ころげながら走り続けたのさ

夏は好きだけど春より先に来ては困る。そうだ、夏はしっかリ春を味わった後に、そして、じめじめした梅雨の後に来なくてはいけない

高村幸太郎も同じようなことを言っていた。

いやなんです
あなたのいつてしまふのが――

花よりさきに実のなるやうな
種子よりさきに芽の出るやうな
夏から春のすぐ来るやうな
そんな理窟に合はない不自然を
どうかしないでゐて下さい
型のやうな旦那さまと
まるい字をかくそのあなたと
かう考へてさへなぜか私は泣かれます
小鳥のやうに臆病で
大風のやうにわがままな
あなたがお嫁にゆくなんて

智恵子抄「人に」

小鳥のやうに臆病で、大風のやうにわがままな、あなたがお嫁にゆくなんて。

春もわがまま。待ってくれと叫んでも、笑いながら逃げていく

泣きながら君のあとを追いかけて
花ふぶき舞う道を
ころげながらころげながら
走りつづけたのさ

もとまろ「サルビアの花」

真剣なまなざしでチューリップの写真を撮っている女の子。彼女はどんな気持ちで撮っているのだろう。そこに何を感じているのか。異性のぼくには想像がつかない