夜光虫

今まで、一階の部屋を真っ暗にして音楽を聞いていた。かなりの音量で聞くので、家族は恐れをなして近づかない。学生の頃、変な夢があった。それは自分の喫茶店を持ちたいという夢。その頃、高級なオーディオ装置で音楽を聞かせる喫茶店が流行っていた。一日中いい音で音楽が聞け、おまけに金まで稼げるなんて、なんてステキな仕事だろう…と思った。ちゃんと名前も決めていた。ふたつあって、ひとつは「深海魚」。もうひとつが「夜光虫」。
夜光虫には特別な思い入れがある。免許を取ったばかりのころ、よく夜の海に出かけた。だれもいない真っ暗な海。闇の中に波の音だけが聞こえる。と、ザーッという音と同時に横一文字に青白い燐光が走る。夜光虫の仕業だ。波頭が砕けるときに光るのだ。満天の星の下、海では夜光虫が燐光を放っている。それは夢のように幻想的な風景だった。
今まで、ちあきなおみのChateau Chant 1981というアルバムを聞いていた。波の音、かもめの声、風の音、酒の匂い、時間。それが真っ暗な部屋の中でフラッシュバックする。それは夢のように幻想的な風景だ。ちなみに、このアルバムには演歌はない。すばらしいアルバム。失礼ながら、ちあきなおみがこれほどまでに凄い歌手だとは知らなかった。
スターのイメージ。それは、ぼくにとっては暗い海の波間で幻想的に瞬く星、夜光虫。

土曜の朝

以前はダイニングにラジオがあったので、土曜の朝は食事をしながらラジオが聞けた。土曜と日曜の朝は、好きな番組があるのだ。数ヶ月前にラジオは仕事場に引っ越した。今は土日もテレビが点いている。ぼくはテレビがとても嫌いだ。あの音を聞くと具合が悪くなる。とにかくうるさい。丸めた新聞紙を頭の中にぐいぐい押し込まれるような感じがする。最近ノイローゼ気味だ。音を聞いただけでいらいらしてくる。すぐに治ると思っていたのだが、今度はなかなか元に戻らない。病気だろうか。困ったものだ。ラジオの音はなんともないのに。

jump

人と酒を飲むのに、下心があっては良くないのかもしれない。昨夜はお客様の家でごちそうになった。8時半から飲み始め、代行運転を呼んだのが1時過ぎだった。日常の生活はともすれば退屈だが、何気なく過ごしていても周囲は動いており、その変化は情報となって刻々と記憶されていく。そんな、ほうっておけば堆積するだけの情報も整理することで有用化できるかもしれない。並べ替えたり、つなぎ変えたり、別の角度から光を当てる…散らかったジグソーパズルのピースから、隠された秩序を見つけ出す作業のような。料理に鍋や包丁、コンロが必要なように、この作業にも時間と特別な道具が必要だ。それは酒と人。できたらおいしい料理も。ここで人の持つ役割は特に重要だ。過酸化水素水に二酸化マンガンを入れると酸素が発生するが、砂糖や塩を入れても、なにも起きない(多分)。ここで人は触媒の役割を果たすわけで、おおむね特別な、あるいは洗練された感性を持つ人がそれにあたる。ぼくはこの作業のことをジャンプ(跳躍)と呼んでいる。最初に言った下心とは、これのこと。ジャンプにはこのほかにもおもしろく効果的な方法があるんだけど、ここに書くのはまずいので書きません。

そしてだれもいなくなった

長い文章を読むのは骨が折れる。読者あってのブログだ。楽に読めることも大事なのではないか。そこで、このブログもマンガにしてみてはどうかという案が提起された。ぼくはゴルゴ13が好きなので、さいとうたかお風の劇画調で描いてみたい。当然、ぼくはゴルゴのように眉間にシワを寄せて登場する。いや、ちがう。振返って読んでみると、ぼくのブログはポエミーだったりもする。やはり目に星が欲しい。ベルバラの池田理代子(こんな字だったっけ)風で行くべきであろう。しかし、本当のことを言うと、問題は内容なのだ。内容がよければ、文章が長くとも最後まで読めるのである。今日だってそうだ。こんなことを書いてはいけないのである。

狼少年ケン

お客様から借りた、大江健三郎著「新しい人の方へ」を読んだ。
その中に「うそをつかない力」という項目があって、ぼくは頭を掻きながら読んだ。
なぜ、頭を掻くのかといえば、ぼくはウソをつくのも大好きだからだ。
マジメなウソはつかないように気をつけているが、面白いウソを考えるのは止められない。
家族は、その犠牲者である。
子供たちは幼少の頃からぼくにだまされ続けたために、ぼくが本当のことを言っても信用しなくなってしまった。
そういえば、先日こういうことがあった。
夕食を囲んでるとき、息子が
「うちの担任ときたら、やたらモーレツという言葉を使うんだ。モーレツなんて、いまどき流行らないよ」
「そうか、モーレツに臭い屁が出た、とか言うのか。ところでおまえ、モーレツは流行語じゃなく、普通に使う漢字なんだぜ」
と、ここで息子はいつものように
「オヤジめ、またウソを言ってやがる」と、うんざりした顔になった。
娘が、「あら、モーレツは、ほんとに漢字だよ」と言って辞典を引っ張り出し、息子に見せた。息子は驚いていた。マヌケ。
話がそれたが、ぼくは「新しい人の方へ」を読み、小さな決心をしたのである。
「ウソをつかないでみよう」と。(本当)

火曜の朝

朝からお客様が多かった。休み明けのせいと思う。
でも、お客様が多いと、とても変な気分になる。
何かがおかしい、と思ってしまう。
分かっていただけるだろうか、この気分。

バベルの塔

Yamanoyu_01今日は月曜日で休み。
朝から雨が降っている。休日が雨のときは、指宿の温泉に向かうことが多い。露天風呂で雨に打たれるのって、とても気持ちがいい。数日前、shinoさんたちは「和の湯」に入ったそうだ。ぼくは「山の湯」というのを選んでみた。湯船が凝灰岩らしき岩石の無垢でできている。ひなびた雰囲気がにじみ出てて、なかなか良かった。いつものように写真を載せたけど、以前、このブログに載せたぼくの足の写真を見て「きちゃね~」というクレームがあったので、今日は控えめに載せた。
温泉から山をひとつ越えると池田湖。その傍らにある町営そうめん流しで昼食にした。ここのそうめん流しは、左利きの人には不利に作ってあるので、ぼくは親しい人に左利きがいると、思わず誘いたくなる。
Photo_21
ところが、今日来てみてびっくり。いつの間にこんなものが…。それとも今まで気づかなかっただけだろうか。上と下で回転方向が違う。
一見、バベルの塔。場内を見渡したところ、一台しかないようだった。
3人のOLが台を囲んでいたので、お願いして写真を撮らせてもらった。ちなみに、彼女らはみんな右利きだった。

↓ ちなみに、ふつうのヤツ ↓

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気分は日曜

朝からいいお天気だ。
日曜日には、日曜日の顔をしたお客さんがいらっしゃる。
おかげで、気分がらくだ。
コーヒーを飲みながら、音楽や映画の話をする。
ぼくは仕事だけど、気分は日曜日。
やはり日曜日はいいね。

Twilight Zone

書きたいことが多すぎる。
迷いに迷って、結局なにも書けない。
土曜日とは、そういう一日である。
という出だしで書きたかったのだが、ウソなのでやめることにした。
今日はヒマな一日だった。
大きな声では言えないが、ヒマな一日には、ある共通点がある。
そういう日には、決まって、ある特定のお客様が現れるのだ。
そう、それは特殊な能力の持ち主と言ってもいい。
それが他のお客様を寄せ付けない能力だといってるのではない。
お客様がいない時間帯を鋭く感知し、来店、滞在するという、稀有な能力なのである。
今日は、特殊能力をお持ちだ、と、ぼくが日頃から目星をつけていたお客様が、3名もいらしてしまった。
結果は予想通りであった。
この世には科学では説明できない、不可思議な領域が未だ残されているのである。