くぼみ

070811_01太陽が弱くなって夏が終わるように、ぼくのなかで何か弱っていく。なにかそこにぼんやりと見えてくるのだけど、なにか新しいものが現れるのではなく、なくなった何かの跡が見えてくるだけ。

夜のサボテン

070810_01店のお隣の家には、とても大きなサボテンが植わっている。おととい見たら花が咲いていた。ぼくが写真を撮っていると、奥さんが出てらして「花は夜に咲くんですよ。夜中に撮った写真があるから、メールで送りましょうか」とおっしゃった。ぼくはお願いした。「よかったら、このサボテン、あげましょうか」ぼくは欲しかったので、「ぜひください」と言った。ご主人が切り取ってくださったサボテンは、50センチ以上あり、ずしりと重くて片手では持てなかった。「10日間くらい干してから植えてください」とのことだった。何年くらいで、屋根まで届くサボテンになるのだろう。想像すると、とても愉快だ。ぼくの夏は、こうしてさらにステキなものになっていく。
以下、奥さんがメールで送ってくださった、夜のサボテン。
写真をクリックすると、大きな画像で見れます。
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さそり座

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夜風が涼しい。ぼくは屋上で星を眺めていた。夏の間、南の空をわがもの顔で陣取っていた化け物サソリも、今まさに遠くの山に沈もうとしている。どうやら夏も終わりが近づいたようだ。さみしい。ぼくはカメラを持ち出してきて、夏の記念にサソリの写真を撮った。アンタレスの上で強く輝いているのは木星。そういえば、13日の深夜、ペルセウス流星群が現れる予定だ。今年の夏は、なにかあっただろうか。ぼくは、なにか変わっただろうか。流れる星を眺めながら、考えてみることにしよう。

師匠との対話

070808_01「あの海の写真、いいね」
うん、表面の細かいところまで写ってて、ぼくも気に入ってる。
「あのマスターの表情もいいね」
そう?
「気持ちが伝わってくる」
でも、あの顔、スケベそうだね。
「あはは」
ねえ、あの写真はどう?
「うーん」
やっぱりダメかな。
「うん」

大掃除開始

070807_01来週の月曜から水曜日までの三日間、お店は休みだ。いわゆるひとつの「盆休み」である。毎年、盆休みの第一日目は大掃除に充てている。コーヒー豆を焼く機械を分解し、煙突はブラシで掃除する。大掛かりな作業なので一日で済まない。へたをすると丸二日かかってしまう。たった三日間の夏休みが二日になり、一日になり、最悪パァになる。それはある晴れた日に小さな恋を失うのと同じくらい悲しい。そこで今日みたいなヒマな日は、接客の合間を見ながら拭き掃除などの軽作業を済ませていく。あくまで接客の合間、なのだが、いらっしゃるお客様によっては拭き掃除をしながらの接客になる。

パンフォーカスな午後

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今日は休みであったが、今回は趣向を変えてホエールウォッチングに出かけることにした。わが家から南西に車で約一時間走ると、東シナ海に面した笠沙という魅力的な町にたどり着く。070806_01_4ここはホエールウォッチングも有名だが、焼酎を造る、杜氏の集落があるところでも名が知れており、杜氏の里、という立派な施設もある。ここは年中アイスクリームを売っているので、ぼくはとても重宝している。ホエールとはクジラのことであるが、道すがら、さっそく電柱にそれを発見したので10分ほどウォッチングしてみた。それにしても今日は天気が良い。空気がスッキリ澄んでいるようで、ずいぶん遠くまで見渡すことができる。070806_03さて、笠沙といえば、もちろん、あそこである。そう、ブルUNOという名の不思議なレストラン。実を言うと今日の本当の目的はココなのであった。海岸沿いの道をしばらく走ると、やがてわざと雑に作ったのかもしれないような手作り看板が見えてくる。その看板からレストランのほうに曲がろうとすると、目の前を走っていた軽トラックもそちらに曲がったではないか。お客さんかもしれない。駐車場に着くと、そのトラックから出てきたのはブルUNOのマスターであった。マスターは、ぼくの車に近づきながら
「水道が壊れてねー、今から修理。だから今日はちょっと」
と言ったが、ぼくの顔を見るなり、
「なんだ、あんたか。コーヒーならできるよ」と言った。
「水が無いのに?」
というと、コーヒー用の水ならある、とのことだった。
070806_04この店の屋外デッキからの眺めは掛値なしにすばらしい。ぼくはここでいつも長い時間、海を見ている。ほんとにいいところだ。今日はマスターがハーモニカを吹くところを写真に撮ろうと思っていたのだが、水道がぶっ壊れたとのことで、今から本人自ら工事だという。仕方が無いので、コーヒーを点てるところの写真を撮った。
見よ、必殺、薬缶ドリップ。
「マスターの顔をブログに貼ってもいい?」
ぼくが言うと
「顔が減るわけじゃないし、いいよ」
とのことだった。
 ☆ブルUNOの地図はこちら
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特殊相対性理論

070805_01ぼくはイスにすわって本を読んでいる。店にはだれもいない。だれのためにでもないピアノが流れていて、ぼくは変化が起こるのを待っている。それはたとえば、さきほどお客様がくださったコニャック入り手作りの生チョコが、ぼくのためにすばらしくおいしく変化する、といった類だ。もちろん、生チョコの味が変化するわけではない。ぼく自身が変わるということ。ぼくが変われば生チョコも変わる。生チョコが変わっても世界は変わらない。

夏祭りの頃

070804_02土曜日は仕事なのだけど、平日と違って、なんだかうれしい。気分は半ば、休みモードなのだ。豆を焼き終わって外の空気を吸うために駐車場に出ると、空の高いところで太陽が一人ギンギンにがんばって輝いている。ぼくは雲の写真を撮るのが好きなので、いい雲は出てないかな、と、ぐるりと空を見まわしたが、どれもイマイチであった。とりあえず店のビルの写真を一枚撮った。写真左に写っているステンレスの太いパイプが当店の煙突である。12月24日の深夜、サンタクロースはここから進入する。070804_01店に戻るとすぐに、お客様が次々にいらっしゃった。お客様でにぎわった店が静かになりはじめたころ、常連のAさんがいらっしゃった。彼女はいつも遠いところから1時間以上かけてコーヒー豆を買いにやってくる。休みの日しか来れないので、たくさん買っていく。今日は港祭りがあるそうで、道路が混雑する前に急いで帰るのだという。彼女を紹介してくれたお客様は、目の澄んだエキゾチックな美人だったが、一年前に結婚して以来、店に来ない。
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Aさん、見てるけ~
ケータイからだと、写真は見れないみたいだよ
パソコンで見てね~

こんな日

070802_01南の海からUSAGIがやってくる。地球はおもしろいね。宇宙のまん中にあって、いつもスポットに照らされている。ぼくは1億5000万キロの彼方から白く渦巻く雲を突き抜けてきた光で、くらい本を読んでいる。