愛のハブラシ

夕食は焼き魚と冷奴とジャガイモの煮物だった。ぼくが無心に焼き魚をほじくっていると、となりのヨッパライ某が、ロバートデニーロってロバート・デニーロじゃなくてロバート・デ・ニーロなんだって、とか言いだした。へえ、そう。ぼくは魚をほじるのに一生懸命なのだった。ロバートデニーロと聞くと歯ブラシが頭に浮かぶ。もう10年以上前のことだが、店に来る常連の女の子たちに「ねえ、彼が使っているハブラシ、あなた使える?」ってよく質問したものだった。「イヤ!」即答だった。だれもがそう答えた。新婚ホヤホヤの女の子でさえも。ぼくには信じられなかった。愛は歯ブラシの前に無力なのか。常連のT子さんにも聞いてみた。「ご主人が使っている歯ブラシ、あなた使える?」と。「イヤ! でもロバートデニーロのだったら…OKよ」とのことだった。