ぼくの休日は月曜日。
日曜、祝祭日にドライブに出かけることは、まずない。
月曜日に行楽地が混んでいることはない。どこもガラガラだ。
博物館や美術館にいたってはガラガラどころか休みである。
きょうは月曜日。しかし、何の日か知らないが祝日だ。しかも、シルバーウイークとやらで、みんな狂ったように車でお出かけだ。
当然ぼくは家にいるつもりであった。
が、某ブログを見ると、某植物園で撮った、ヒガンバナ、ハイビスカスの写真が載っていた。それを見てたら、だんだんぼくも行きたくなってきた。
いつもの道路は大変な混みようで、海岸通りに出るまで、いつもの何倍もの時間がかかってしまった。県外ナンバーの車が多い。いまだかつて、他県の車がこれほど走っているのを見たことがない。
帰りはラッシュを避けようと、時間をずらし、暗くなってから帰路に就いたが、これまた大変な混みようで、いつもの倍の時間がかかってしまった。とても疲れた。
カゲロウ日記
数日前、ぼくが使っているプロバイダーのスタッフブログに興味をひく記事があった。それによると某所の某洞穴にアリジゴクがいるのだという。アリジゴクなんて、ぼくが子供のころは床下をちょいと探せば見つかるものだったが、最近見かけない。そんなわけで、急にアリジゴクを見たくなったので、某洞穴に行ってみることにした。地図を調べてみると、ぼくの家から某洞穴まで、さほど遠くない。コーヒーをポットに詰め、車は北に走り出した。山を一つ越え、曲がりくねった坂を下っていくと、思いがけずマンガ日本むかし話に出てくるような、のどかな田園風景がひろがった。都会育ちのぼくは感動して車を降り、思わず何枚も写真を撮ってしまった。そこに一人乗り電気自動車に乗った老人が通りかかったので、某洞穴はどこかと聞くと、そこの坂を下ったところだ、という。
そこの坂を下っていくと、右手に真っ赤な鳥居が見えてきた。そこが駐車場なのだった。鳥居をくぐって狭い林道を降りていくと、小さな川が流れている。橋を渡ると今度は上り坂だ。
坂を上っていくと、なぜか道の両脇に仁王像が立っていた。その足もとに置かれている貝殻は貝塚のものだろうか。
さらに上っていくと、それらしい洞穴が見えてきた。
洞穴には苔むしたつくばいが二つあって、天上から滴り落ちてくる雫で満たされていた。
その、ポチャン、という音が、洞穴に涼しげに響き、まるで水琴窟。ぼくは神社仏閣には興味がないので、すぐにアリジゴクを探し始めた。
探すまでもなく、いたるところに小さなクレーターが口を開けており、その上をハンミョウが軽やかに飛んでいる。ぼくはスリ鉢のそばに座り込んで、じっと、その底を見続けていたが、アリジゴクは姿を現さなかった。ぼくが子供だったら、アリを捕まえてきてスリ鉢に落とすだろうが、そんなかわいそうなことはできない。かも。
ぼくはアリジゴクをスリ鉢からほじくり出すことにした。ご存知のように、アリジゴクはウスバカゲロウの幼虫だ。(ウスバカ・ゲロウではなく、ウスバ・カゲロウです)幼虫の時はアリを貪り食うが、成虫になって短い命を全うすると、地面に落ちてアリに運ばれる。自然の営みは無駄がなく潔い。うすっぺらなセンチメンタルなど入り込む余地がないほど清清しい。ナンチャッテ
腹が減ったので、江口浜の蓬莱館で食事をとることにした。食堂は相変わらず混んでいて、10分くらい待たされた。いつものように安いほうの寿司定食をたのんだ。
食事を終え、売店で野間池のタカエビと江口浜で取れたツキヒガイを購入。蓬莱館横の公園で、しばらく海を眺めてから帰路に就いた。
海の上の、一見ゴミのようにみえるものを拡大↓
元気だね~
夏の終着駅
休みだったのでドライブに出かけた。昼食をとるために港の近くの料理屋に行くと、玄関の黒板に「今日の日替わり 海老カツ丼 680円」と書いてあった。カツ丼なんか食べたくなかったが「海老カツ」というのが気になって、それを注文した。カツにできるほどのエビとはイセエビであろう、と想像したからである。
しかし、ワクワクしながら食べてみると、それは小エビの詰まったカツであった。満腹したぼくたちは、海に面した某レストランでコーヒーを飲もうということになった。しかし、行ってみると、前回と同じく「準備中」であった。もしかすると定休日を月曜にしたのかもしれない。海に面した某美術館の屋上で海を眺めていたら、アイスクリームを食べたくなったので、海の近くの公園に行くことにした。この公園の売店には、ぼくの好物のアイスモナカが売っているのである。売店に入って、アイスクリームのショーケースを開けると、モナカは、もーなかった。仕方なく、モナカなしで公園をぶらついた。
すると、いっしょに来たヨッパライ某が、「ほら、あの匂い」と、木陰からぼくを呼んだ。行って見ると、ほのかにムスクの匂いがする。ジャコウアゲハだ。風は海から吹いている。防風林を棲みかとしているジャコウアゲハの匂いが風にのって漂ってきたのだった。
ぼくたちは海に向かった。公園を抜け、サイクリングロードを横切り、蔦の絡まる、うっそうとした松林を歩くと、ところどころで、むせるほどにムスクの匂いがする。しかし、肝心のジャコウアゲハの姿が見えない。外は暑いし、どこかで昼寝でもしているのだろう。
ぼくらはそのまま海に抜けた。ほどよい海風が吹き続けていて、知らない国の音楽を聴いているような心地よい気分になる。しばらくぼんやりと、砂浜を歩いていた。
曽木発電所跡
予定では宮崎に行ってモアイ像などを見てくるつもりであったが、ネットで調べていたらだんだん面倒くさくなってきたので、次回に回すことにした。と、いうわけで、ヨッパライ某にどこに行きたいかきいてみると、大口の曽木の滝に行きたい、という。大口には何度も行っているが、曽木の滝には行ったことがない。と、いうわけで、ポットにコーヒーを詰め、進路を北にとった。山を越え、北に向かって2時間ほど走り、右に曲がって左に曲がって長い橋を渡ると、そこが曽木の滝だった。鹿児島の北極と呼ばれるだけあって、かなり涼しい。ちなみに曽木の滝は東洋のナイアガラと呼ばれているそうだ。
曽木の滝公園を一周したあと、ぼくは以前から気になっていた曽木発電所遺構に行ってみた。今は8月なので、その姿が見れるはず。
曽木発電所遺構とは…
鹿児島県伊佐市のHPに次のように書かれている。
————— ここから —————
曽木の滝の1.5キロメートル下流に、今でも明治の面影を強く残している曽木発電所跡があります。曽木発電所は明治 42年に竣工し、その出力は当時国内でも最大級のもので、水俣のチッソなどにも送電を行っていました。昭和40年に鶴田ダムの完成とともに水没することになりましたが、現在では渇水期の5~9月頃に中世のヨーロッパの居城後を思わせるレンガ造りの建物が姿をあらわします。その時期以外は大鶴湖の湖底に沈み、存在をも忘れさせます。また、周辺にはヘッドタンクやずい道跡なども残っており、土木遺産として貴重なものとなっています。創始者の野口遵は近代化学工業の父とも言われ、経済人としても活躍をしました。
————— ここまで —————
(右上の水没中の写真は伊佐市のHPより転載)
10月になったら、湖底に沈んだ姿を見に行こうと思う。
対岸の展望所より撮影。
なお、曽木発電所跡は現在整備工事中のため、現場に近づくことはできないようです。
long vacation 最終日
朝起きると晴れていた。海に行って泳ごうか、と思ったが、やはりドライブに行くことにした。たまには大隅半島もよさそうだな、と思ったが、桜島の灰が派手に降りまくっていそうな予感がしたので今回はやめることにした。なんとなく海に行きたかったので、山を越え、万之瀬川河口の吹上浜海浜公園に出かけた。
車を停め、サンセットブリッジへと歩いていくと、ちょうど干潮で、海に向かってどこまでも砂浜が広がっていた。砂浜に降りて写真を撮っていると、水際に近い砂の上を、何か道具らしきものを引きずって黙々と歩いている人が見えた。それはまるで月面を探査する宇宙飛行士のようだった。
ぼくは海に向かって砂の上を歩き続けた。いっしょに来たはずのヨッパライ某は、どこかで休んでいるようだ。たぶん、橋の袂にあった東屋だろう。
砂の上を延々と歩き回って満足したぼくは、サンセットブリッジに上がって写真を撮り、その袂にある東屋に行ってみた。そこには今起きた顔のヨッパライ某がいた。腹が減って体が動かなくなり、横になったら寝てしまったという。ぼくは、そこに設置してある小さなタイルを張ったベンチがとても気に入った。
まるでグエル公園にあるガウディのベンチのようではないか。
そんなベンチがグエル公園にあるかどうか知らないけれど。
腹が減って動けない、ということで、どこかに昼飯を食いに行くことになった。
駐車場に向かう途中、廃墟マニアが狂喜しそうな草ぼうぼうの家があったが、これはワザとそうしてあるらしかった。野鳥観察の家、という、野鳥の写真を展示してある家なのだった。
車はさらに南下し続け、昼過ぎに笠沙恵比寿にたどり着いた。施設内にある市場食堂というところで、おまかせ定食を注文。新鮮な刺身に、かなり大きな魚の頭のアラ炊きが付いて、しかも、ご飯はお代わりができて、財布に優しいお値段だった。
long vacation 四日目
トイレに行きたくなって目が覚めた。寝る前に水を飲みすぎるとこうなる。寝室のドアを開けると、まぶしい光に包まれた。どうしてこんなに明るいんだ。時計は朝の6時を指している。ベランダに出てみると、空は雲ひとつない。明るいのは天気のせいだった。ぼくは泳ぎに行くことにした。家族を起こさないよう、そっと準備をし、車を出した。山を一つ越えるとそこは海。海沿いの松林を走るころ、カーステレオからスパイロ・ジャイラのモーニング・ダンスが流れ出した。
まだ7時前だというのに、サーファーが二人、波と戯れていた。ぼくは持参したシンコム3号を食べ、屈伸運動をして海に突入した。潜ってみると、かなり濁っている。時々クラゲとすれ違う。水の温度はちょうど良かった。
今日は、ケータイで撮りました。
long vacation 二日目
明け方、足がつって目が覚めた。おそらく昨日のハードな作業で普段あまり使わない筋肉を使ったせいだろう。時々頭が痛くなるのも同じ原理である。きょうはヨッパライ某の発案で、家族全員で指宿にある某喫茶店に行こう、ということになった。10年振りだ。ぼくが脱サラし、妙な仕事を始め、休日を月曜日に設定したせいで、同じく月曜を定休日とするこの喫茶店に行けなくなってしまったのだ。しかし今日は金曜日なので某店は営業している。ぼくはこの喫茶店に20年以上前から通っていた。
ぼくらはこの店のハンバーグ定食とシーフードカレーが麻薬的に好きなのだった。
店に到着し、ドアを開ける。振り向いたマスターは、一瞬、あっ、という顔をし、そして微笑んだ。
覚えてますか?というと、もちろんですよ、という返事。
ぼくは笑いながら、コイツがあの時の子供ですよ、と、娘を指差した。
あれは20年前のある晩、ぼくとヨッパライ某はこの店で食事をとり、勘定を済ませて外に出た。車に乗ろうとしていると、店のドアが勢いよく開き、マスターが血相を変えて飛び出してきた。
「忘れ物ですよ」
ぼくらはベビーキャリーに入れた幼い娘を店に忘れて帰ろうとしていたのだった。
ひまわりの丘
ベッドから起きあがり、カーテンを開けると青空が見えていたが、それは夏の青空ではなかった。青い空に白い入道雲が力強くわきあがる夏の青空であれば、迷わず海に行って泳ぎまくるはずだったが、こんな空ではそんな気分にはなれない。雲の形がカッコ悪すぎる。車は珍しく北に向かって走り出した。目指すは、あのソフィアローレン主演の映画「ひまわり」に出てくる某国のひまわり畑に来たような気分にさせるかもしれない、某都市農業センターのひまわり畑。
駐車場に車を停め、ドアを開けると、ふとどこからか、あの「ひまわり」のテーマを演奏するピアノのメロディーが聞こえてきた。ような気がしたが錯覚だった。ヘンリーマンシーニによるあの深い悲しみを湛えた美しい旋律は、どこか翳のある男と呼ばれて久しいぼくのテーマにふさわしいといえよう。センターに入ってすぐのところに、目的のひまわり畑はあった。あったのだが、時はすでに遅く、盛りを過ぎたひまわりの花びらは茶色く変色し始めていた。でも、それでよかったのかもしれない。ぼくの記憶の中で永遠に揺れ続けるひまわりは、たぶん、こんな感じなのだから。
そのポピュラーな大柄なひまわりの向こうに、見たことのない、やや小振りなひまわりが満開を迎え、風に揺れながら、遠い見知らぬ国の歌を口ずさんでいた。しかし、ぼくの目にはどう見ても彼らはひまわりには見えなかった。
でも、背後に回ってみると、そのうなじ?の辺りが、まさにひまわりのそれだった。枯れはじめたひまわりを見たせいで、ぼくは少しさびしくなっていた。枯れてうなだれたひまわりは、夏の終わりを告げているようにしか見えなかった。
ひまわり畑の横では色とりどりのヒャクニチソウが一面に咲き誇っていた。
ヒャクニチソウなんか、どうでもよかった。
でも、その中に黄色い大きな花がひたむきに空を仰いでいるのが見えた。
ぼくは見えない糸に引かれる夢遊病者のように、ふらふらとそちらに歩き出していた。
カボチャプリンはいつもの味だった
休日の朝は目覚めるのが不必要に早い。しかも一度目が覚めると二度と眠れない。ぼくはなんとか眠る努力をしてみたが無理そうなのでベッドから起き上がり、数日前から咲き始めたアサガオの写真を撮ることにした。昨日の予報では今日は晴れとのことだったが、庭に出て仰ぎ見た空は不気味な灰色だった。雲間から日がさすのを見計らって、透きとおった赤紫の花を撮った。
車は南に向かって走り出していた。遠くに青空が見えていたが、やがてそれは灰色の雲に呑み込まれてしまった。車は海岸道路を南に下り、いつしか魚見岳を登りつめていた。わが家の屋上からは魚見岳が見える。ならば、魚見岳からもわが家が見える道理だ、というわけで、北の彼方をじっと見つめてみたが、わが家らしきものは見えなかった。魚見岳を下りて、車は山川漁港の「活お海道」に向かった。前回寄った時は、駐車場が満杯で入れなかったが、今日は空いていた。なにも買う予定はなかったが、手作りウメボシ、漬物、ドラゴンフルーツ(小さいのが2個で300yen)などを買った。
そこから一山超えるといつもの某植物園。広いロビーには綺麗な七夕飾りがしてあった。その願いが書かれた札を読んでいると、妙に切ない気分になった。
園内をぶらぶら歩いて、西洋庭園に行き、ひまわりのソフトクリームという、黄色いソフトクリームを買って食べた。300yen.
「そうか、これがひまわりの味なのか!」といった説得力には欠ける味だった。
某植物園を後にし、開聞岳麓の某ハーブ園に行ってカボチャプリンを食べた。
「そうか、これがカボチャプリンの味なのか!」という、いつもの味だった。
家に帰って、某所で買ったドラゴンフルーツを食べてみた。冷蔵庫で冷やし、二つに割ってスプーンで掬い取って口に入れると
「そうか、これがドラゴンフルーツの味・・・なの??」
という、狐につままれたような味だった。
日替わり定食はコロッケだった
梅雨が明けるとバーベキューの季節だ。ぼくの住んでいる団地も週末の夜になると、どこからともなく、いいニオイが風にのって漂ってくる。そんなわけで、わが家もその日に備え、バーベキューのインフラを整えておくことにした。チェックシートを作り、足りないものをリストアップする。たとえば、木炭2ケース、金網2枚、ランタン用のオイル、ロケット花火、金魚すくいセット、といった具合。チェックを終えると例によって笠沙方面に走った。名目は食材の仕入れ。その前に漁港近くのいつもの店で昼食にした。ここの日替わり魚定食は安くてうまい。おまけに、ご飯のお代わりが自由。1杯でも2杯でも5杯でも10杯でも。
黒板のメニューを見ると、今日の日替わりは、なんと、コロッケ定食。ガーン! 笠沙まで来てコロッケを食うのは悲しすぎる。やはり魚じゃないと。というわけで、ちと予算オーバーだったが、安いほうの寿司定食をたのんだ。食事を終え、近くの港町のスーパーで食材を購入、クーラーボックスに氷詰めにしてトランクへ。
帰りに吹上浜でブラックモンブランを3本食べ、正円池で季節はずれのホテイアオイを眺めた。