つきあいやすい自分

生きるってことを、以前より真剣に考えるようになった。たぶん、年をとったせい。今日も同い年の友人とコーヒーを飲みながら、こいつもずいぶん年をとりやがったな、と思った。言うまでもなくそれは鏡に映った自分を見てつぶやくのに等しい。こんな名言がある。「父親になるのは簡単だが、父親たることはなかなか難しい」なるほど。そこでぼくも言ってみた。「人間として生きるのは簡単だが、一人の人として生きるのはなかなか難しい」そんなことをブツブツ考えているうちに、むかし読んだ谷川俊太郎のエッセイ集にある文句を思い出した。


勝新太郎さんがどこかでこんなことを言っていた。おれっていう人間とつきあうのは、おれだってたいへんだよ。でも、おれがつきあいやすい人間になっちゃったら、まずおれがつまんない。私はすっかり感心した。自分とつきあうのがたいへんだなんて考えたことがなかったからだ。私は勝さんよりのんきな人間で、自分とも他人とも世間ともあまり衝突せずに生きてこれたと思っていたけれど、実はそれは自分で自分をごまかしていたにすぎないのではないか。


たぶん、多くの人が自分をごまかして生きている。そうしないと勝さんが言うように、大変だから。でも、自分をごまかしたら、人生の価値がなくなりそう