仕事から帰ってリビングのドアを開けると、「チョーシンセーバクハツ、ソーガンキョー!」と、ヨッパライ某が振り向きざまに叫んだ。続いて奥にいた娘が「大熊座で超新星爆発があったらしいよ、双眼鏡で見えるかも」と翻訳した。というわけで、書棚の奥で永い眠りに就いていた双眼鏡をたたき起こすことになった。独身のころ、星野観測のために購入した明るいF値を持つ双眼鏡だ。ケースから出すと、思った通り派手にレンズが曇っていた。ぼくはレンズクリーナーで曇りを取り除き、本来の性能を発揮できるようにした。次に、超新星の位置を確認するためにネットで検索した。M101の中に現れたことが分かったが、同時に今夜のような満月の夜には小型双眼鏡の手に負える相手でないことも判明した。それを話すと、ヨッパライ某はまるで希望の星が消えたようにがっかりした。とりあえず屋上に上がり、大熊座のミザールとアルコルの逸話などを解説し、それを双眼鏡で見せてやった。見えた!と言って喜んでいた。超新星は、その上の辺りだよ、と言うと、しばらく双眼鏡で探していたが、見えない、と言った。おそらく彼女の頭には花火が爆発したような風景が浮かんでいたのだろう。
勝手なやつら
air
岩のアーチ
スピーチバルーン
風に揺れるススキ
風に揺れるススキを見ようと、えびの高原に出かけてみた。行ってみると、確かにススキは風に揺れていたが、まだまだ二分咲き、といったところだった。
ヨッパライ某が腹が減ったというのでソバ屋に行った。窓際に髪を短く切った男がジョッキにビールを注いでいる写真があったので、これはもしかしてイチローか?とヨッパイ某にきくと、そうだ、という。ぼくは納得がいかず、これは合成で顔だけイチローじゃないのか、というと、テレビでもこんなふうにビールを注いでいるよ、といった。
続けてぼくはきいた。イチローは、なにイチローなの?苗字はないのか? するとヨッパライ某は、え?苗字って…そうだよね、ただのイチローじゃないよね。なんだろう、と考え始めた。
結局分からず、母親に電話してきいた。すると鈴木であることが判明した。ぼくはそれを聞いて笑った。イチローの親はオレよりひでえな。鈴木イチローだなんて、山田タロー並みじゃないか。
夕食はぼくの発案により、ソーメンであった。食事をしながら、昼は何を食べたの?と娘がきいた。ソバだというと、昼にソバを食べて夜にソーメンというのはおかしい、と主張した。確かにそうだな、とぼくは思った。食事が終わるころ、突然ヨッパライ某が得意になっていった。イチローの苗字知ってる?すると娘は言った。オオタ!オオタ・イチロー。ここはなんだか異次元のような家だな、と思った。
ココロは燃えているか
くもの糸
店の玄関に小さな水槽が置いてある。水槽には水草しか入れなかったが、いつの間にかメダカが泳ぎはじめた。しかも2匹。もちろんそれはタレスの説によるのではなく、水草にメダカの卵がついていたためだった。今朝、いつものようにメダカの様子を見に行くと、水槽のふちにハエトリグモが陣取り、じっと中を覗き込んでいた。見ると、水面を2mmほどのチビメダカがうろついている。まさかそれを狙っているのではあるまい、と思いつつ店の準備に戻った。開店の時間になったので玄関の照明を点けに行った。水槽を見ると、先ほどのクモが浮いていた。やれやれ、と指ですくうと、元気よく跳ねてどこかに消えた。それからしばらく後、お客さんが帰ったあと玄関に行くと、先ほどのクモがまた水槽のふちから中を覗き込んでいた。まさかまた飛び込む気じゃないだろうな、と思いつつ、店に戻った。数時間後、水槽を見に行くと、やはりヤツは浮いていた。ぼくはうんざりしてそれをすくい上げ、水槽から離れたところに逃がしてやった。