パラレルワールド

F氏から借りたMr.&Mrs.スミスというDVDを見たあと、Tさんから借りた「ニューシネマパラダイス」劇場公開版を見た。デジタルリマスターということで、色乗りがよく、フィルムライクな美しい映像で楽しめた。大きな画面で観るなら断然こちらがいい。
以前、このブログでも取り上げたのだけど、「ニューシネマパラダイス」には劇場公開版とオリジナル版が存在する。ぼくはオリジナル版を見ての感想をブログに書き、劇場版も見るぞ、と、宣言した。さて、今夜ついにその劇場公開版を見たわけだが…
結論から言うと、ぼくはだれがなんといおうと、オリジナル版が好きだ。圧倒的に。
劇場公開版は、トト少年と映画技師アルフレードの美しい友情の物語。トト少年が社会的な成功を収めたのは、ひとえにアルフレードの純朴で一途な友情のおかげだった、という感動のストーリー。ヨーロッパ映画にしては、明るくシンプルで、雲ひとつない青空を見るようなハッピーエンド。これはこれで、いい映画なのだけど…
映画の冒頭、ジャックペラン演じるトトは夜の都会を高級車に乗って現れ、豪奢な住まいに帰り着く。ベッドでは若く美しい女が寝息を立てている。が、しかし、ペランの横顔は幸せな男のそれではない(という演技をしている)。社会的に成功している男。富と誉れを手に入れた男。だのに、その顔に宿る深い陰。そういう構図を観客に印象付けてこの物語は始まる。帰郷しての、年老いた母との会話のシーンは特に重要だ。ぼくはここで涙が出るほど感動した。母は息子の幸せを願っている。当たり前かもしれない。母は息子の悩みを見抜いていた。今の息子が決して幸せではないことを。彼女は息子の性格を知り尽くしているのだ。社会での成功者が人生の成功者とは限らない。他人の目から見ればトトは成功者であり、しあわせ者だ。しかし、母の目にはそう映っていない。真の幸せとは。人生とは。
映画のラストで、トトはアルフレードによって切り取られたキスシーンを見ながら笑い始める。トトは気付いたのだ。キスシーンを切り取られた映画。それはまさに自分の人生そのもの。皮肉にもアルフレードはトトの人生からもラブストーリーのクライマックスを切り取ったのだ。これは笑うしかない。いやー、恐ろしいオチだった。あいかわらずフランス映画は残酷でおもしろい。
ただし、このヨーロッパ的な笑いはオリジナル版を見ないと分からないよ、ウヒヒ。と、暗にオリジナル版を勧めているぼく。

“パラレルワールド” への14件の返信

  1. スプーンさん、こんにちは。
    ひゃあ~、それにしてもオモシロイですね。
    同じ映画を見ても、これほどまでに受け取り方が違うなんて (*^_^*)
    見る人の数だけ感想もある。これだからたまんないんですよね。
    簡潔に言うと、スプーンさんの感想は私の真逆って感じです。
    ってことで、当然(?)私は初公開版派です(笑)
    初めて見たその時から今現在まで、
    不動のマイ・ベスト1作品ですもの。
    しかし、スプーンさんのレビューを拝読すると、
    スプーンさんがオリジナル派なのも頷けます。
    つか、そういう風にご覧になったら当然そうなるでしょうね (´∀`*)
    私の感じ方とは全然違うものですが、
    スプーンさんの感想もアリだと思います。
    いや~、楽しいな。
    今度お買い物に行った時、詳細を語りましょう♪

  2. キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
    来ましたね。そうこなくちゃ(笑)
    そう、作品は、作者の手を離れた瞬間から独り歩きを始めるんですよね。しかし、この作品に関しては、劇場公開版とオリジナル版は全く別物。アメリカで公開される際、上映回数が減るという商業的理由でカットされたのが劇場公開版だと聞いてます。となると、劇場版は、作者の意図が十分に反映されてない可能性もありそう…
    でも、観る者が良いと思ったら、それが良いものなんですよね。

  3. そうそう、気になったんですけどニューシネマパラダイスってフランス映画なのですか?イタリア映画かと思ってた・・・・。

  4. お、今日いらっしゃるんですか。
    おおいに語りましょう。ジョニ黒でよければ常備してありまっせ。
    >ニューシネマパラダイスってフランス映画?
    答え
    劇場公開版はイタリア映画、オリジナル版はフランス映画です。
    ウソばかり言ってると、パラダイスに行けなくなるかもなぁ。

  5. こんにちは。
    お茶飲みながらスプーンさんのコメントを拝読したもので、
    もうちょっとでPCに向かって噴き出すところでした (; ̄ー ̄A
    案の定・・・と言うか、フツーに回答なさらないですなぁ(笑)

  6. 先日はお世話になりました。
    さて、ニューシネマパラダイス。劇場版は公開時に映画館で観ました。オリジナル版はDVDを持っています。
    私は、断然オリジナル版のほうが好きです。
    トトとアフルレードの関係はオリジナル版こそ完全に描ききっていますね。
    恋愛話だとすると劇場版でもいいのでしょうが、やはりこの映画の本質はトトとアルフレードの関係、もっといえばアフルレードがトトに期待したもの、だと思います。
    まさにラストシーンはアルフレードがトトから取り上げたものを大事にしまっておいてた、というふうに感じられます。

  7. ☆totto*さん
    そーかー、惜しかったなー
    もうちっとでお茶をふきだすことができたのに。
    次は牛乳で試してみてください。
    ☆MIYAさん、先日は遠いところから、わざわざどうも。
    いやー、MIYAさんもオリジナル派ですか。
    麦の花さんの「男と女の目線説」が俄かに現実味を帯びてきましたね。男はオリジナル版の方がトトに感情移入しやすいと思います。オリジナル版での、あの失恋は、あまりに理不尽で切ない。ぼくはアルフレードがトトの彼女に嫉妬したのではないかと思ったくらいです。

  8.  遅ればせながら「ニューシネマパラダス」ってことで、初めてコメントさせていただきます。
     私もオリジナル派ではありますが、「なぜ、どうして!?」・・・・ともっと知りたい、見たいという欲求がそうさせているのかもしれません。
     人生は(おおーっといきなり大きくでたな)「なぜ、どうして」だらけでそれぞれに本当に納得できる確かなせつめなどないまま過ぎていっています。そういうことを納得の上では劇場版もありかもしれません。
     しかし、男性はその心の内に愛の女神が巣くっているのですよね。そしてその女神を求めています。実らなかった恋故、その現実の女性は時を経るにつれて女神化していくような気がします。
     色々蛇足を並べ過ぎました。最後にあの秀逸なラストの「キスシーン」。いいですよね。絶妙のカッティング。人間の愛欲の美しさ(ちょっと密教的?)。神聖な愛をああゆうかたちで表現してしまう人間の哀しさ、切なさ・・・・・がその他諸々のものが見事に集約されていると思います。
     長くなってスミマセン。美味しいコーヒーまた飲みに行きます。

  9. 慈龍さん、こんばんは。
    オリジナル版を見ると、ぼくは一瞬立ち止まり、「人生ってナニ?」って考え込んでしまいます。ワインが、葡萄を腐らせるという、素人目には失敗のような段階を経ることで、奥の深い大人の飲み物に昇華するように、人生も失敗を経ることで、一段手の込んだ数ランク上の作品に化けるかもしれません。それは棺のふたが閉じられるまで分からないことですが。アルフレードはトトの失敗と成功を予見(盲目だが未来は見えた)し、手を打ちました。女で失敗し(女と幸せな家庭を築いても、アルフレードにしてみれば失敗)、腐ってただの酢になるか、上等の酒に化けるのか。トトの人生を大きく変えたアルフレード。彼はそこまで見抜いていたのか。
    女神…できることなら、ぜひ一度お会いしたいです。本気でそう思います。慈龍さん、いつか飲みましょう!

  10. こんばんは。
    まぁ。。。何ということでしょう。
    こんなにオリジナル版を推す方が多いとは(笑)
    男女の好み差、性の違いってのも関係あるのでしょうかね。
    初公開版を先に見ていたせいか、オリジナル版を見た時は
    語られすぎて詰まらなくなってしまったと感じました。
    まさにミロのヴィーナスに腕を付けられてしまったと感じたのでした。

  11. お~っ、totto*さん、こんばんは。
    たしかにミロのビーナスの腕はそんな感じですね。蛇足というか。
    思うに、ニューシネマパラダイスについては蛇の足以上に異質のものがくっついてる感じです。
    それは何か。本質をも変化させてしまう幽霊。それが憑依しているのであります。ドラクロワという画家が「ショパンの肖像」という絵を描いてます。これはもともと、彼の彼女(ジョルジュサンド)とのツーショットだったのですが、相続の際もめて(多分)、二つに分断されてしまいました。ショパンの肖像は、いうまでもなく大変すばらしいものですが、サンドとのツーショットも、印象がまったく変わってしまうものの、これはこれですばらしいものです(でした)。不思議なのは、肖像画のショパンとツーショットのショパンはまったく同じなのに、別人のように見えることです。(ココが重要)

  12. スプーンさん、こんばんは。
    というわけで(何が!?)我が家では「ニューシネマパラダイス・ツインパック」を購入いたすことと相成りました。

  13. ツインパック!ヒェ~そんなのがあるんですか?
    あわててググッたら、ありました。
    おまけに、そのページのユーザーコメント欄に、ぼくと同じような意見を見つけて、チョーうれしくなりました。なにせオリジナル完全版はどこにいっても酷評されてるんですから。ちなみに、そのコメントのタイトルは「オマージュ?」で、コメンターは「くすり屋」さんです。まん中より下の方にあるので、ゼヒ見てね(笑)
    http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=16982

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