涼しい朝

道路に面したドアを開けると、いきなり折れ曲がった階段。そう、当店のフロアは二階にあります。今朝、いつものように出勤し、鍵を開けてドアを引いたとき、ぼくはハッとしました。だれもいないはずの二階に、人の気配があったんです。しかも大勢の。と言っても、話し声や靴音がしたわけではありません。でも、そのときぼくは、ザワザワとした気配を、はっきり感じ取ったのです。おかしいな、と思いながら階段を上がると、薄暗い店内は当然のように、しんと静まり返っていました。しかし、なにか様子が違うんです。明らかにおかしいのは、なんともいえぬ甘ったるい、駄菓子屋にいるような、懐かしい匂いが、あたりかすかに漂っていたこと。でもそれはすぐに消え、コーヒーの匂いだけになりました。店では、朝、コーヒー以外の匂いがすることはありません。じつを言うと、これで二度目なんです。一度目は「気のせいだろう」と思い、今日まで忘れていたのでした。

“涼しい朝” への6件の返信

コメントは受け付けていません。