日の丸弁当は徹底的に無駄を排した究極の美学のもとに考案されているが、その奥に潜むフォースの広がりようは宇宙の闇を思わせるほどに深い。たとえばその白く輝く米粒が埋め尽くす時空の中心で太陽が燃えているという構図は今から400年前にガリレオが説いたあの宇宙観を彷彿とさせる。さて、写真の梅干は、先日伯母がくれたものだ。身内の者が言うのもなんだが、伯母の作った梅干は畏怖の念を覚えるほどにウマい。ウマい、とは、優れた音楽や絵画と同様、人を引き付ける不思議な力のひとつであって、人の場合、それを魅力と呼ぶ。太陽は目には見えぬ強大な力で地球やほかの惑星を引き寄せ運行させている。そう、この世界を運行しているのは求心力に他ならない。宇宙を支配するエントロピーに打ち勝つ力だ。というわけで梅干は常に梅干でなければならない。厚化粧して梅干に似せた梅干はすでに梅干ではない。美しさは内面から滲み出すものでなければならない。本物は自ずと引力を発生し、宇宙の運行にかかわっている。書いているうちにナニを言いたいのか分からなくなってきたので以上で終わろうと思う。ちなみにこの写真は下手な構図の見本とされる、いわゆる日の丸構図である。実は、これが言いたかっただけである。