胸が痛む夜

夜の帳が下りて店じまいを始めようとする頃、自宅にいるはずのヨッパライ某から電話があった。買い物から帰って玄関を開けようとしたら、鍵が壊れていてドアが開かない、という。そういえば数日前、鍵を回そうとして少々てこずった覚えがある。閉店後、ぼくは車を飛ばし、家に帰り着いた。当然ながら家は真っ暗。ヨッパライ某は駐車場の車の中で待っていた。どれどれ、とキーを差し込み、フォースを効かせて回そうとしたがビクともしない。ふっ、今日はフォースの調子が悪いようだ。腹もへってるしな。ぼくはアタマを空き巣モードに切り替えた。おそらく二階のあそこが開いている。あそこから入ろう。さっそくぼくは家の傍らの駐車場の屋根に上がってみた。家のひさしに手が届いたが、ぼくの懸垂力では無理。高さを稼ぐためにイスを置いてみた。だめだ。まだまだ高さが足りない。そこでイスの上に傘立てに使っている木の樽をのせてみた。まだ足りない。そこで、その上にもう一つ傘立てをのせてみた。高さはなんとかクリアしたが、かなり不安定だ。下で見ているヨッパライ某も不安そう。三段重ねの足台に上り、ひさしをつかみ、はい上がろうとしたその時、ポキ。心臓のあたりで変な音がした。ひさしが鋭角にとがっており、そこに胸を当てて体重をのせたのがよくなかった。肋骨にひびが入ったのかもしれない。さわると心臓のあたりが刺すように痛む。しくじった。ベランダに出るドアが開いていたので、そこから入って玄関を開けた。肋骨は失敗だったが、なかなか楽しい夜だった。

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