また逢う日まで

人に相性があるように、機械にも相性がある。
先月購入したハイビジョンレコーダーが、神経質に相手を選ぶようだ。
機嫌の悪い日には、ぼくの言うことを聞いてくれない。
メーカーのサービスマンにも原因がわからない。
ぼくの愛が足りないというのか。
それならわかる。ぼくの愛には限りがある。

食物連鎖

夜。時計は10時を回っている。ぼくは寝室の机で仕事をしていた。
音のない夜。サイレントナイト。
と、家のどこかでドタンバタンと大きな音がして娘の叫び声。
ふん、きっと、クモでも出たのだろう。
ぼくは聞こえなかったことにして仕事を続けた。
風呂から上がった妻が娘の部屋に直行した。風呂の中まで聞こえたらしい。
やがて妻と娘がそろって寝室に入ってきたが、それらしいことは何も言わない。
妻は娘に口止めされたようだ。
娘の部屋は思い切り散らかっている。
紙くずといっしょにジャンクフードなども混じっている。
ぼくは何度も言う。
「部屋が汚いとダニが湧き、ダニを食べる小さな虫が寄ってくる。そして大きなクモがやってきて、その虫を食うんだ。アンダースターン?」
そして、ぼくが言った通りになる。
負けず嫌いの娘は、ぼくが言った通りになるのが何よりも悔しい。
だからぼくにはクモが出たなどとは絶対に言わない。また、こんな風にも言う。
「クモなんか怖くない」
「明日、部屋の掃除をすると言ってたよ」と妻が言った。

放っておくと消えていく

お店に籠って仕事をするようになって5年が経つ。
明らかに運動不足で、太ももなどは、見てはっきりわかるくらい細くなった。
筋肉の減少は目で見てわかるので、対策を打とうという気が起きる。
問題は、目に見えない部分の衰弱。
例えば脳。筋肉同様、使わないでいると小さくなるのか。
そういえば最近、頭を左右に振るとコトコト音がする。
ような気がする。

クジラ

153_1 衛星放送のいいところは地上波に比べ、自然科学番組が豊富なところだと思う。
NHK-hvでカリブ海に集まるマッコウクジラのドキュメンタリーがあったので録画した。このクジラは深海のイカを捕食するために、一気に1000メートルも潜る。巨大な生物がスクリーン上を悠然と泳ぐさまを眺めながら、ぼくは感慨に耽った。
体をくねらせるだけでぐんぐん突き進んでいく。その完成された機能美には、ただ圧倒されるばかり。
人はいったい何をどこまで知ることができるのか。

バベルの塔

窓の外も暗くなってきた。まもなく閉店時間。
ぼくはカウンターのカップルと話している。
丸テーブルでコーヒーを飲んでいる若いカップルのおしゃべりが時々聞こえてくる。
二人の使う言語は日本語ではなく英語でもない。
時々起こる笑い声。
二人はスペイン語で話している。
さっぱりわからない。

大脱走

映画「大脱走」を見た。
ドイツ軍の捕虜収容所から脱出する物語なのだが、こちらの期待に反して失敗に終わる。
アルカトラズからの脱出やショーシャンクの空のような結末を期待して見たのでわだかまりが残った。
とてもいい映画には違いないけど。

天気予報

150_1 今日は月曜日で定休日。数日前の天気予報では雨が降るとのことであったがそんな気配はない。
というわけで、南薩へドライブ。ぼくの勘によれば、フラワーパークのレストランの日替わりメニューが当たりと出た。
ここ数回ハズレを経験したので、そろそろ当たりが出そうな予感がするのである。
正しい名前を忘れたが「天使のエビのバジリコなんとか」と「ベーコンとズッキーニのなんとか」というのが日替わりであった。
天気予報はいつものようにハズレたが、ぼくの日替わり予想は当たりであった。
ドライブから帰って、屋上で夕焼けを見ながら缶ビールを飲んだ。コウモリが飛び交っていた。明日は雨になりそうだ。

ハイライト

今日は父の日だった。
無条件に何かもらえる日というのは、ただ、うれしい。
ぼくが小さかった頃、父に何をあげていただろう。
今は吸わないが、そのころ父はタバコを吸っていた。
ハイライトをプレゼントした記憶がある。
ぼくはタバコを吸わないので分からないが、今でもあるのだろうか、ハイライト。

おしゃべりな午後

きょうは土曜日。
Aさんをはじめ、ユニークなお客様が集合してしまった。
各々、好き勝手なことをしゃべるので、混乱するかと思うとそうならない。
不思議と疎通がはかられてて、初めてのお客様でも孤立することがない。
歯に衣着せぬ乱暴な物言いに見えるが、だれも傷つかないように見える。
子供同士の会話に似せた大人の会話だ。
疲れたが、楽しい午後だった。

気難しいヤツ

機械というヤツは人間と同様、愛情を持って、いたわりながら使うと期待に応えてくれるし、長持ちする。
というのが、ぼくの機械に対する考え方であり、接し方である。
一般に、男は機械いじりが好きである。
ちなみにぼくは機械いじりが大好きである。よって、ぼくは非常に男らしい人間である。
という公式は今のところない。
さて、最近、少々カッティングエッジな機械を購入したのだけど、こいつが気難しい上に気分屋だ。
それはハイビジョンレコーダーなのであるが、時々思い出したように予約録画に失敗する。
それがまた、ぼくがどうしても見たい、と思う番組だけ見事に不発する。今日もそうだった。
拗ねているのか。
思うに、機械と女性は相似点が多い。