カメラ小僧たち

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窓の外が暗くなり始めたころ、仕事男が店に入ってきた。ほかに客はいなかったので、二人でコーヒーを飲みながらカメラのことなど話した。彼の趣味も写真なのだが、今は少し遠ざかっている。彼の愛用していたNikonも、たぶん、たんすの奥で眠っている。ふと思い立ち、「ぼくを撮ってくれ」と彼にカメラを渡した。写真に写ったぼくは、ひどく疲れた顔をしていた。ぼくはこんな顔じゃない、と、だれかに訴えたかったが、それは間違いなくぼくの顔だった。カメラをぼくに返した後で仕事男は真剣な顔でつぶやいた。カメラを買おうかな。と。
そこにお客さんが入ってきた。プロカメラマンのNさんだ。彼が手にしているのはライカだった。仕事男とNさんは初対面だったが、カメラ好き同士ってことですぐに打ち解け、楽しそうに話し始めた。
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