無音の音

先日、ビデオでアルゲリッチの弾くバルトーク第3番を見ていて妙な感じがした。二楽章、ピアノの無音部分に聞こえない音を感じた。たぶん、ビールのせいだろうけど(笑)
おとといの夜、茂木健一郎さんのブログで、作曲家、江村哲二さんが亡くなったのを知った。そのときは、茂木さんは当然、江村さんの病状を知っていたのだと思っていた。ところが昨夜、茂木さんのブログを読んで驚いた。茂木さんも関係者も知らなかったというのだ。
以下、クオリア日記6月13日「想い出」より引用
サントリー音楽財団の佐々木亮さんから
お知らせを受けたのは月曜の夜で、
あまりのことに呆然となった。
入院されたとは聞いていたが、
まさかそれほど重い病気とは知らなかった。
ご家族はご存じだったのだろうが、
私たち関係者は誰も知らなかった。
「あの方は、そういう人なんですよ」
と佐々木亮さんは言う。
「初演を成功させることだけを祈って、
黙っていたんでしょう」
他人のぼくが驚いたくらいだから、茂木さんの驚きはそうとうなものだったと思う。
江村さんの静かな死は、なぜかぼくの胸を強く打った。ふとぼくは思った。表現者として世阿弥は「秘すれば花」といった。江村さんは作曲者だ。無音に音を聞く人なら、死を活きることを特別なこととは思わなかっただろうと。