし、ジャスト12時に到着。
ところでぼくは古い人間のせいか、昼飯に600円以上出す気には到底なれない。しかし、某町営そうめん流しのAセットは、なんと1600円もする。当然、これを昼に食べるためには相当な勇気が必要になる。と、そこでぼくは思い当たった。今朝、なぜか急に根拠のない勇気がフツフツと湧いてきたような感覚があったのだ。勇気があれば1600円の昼飯くらい何所吹く風だ。なお、これはO型の人に特徴的とされる、いわゆる「根拠のない自信」と同類のような気がする。
初夏の陽気だった。
雨のローズガーデン
風が冷たい休日
空は曇っていたが、車は西の海に向かっていた。
午後から晴れるという予報だった。海に面したいつものレストランの前を通ったが、空と海が灰色のせいで、気分が乗ってこない。
そのむかし風車村があったところに寄ってみた。青空が見えてきた。だれもいない。車は東に向かった。
いつもの植物園に寄ってみた。バラ園のバラが咲き始めていた。
展望所に上がって、海を眺めた。
睡蓮の花が咲いていた。
黄色い花
うわさによると指宿の知林ヶ島に遊歩道ができたらしい。一方、薩摩半島南端の山川漁港には道の駅(のよーなもの)ができたという。となると、今日は南に走るしかない。道の駅で新鮮な魚を買うべく、車にアイスボックスを積んで南に走りはじめた。車を走らせていると、海に面した道沿いの民家の庭に、鮮やかな黄色の花が咲いている。なんだろう。ぼくは気になりだした。そうだ、某植物園に行けば分かるかもしれない。というわけで、植物園も予定に入れることになった。
知林ヶ島は島である。海に囲まれている。だが、潮が引くと、見よ、海が真っ二つに割れて砂州が出現、地続きとなる。そこを十戒のモーセよろしく、人々は歩いて渡るのである。指宿市の「知林ヶ島の砂州情報」で調べてみると、本日は13時30分から17時10分までの3時間40分、砂州が出現するとある。
というわけで、まず山川漁港の道の駅に行って魚を買い、次に某植物園で花の名前を調べ、園内で昼食をとって知林ヶ島に赴くことにした。山川漁港の道の駅に行くと、案の定、駐車場は満杯だった。ぼくは待つのが大嫌いなので、今回はあきらめることにし、某植物園に向かった。
植物園のロビーに入ると、正面に見たことのない苗が並べてある。
「おい、この葉っぱ、コーヒーノキに似てないけ?」
と、ぼくが言うと、ヨッパライ某が、
「目の前のチラシを見てごらんよ。キミが探してる黄色いのって、これじゃん」
見ると、まさにこれであった。
園に出てみると、道沿いのあちこちで咲いている。満開だ。
そういえば、何年か前に、花が咲いているのを見た記憶がある。それにしてもすばらしく鮮やかだ。黄色い花。
レストランで食事をとり、園を後にした。
休暇村指宿の芝生広場を抜けて海に出る。島へと続く砂州の上を、多くの人が歩いている。
歩いても歩いてもなかなか島にたどり着けない。なぜだ。ここは異次元空間なのか。ちなみに距離は850mだそうだ。
遊歩道の階段の途中から見た魚見岳方面
展望台から見たところ。クリックで拡大。
休暇村指宿の芝生広場。黄色い花はミヤコグサ。
魚見岳から知林ヶ島を臨む。左手に見えるのは桜島(昨年7月)
弁当を広げるのによさそうな所
ひさしぶりに晴れたのでドライブに出かけた。たまには近場で弁当を広げるのもいいんじゃない? と、ヨッパライ某に提案すると、それなら松元町にイイところがある、という。なんでも、なんとかという(名前は忘れた)陶芸家が山を買って窯を開き、ギャラリーをやっているのだそうだ。「まだ行ったことはないけれど、その広い敷地にはベンチがあって、弁当を食べるのによさそうな所だよ」と。
ぼくは映画サウンドオブミュージックの冒頭に出てくるような、山の頂に広い野原が開けている図を想像した。
山を越え、レンゲの咲く田んぼ道を走り抜けるとそこが目的地だった。車を降り、辺りを見回すと、想像したイメージとずいぶん違う感じがする。ヨッパライ某が弁当とコーヒーを持って行こうとするので、「ちょっと中の様子を見てからにしよう」とぼくはいった。落葉低木に覆われた細く薄暗い道を歩いていくと、山里の庵といった趣の小さな建物があらわれた。
中に茶碗や皿が並べられていたので、入ろうとすると、若い男の人がやってきて、「奥の展示場へご案内しましょう」と、広葉樹の生茂る細い道を歩き始めた。遠くでコジュケイの鳴く声がする。静かだ。5、6分歩いたところに展示場はあった。
「どうぞごゆっくり、あとでお茶でも召し上がってください」と言い残し、若い男の人は帰っていった。「おい、こんなところで弁当を広げたらヒンシュクものだぜ」と、ぼくはトナリの人にいった。展示場を出て帰ろうとすると、露地先の茶室から、先ほどの若い男の人が「お茶をどうぞ」と、声をかけた。にじり口から中に入ると、ちょうどコーヒーをドリップしているところだった。
縁側の向こうに広がる風景を眺めながら、ぼくたちはコーヒーを飲んだ。時折ウグイスの声が聞こえる。恐ろしく静かな茶室だった。
路地の土手に顔を出していた白い草。ギンリョウソウかな。
山の庵を後にして山道を下り、吹上浜に出た。今日のお弁当は、先日お客さんからいただいた手づくりレバーペーストとトマトをガーリックパンにはさんだもの。山の庵では食べられそうになかったので、吹上浜のベンチで、コーヒーを飲みながら食べた。