昼すぎ、人妻 F がコーヒーを買いにきた。ちょうど今朝、新しい種類のグアテマラを焼いたので、彼女に試してもらうことにした。
「コーヒー、おごるけど、飲む?」
「飲む飲む飲む~~~~!」
予想通りの反応だった。彼女はいつも飢えている。
「ねえ、なんか、いいCD持ってない?」
彼女がうまそうにコーヒーを飲んでるのを見ながらぼくは聞いた。
「うん、持ってるよ。あーる35」
「あーる35?なんじゃそれ」
「もう一度妻を口説こう、というコンセプトで作ったアルバム、だって」
「はぁ?」
くだらねえ、と、ぼくは思った。が
「で、今持ってるの?」
と聞いてみた。
「うん、車の中」
「貸してみ」
「いいよ」
ぼくは借りてみた。
コンセプトは実にくだらないが、ナカナカいい曲が入っている。これを書いている今も聞いている。
夕焼けの焼芋は失恋の味だった
好きを貫く
梅田 望夫「ウェブ時代をゆく」の書評をAmazonで読んでいたら、その書評のひとつに「…それは、Only the Paranoid Survive(病的なまでに心配性な人だけが生き残る)、Entrepreneurship(自分の頭で考え続け、どんなことがあっても絶対にあきらめない)、そして、Vantage point(見晴らしのいい場所)だ。この説明の中にスティーブ・ジョブズの言葉が出てくる。とにかく、好きを貫くこと。プロセス自体を「苦難の道」と捉えるのではなく、楽しんでしまうということ…」 というくだりがあった。そこで次に、スティーブ・ジョブズの言葉 というキーワードでネットを検索してみた。すると、次のページが見つかった。
「スティーブ・ジョブスの10の教え」
このページは、「10 Golden Lessons From Steve Jobs」
を訳したものだそうだ。その中から、心に残った文を以下に写します。
すばらしい仕事をするには、自分のやっていることを好きにならなくてはいけない。まだそれをみつけていないのなら、探すのをやめてはいけない。安住してはいけない。心の問題のすべてがそうであるように、答えを見つけたときには、自然とわかるはずだ。
あなたがテレビのスイッチをオンにするのはあなたが自分の脳のスイッチをオフにしたいからだと思います。それに対してコンピュータで仕事をするのは、脳のスイッチをオンにしたいときではないでしょうか。
あなたの時間は限られている。だから他人の人生を生きたりして無駄に過ごしてはいけない。ドグマにとらわれるな。それは他人の考えた結果で生きていることなのだから。他人の意見が雑音のようにあなたの内面の声をかき消したりすることのないようにしなさい。そして最も重要なのは、自分の心と直感を信じる勇気を持ちなさい。それはどういうわけかあなたが本当になりたいものをすでによく知っているのだから。それ以外のことは、全部二の次の意味しかない。
好きを貫く。 いいね。でも、できるかな。
アナーキーな1日
朝起きると10時だった。遅刻だ!と思ったら今日は休みだった。カーテンを開け、ブラインドを上げると山の向こうまで青空が広がっていた。しかし、天気予報によれば、午後から曇り、そして雨なのだという。最近、天気予報はよく当たる。そんなわけで、たまには家の仕事でもしよう、的気分になったので、家の外壁にコンセントを付けよう、ということになったのだった。ぼくはコンセントが大好きなので、家のあちこちに無駄なコンセントがある。
もちろん、外壁にも付けてあるのだが、数年前からクリスマス前にイルミネーションを点灯するようになり、延長コードがのたくって見苦しいので、イルミネーションの近くにもう1個追加しようと思っていたのだった。作業自体はそう難しくない。めんどくさいだけだ。まず、東開町のホームセンターに出向き、防雨型コンセントと防水用のコーキングを購入。
ついでにプランター用の土を4袋買った。数日前お客さんからいただいたハーブの苗を植えるためだ。それにしても産業道路は混んでいる。大型ショッピングセンターがオープンしたせいかもしれない。家に戻って作業開始。の前に、腹ごしらえ。テイクアウトのこむらさきラーメンを作って食べた。これはいわゆる一つの、チョー本格的。
店で食べるラーメンと比べ、いささかの遜色もない。で、作業開始。作業の流れはこうだ。屋内のコンセントをはずす。その後ろの壁に穴を開ける。そこに電源コードを通し、屋外用のコンセントにつなぐ。穴の隙間をコーキングで埋め、屋外のコンセントを固定する。壁がコンクリートなので、振動ドリルを使って穴を開ける。
コンクリートが硬いので、まず小さなドリルを用いて開ける。位置出しがめんどうだったので、屋内側から穴を開けた。すると、ドリルの丈が足りず、向こう側まで届かなかった。2番めに大きなドリルにタッチ。手ごたえがスッと軽くなって貫通。表に回ってみると、外壁の一部が脱落し、周辺の塗装もハゲていた。予想はしていたが、思ったより大きい。でも、コンセントで十分隠れる範囲。さらに太いドリルで穴を広げ、コードを通す。
コンセントを固定するネジ穴を開け、プラグを打ち込み、結線したコンセントをネジ止めして終了。完成したコンセントを眺めながら熱いコーヒーを飲む。ふと、家のモミジがきれいに紅葉しているのに気づいた。今日は穴あきーな一日だった。
植物園にて
車は海沿いを走っていた。海の上ではオリオンが冷たく輝いている。閉店後、ぼくの車は、南にある某植物園に向かっていた。この時期恒例のクリスマス・イルミネーションを見るために。到着したのが午後9時。レストランで食事をするつもりだったが、レストランは9時までだった。ぼくは腹をグーグー鳴らしながら、園内をブラブラ歩き回った。日曜の夜なので、人はまばらだろうと思っていたが、意外と多い。特にアベック。ぼくは何度も「写真を撮ってください」と、声をかけられた…
アベックだらけ
光のトンネルを抜けるとそこは
恋人たちは密室へと消えていった
やらしい目のサンタ
9時50分。 閉園を知らせる音楽が園内に流れはじめた。
園を後にし、しばらく走ったところで車を停め、外に出て空を仰いだ。
満天の星。
天頂近くで、昴が妖しく輝いていた。
今夜のぼくは
金曜の午後
ながく残るものをつくってみたい。
そんなことを ふと思った。
外は冷たい雨が降っている。
こんな日は、もらったミカンを食べながら ぼんやり過ごす。
☆写真の器は陶工房fooの作品です。
風が止んだら
真冬のような一日
靴を洗ったわけ
海に向かう途中、道路端に、すてきな木を見つけた。ゲゲゲの鬼太郎に出てきそうな怪しい木だ。
「よーし、帰りにあの木の写真を撮ろう」
ぼくは決めた。
海は強い北風のせいで荒れていた。浜辺を歩いていたら、波しぶきでメガネが曇ってきた。これじゃあ写真は撮れそうにない。砂丘に座ってコーヒーを飲むつもりだったが、それもあきらめた。
「しかたがない、あの木の写真を撮って帰ろう。帰って映画でも見よう」
その木は道路端の小さな墓地の中央にあった。大きな木なので、離れないと全体が撮れない。今日は標準レンズしか持ってこなかったから。ぼくはファインダーを覗き込んだまま、後ずさっていった。後ろにドブ川があるとも知らずに。
小学校跡にあった、おおきなイチョウ。