スコップ

また変なこと書いてると思われても仕方がない。
ぼくは穴を掘るのがとてもうまい。
わざわざ日記にこんなことを書く理由は、備忘として残しておこうと思ったためである。忘れかけていたのだ。「ぼくは穴を掘るのが好きで、とても上手かった」ことを。
そうだ、ぼくは長いこと穴を掘ってない。
智恵子は東京には空がないという。しかし、地面だってほとんど見あたらない。たとえ小さな地面を見つけても、穴を掘ると不審者として通報される。小学生だった頃、ぼくの宝物はスコップだった。日曜日は日の出を待って、スコップとロープを持って山に出かけた。地面に穴を掘って、地下秘密基地を作るためだった。その高い技術は後にアルバイトで確認された。土木工事の現場監督に絶賛されたのである。ストラディバリが演奏者を操るように、ぼくはスコップの傀儡となって無心に穴を掘った。別の言い方をすれば、穴を掘ることでぼくは無心になれた。ここまで書いて思い当たった。地面に限らない。「すべての山を登れ」と、某修道院長が歌ったように、今もぼくはいたるところに穴を掘り続けている。

“スコップ” への4件の返信

  1. cool! 座布団5枚進呈。
    いうまでもなく、ぼくもそうです。ともにがんばりましょう。
    あちらの掲示板、使ってくださってありがとうございました。

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