冬がくる。ぼくはF少年から借りたエンヤの新しいアルバム、And Winter Cameを準備して車に乗った。山を超えたあたりで、アイルランドにあるような冬らしい空になってきた。ムーミン谷のカバたちはもう冬眠しただろうか。そんなわけで、そろそろエンヤをかけようと思い、カーステレオにつないだiPodもどき(iPodは高いので、ぼくは似たような安いのを愛用している)のボタンを押した。
すると、思いがけず天地真理の「恋する夏の日」が鳴りだし、かなりうろたえた。運転しながらiPodもどきを操作するのは難しいのである。なかなかエンヤを探し出せないうちに車は某海浜公園に到着してしまった。すると、ここはもう正月が来ていたのだった。とにかくメデタイような気がしたので写真を撮り、公園を後にした。
車は更に南下し、東シナ海に面した曲がりくねった道路に出た。とても冷たい風が吹いていた。某美術館の屋上で、海を眺めながら、持ってきた熱いコーヒーを飲んだ。
さよならをするために
自動操縦な一日
側面に沿ってナイフを入れたフランスパンの切り口にリエットを厚く塗りつけ、レタスとトマト、そしてキュウリをはさむ。それを三つに切り分け、ラップで包む。ポットに詰めるコーヒーは、最近お気に入りのゴールデン・ビートル。さあ、どこに行こう。でも、今日は考えないことにした。とにかく車に乗り、エンジンをかける。そしてぼくは頭の中のA.Cボタンをオンにする。A.Cとはオートクルーズの略。つまり、なにも考えなくても体が自動的に車を操縦し、昼食を食べるのに良さそうな場所にぼくを運んでくれるのだ。やがて気がつくと、車は指宿スカイライン沿線の千貫平自然公園の駐車場で止まっていた。
ぼくは車を降り、坂を上って公園の奥にある展望台に向かった。だれもいない。ぼくはテーブルクロスを広げてパンを載せ、熱いコーヒーを入れた。遠くで海が輝いている。いい眺めだ。ぼくはのんびりとコーヒーを飲みながら、パンを二個平らげた。あと一個は、次の場所で食べることにしよう。
再び車に乗り込み、A.Cボタンをオンにする。車は勝手にどこかへと走り出した。どうせ海にいくのだろう、と思っていると、車は思いがけず右折し、だだっ広い畑の中に入っていった。
そこは扇風機の町であった。どこまで走っても扇風機が立っている。
車は帰路に就いたようだった。バックミラーに夕日が映っている。車は茶工場の横で停止した。
茶工場と乱立する扇風機の柱が切り絵のようだ。ぼくは熱いコーヒーを飲みながら、暮れなずむ空を眺めていた。
やがて、月がくっきり浮かんできた。
わがままな花
くもり空
晴れでもなければ雨でもない。つまり、今日は一日曇っていた。晴れていればドライブに出かけるのだが雨の日もドライブに出かけるし曇っていてもドライブに出かける。それにしても今日は寒い。
こんな日は温泉に浸かって歌でも歌うのがいい。ような気がする。というわけで、いつもの温泉に行った。温泉からあがると腹が減ったので、いつものハーブ園に行って、いつものペルー風リゾットを注文した。
いつもならデザートはハイビスカスシャーベットにするのだが、今日はひさしぶりにカボチャプリンにした。その独特の風味は、おぼろになった遠く懐かしい記憶をふいに呼び寄せる効果がある。こともある。
温泉に入って、うまい昼ごはんを食べたら急に元気が湧いてきたので、近くの植物園に行って、ちょっと力試しをしてみた。
植物園をうろついていると、タトゥーのあるチョウが飛んでいた。タトゥーの文字を読んでみると、どうやら昨日この植物園から放たれたアサギマダラであるらしかった。近々、南の島へと旅立つのだろう。
私もチョウになって南の島に飛んで行きたいわ、うふ。
というあなたのために、写真のような装置が準備してあります。
ベンチに腰かけ、風の音を聞きながら熱いコーヒーを飲んだ。
帰り道、桜島の右手に霧島連山が見えた。
イセエビ味噌汁定食は思ったより高かった
山を超えて右に曲がると海だった。風もなく、波打ち際をどこまでも歩きたい気分だったが、歩いているうちに雨が降り出したので、また車に乗って南に走った。今朝見たフリーペーパーに、イセエビの味噌汁定食の記事があったのを思い出し、その店で昼飯を食うことにした。店に入ると満員だった。メニューを開くと、そのイセエビ味噌汁定食は思ったより高かったので、その約半額の海鮮丼定食にした。しかし、周囲を見回すと、だれもがそのイセエビ味噌汁定食を食べていた。ような気がする。海鮮丼定食もかなりウマかったので、その2倍以上するイセエビ味噌汁定食は死ぬほどウマイ、のかもしれないような気がした。だれかおごってくれないだろうか。昼食後、港のそばの木場商店というマーケットでヒゲナガエビを買った。
ちなみに今日は23回目の結婚記念日だった。
ローソクを燃やすのをしばらくサボってたので、一生懸命燃やしているところ。
いつもと同じ
cosmos
天気が良かったので、手作りの弁当を持って、錦江湾公園に出かけた。空にはウロコ雲が広がり、さわやかな秋風がコスモスの花をやさしくゆらしていた、と、書きたいところだが、日中はかなり暑く、空にはゴジラに似た変な入道雲がのさばっていた。この公園は、前も書いたかもしれないが、とても気に入っている。理由はタダだからだ。タダでこれだけ広い、コスモスやバラの咲いてる公園をうろつけるなんて、おらぁ、しあわせだ。が、時折、となりの動物園から野獣の叫び声がするのが難点である。見晴らしのいい木陰で、風に吹かれながら弁当を食った。できたら、おかずは魚肉ソーセージか、ニッスイの魚肉ハンバーグにマヨネーズを塗りつけたのが良かったが、今日はトリの唐揚げとタマゴ焼きであった。
宇宙人と交信中
いつもコスモスがたくさん咲いているところにはニンジンが植えてあった。と、一瞬思ったが、これはコスモスなのだった。来月あたりが見ごろかも。遠くに見えるのは平川動物園の観覧車。
ソバカツ定食のソバはぼくには甘かった
目覚めると朝だった。ヤバイ夢を見てたせいか、脳はすでに覚醒していた。目覚めた脳はさっそく、アフォーダンス理論について考え始めた。数日前にお客様からお借りしたシャロン・モアレム ,ジョナサン・プリンス著「迷惑な進化」という本が、ぼくをアフォーダンス理論にアフォードしているのだ。ちなみに、アフォーダンスとはアホのダンスではない。ぼくはアフォーダンス理論の研究のため、南へ走ることにした。天気もいいしね。
風は目に見えない。見えたら困る。かも
お化けのポストに見えるんだけど。
昨日、店の駐車場にいたメンタマが、もうこんなところに。
イシガキチョウ。愛想が悪く、逃げてばかりいた。
ソバカツ定食。1,050yen
デザート、ソフトクリーム。250yen(高いやんけ)
アダージェットな昼下がり
江口浜の蓬莱館に昼飯を食いに行ったところ、満員で、30分待ち、とのことだった。いくらなんでも30分は長すぎる。ぼくにとって、休日の30分はとても貴重なのだ。車はUターンし、国道を南に向けて走り出した。シュトラウスのワルツをかけながら車を走らせていると、いつしか流れ去る看板の文字がドイツ語に見えはじめ、気がつくとぼくはオーストリアの田舎町を走っていた。フキアー・ゲッフェンの町を過ぎた頃、右手に大きなビール工場が見えてきた。やはりオーストリアは違うな、などとつぶやきながら車を飛ばした。シュトラウスが何曲か続き、ぼくはマジでヨーロッパの田舎町を走っている気分になっていた(ヨーロッパには行ったことがないのだけど)。やがてシュトラウスが終わると、再びぼくは日本の田舎道を走っていた。昼食は大浦にあるナントカ食堂のてんぷら定食にした。ここのてんぷらと刺身はカナリうまい。店内は強烈な演歌がかかっており、先ほどまでのオーストリア気分はカンペキに粉砕した。店を後にし、車は近くの亀ヶ丘に向かった。カーステレオからは、マーラーの交響曲第5番4楽章アダージェットが流れ始めていた。ぼくはボリュームを上げて聞き入った。あの映画の一こまが浮かんできた。「ベニスに死す」すばらしい映画だった。ベニス…。ああ、いい響きだ。そう、どうせ死ぬならベニスがいい。ここ、亀ヶ丘からの風景も美しい。遠く広がる海。沈む夕日。銀の波間を往来する船のシルエット。だが、ここで死んだら、亀ヶ丘に死す、だ。ぼくはここでは死ねない、と、思った。