さびしい夏の夜

130731_01
風呂から上がって屋上に上がり、フェンスにもたれて夜景を眺めていた。遠くで灯台が点滅しているのが見える。風が気持ちよかったので、時を忘れて夜景に見入っていた。が、ふと、どこかおかしいような気がしてきた。何かが足りない。でもそれが何なのか分からない。なんだろう。虫の声は聞こえる。夏の夜だから。そうだ、前の通りの外灯に虫がいない。いつもなら、こんな夏の夜、虫たちが外灯のまわりでお祭り騒ぎをしているのだ。それがまったくいない。外灯のまわりは通夜のようにひっそりしている。昨年の暮れ、家の前の通りの外灯は全部LEDランプに付け替えられた。原因はそれだった。LEDランプに虫は寄ってこないのである。ああ、なんてこった。ぼくの夏の夜は思いがけず消えてしまった。さびしい。ぼくはさびしいぞ。だれかこの寂しさを解ってくれるだろうか。