朝から冷たい雨が降っていたが、めずらしく憂うつではなかった。昨夕、ある常連のお客さんと、いつもとは少し違う話題で話したのが関係している歎異抄のことを調べていて、つい最近読み始めた本が昨夜の話のきっかけになった。たまたま彼の話しに出てきた言葉が、その本の中で親鸞が門弟に話した言葉とそっくりだったので思わずそれを指摘したところ、親鸞の話になってしまった彼は親鸞に詳しかった。しかもその知識は本を読んだだけで得た薄く乾いたものではなく、彼の人生の中で幾度も試され、よく練られたものにみえた今日、ぼくは冷たい雨の降る砂浜を歩いていた。いつもと違う気分で歩いていた
冷たい風が吹いていた
ファンタはまだだった
エビフライにナポリタンが付いていた
窓の外は気持ちよく晴れていた。ヨッパライ某に、天気がいいから出かけるぞ、と声をかけると、それに応えて何か言うのだけど声が聞こえない。変だな、と思っていると、そこで目が覚めた。ベッドから這い出てカーテンを開けると外は雨だった今日は、今度の土曜日にジャズ喫茶をオープンさせるJさんの店に呼ばれているのだった。その前に病院に行かねばならなかった。病院に行くのは7年ぶり。採血したり心電図をとったり。イスに座って先生の説明を聞いていると、後ろにいた婦長さんみたいな人から、ちゃんと聞くように、と注意された。むかし、学校の先生から「おまえ、聞いているのか?」と、よく注意されたものだったが、ぼくはそういう人に見えるらしいJさんに淹れてもらったコーヒー。ここのカウンターはとても落ち着く居心地が良いので、つい、時間を忘れてしまう。もちろん、流れているのはJAZZスピーカーはアルテックのA7。スピーカーの横にはグランドピアノがセットされる予定窓側の席。ゆっくり本が読めるように、各座席にスタンドライトがついている家に帰り着いたのは1時前だった。腹が減ったので、ヨッパライ某をさそって食事に出かけた。山を越えて海沿いの店に入り、メニューを開くと、特大エビフライ定食、というのがあったのでそれにした。昭和の人間は、特大、とか、お代わり自由、みたいな言葉によわい帰りに、桜を見に行ったほぼ満開状態。某国営放送が大きな車を止めて生中継の準備をしていた。夕方のローカルニュースで放送するらしいライトアップを見届けて家路についた
トンネルを抜けると水車ICだった
昼が長くなってきた
暖かい休日
セピアな一日
朝のうちに簡単な仕事を済ませ、昼飯を食べに車を走らせた。峠に向かうあたりでコーヒーをポットに詰めてくるのを忘れたのに気付き、交差点のコンビニRに車を突っ込んでコーヒーを買った。ひどく薄いコーヒーだったが、ないよりましなので飲みながら峠を越え、海の近くのコンビニFに再び車を突っ込み、コーヒーを買ったものの、これもやはりぼくには薄かった そこでふいに、近くで陶芸をやっているK君の庭で梅がたくさん咲いている、という話を思い出し、車を転回させて彼の家に向かった。庭につながれた白い犬が激しく歓迎してくれるなか、その向こうの梅園に行って羽織をはおった夏目漱石のような顔をして梅を鑑賞した。とても良い匂いがした。家に上がり、彼の作品を見せてもらった。今から昼飯を食べに行くんだ、というと、近くにいいところがありますよ、月曜日も開いてます。と、その店の名刺をくれた 昭和を髣髴する古い民家がその店だった。中に入ると右手に薪ストーブがあり、薪が赤々と燃えていた。都会育ちのぼくが初めて目にする珍しい農具や籾殻を吹き飛ばす木製の器具などが置かれており、電話も七人の刑事に出てくるような黒いやつだった 堀こたつ式のテーブルでくつろいでいると、和風の定食が運ばれてきた。カラーでお見せできないのが残念です ぼくは普通の定食、ヨッパライ某はオコゲ定食にした。このオコゲ定食が懐かしい風味で、セピア色の記憶を呼び覚ます特筆ものなのであった。カラーでお見せできないのが残念です 食後のコーヒー。カラーで撮ってもこんな色です 帰りに、蒸気機関車用の給水塔のある駅に寄ってみた。線路は撤去されているが、プラットホームはそのままだ 地面を注意して見ると、まだ枕木が埋まっている
ウメを見てとうふを食べた
あそこの梅がそろそろ満開らしいよ、と、ヨッパライ某が言うので行ってみることにしたいつものように近道をしようとして派手に迷い、着いたのは1時過ぎだった。到着してすぐにわかったのは、肝心の梅がほとんど咲いてない、ということだった。よくある話だ。拝殿の前に植わっている桜が満開だったので、とりあえずその写真を撮った参道沿いのソバ屋でそばを食おうとしたら、売り切れとのことだった。よくある話だ。仕方ないので坂を下ったところにある豆腐屋で豆腐定食を食べた。健康的な味だった帰り道、ナントカ梅はこちらですよ、みたいな案内板が立っていたので、そちらにハンドルを切った。梅は八分咲きといったところだったが、どこか上品で風格があり、とても気に入った。しばらく眺めていたら、ぽつぽつと雨が降り出した