山の中の店

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ばたばたと店じまいをし、車をとばして家に帰り着くなり家族をせかして車に乗せ、暗い夜道をひた走った。行き先は今日、店でお客さんに教えていただいた山の中の店。8時までにいらしてください、とのことでトイレに行くひまもなかった。走りながら、となりに座っているヨッパライ某に、お金は持ってきた?と聞くと、うん。という返事。以前、財布を忘れた前科があるので、以来、しつこく聞く癖がついてしまった。で、いくら持ってきたの? 一万円。えー、それじゃー足りんかもよ。だってOさんのオススメなんだから、それなりの店に決まってるじゃないか。するとヨッパライ某は、えーー、どうしよう。と言った。そこでぼくは、あんたが生ビールを飲まなきゃ何とかなるさ、と言った。

もし宝くじが当たっても

金曜日の午後はたいていヒマだ。外はこの冬一番の寒気とやらで、刺すような冷たい風が吹いている。そんなヒマな午後、カウンターでは二人の魅力的な主婦が熱いコーヒーを口に運んでいた。どういう脈絡からか、もし宝くじが当たったら、という話題で盛り上がっていたが、くじが当たっても絶対、夫には黙っている、と、二人はさも当然事のように頷きあい、ぼくに向き直って、女はみんなそうだよ、と、ためらいなく断言し、さらに、うそだと思うなら奥さんに聞いてみなさいよ、と、男族の端くれとしていささかの動揺を隠せないでいるぼくを軽く突き放した。そして、こういって、からからと笑った。
「男はしゃべるよねー、ぜったい」

標本

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小学生の頃の話。遊び仲間と連れ立って図書館横の博物館に何度も行ったものだった。その薄暗い部屋にはガラスの目玉を光らせた毛の抜けた剥製やホルマリン漬けの白々とした気色悪い標本が所狭しと並べられ、びくびくしながら見て回ったものだ。しかしこれら趣味の悪いコレクションには例外なく抗い切れない悪魔的な魅力が潜んでいた。その吸引力は大人になった今でも変わることがない。上の写真はアレを切り取って特殊な液体に漬けておいたものであるが、たまに低温貯蔵庫から取り出してきて料理に使うことがある。
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Blue Mountain No.1

夕方、常連のTさんが豆を買いにいらした。そして、
「今日はいそがしいからすぐに帰ります、ブルーマウンテンください」とおっしゃった。彼女がいつも買うのはトラジャ、フレンチ、グアテマラなので驚いていると、
「ダンナに飲ませてあげようと思って、うふ」と、にっこり笑った。
そして、ブルーマウンテンのほかに、いつものフレンチ、グアテマラを買って帰られた。ぼくはなんだか懐かしいような、とても温かい気分になった。彼女が帰った後、常連のMさんがいらっしゃって、やはりブルーマウンテンをお求めになった。そこでぼくは、さっきいらしたTさんの話をした。
「さっきいらっしゃった若い奥さんは、ご主人に飲ませてあげるんだ、と言って、これを買っていかれましたよ」するとMさんは、
「へえーっ、うらやましいですね。ぼくのうちじゃ、ぜったい考えられないな」と、寂しそうに笑った。
※ブルーマウンテンNo.1の売価は、ほかの珈琲豆の3倍くらいです
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 Blue Mountain No.1 生豆

魚を買いに行った

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スシを食いたくなったので南西に走った。
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漁港が近いせいか、ここのスシは安くてうまい。よーな気がする。
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海辺の某レストランの工事の進捗状況を確認しに行った。屋根ができていたが、まだ工事中だった。
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いつもの砂浜で遊んだ。
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漁港近くの店で魚を買った。手前のが500円。大きさはちょうど50cm。上の二つが100円。さっそくさばいて刺身にした。

モミの木は残らなかった

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10年以上前の話だ。クリスマス用に買ったモミの木を、クリスマスが終わった後、鉢から出して庭に植えた。高さ50cmほどの小さな苗だった。それが何年か経ってから、急に大きくなりだした。日に日に大きくなっていくモミの木を見てぼくは恐ろしくなった。この勢いで伸びていったら、数年後には家の高さまで伸びるだろう。そして10年も経てば、となりの家はモミの木の影になって日照不足に陥り、近所問題が発生する。困った。ぼくは勢いを増していくモミの木を前に、動物園のシロクマのように行ったりきたりしながら考えた。しかたがない、引っこ抜こう。しかし、それはロマンチストのぼくにはできないことだった。嫌なことは自分でしたくない。牛肉は大好きだけどウシさんはかわいそうだから殺せない、というあの勝手な感覚とそれは似ている。ぼくは庭の手入れに来た業者の方に持って行ってもらうことにした。その翌日、モミの木はなくなっていた。