すばしこいやつ

昼過ぎのことだ。お客さんから注文のあったブラジルコーヒーを袋に詰めるべく、その容器のところに行くと、そこに小さな蚊を発見した。そいつは先ほど、ぼくの腕から血を吸って逃げた生意気な蚊であった。ぼくは怒りに燃え、お客さんのことなど忘れて蚊を追い回し始めたが、その蚊はすばしこく、なかなか叩き落せない。見ていたお客さんも「右、ほらそこそこ、もう、なにやってんのよ」と興奮して叫び始めた。結局蚊はどこかに逃げてしまったが、その数分後、お客さんのそばに現れ、お客さんの攻撃を軽くかわしてどこかに消えた。お客さんは腕をかまれていた。

辛口で行こう

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今日は休みだ。さっそくドライブに出かけよう、とベッドを跳ね起きたが、窓の外は予報どおり雨。毎日毎日、飽きもせず、ずっと雨。ぼくはもう何年も太陽を見ていない。ような気がする。これだけ不順な天候が続くと、人の体内にも危険な生物が発生する。サナダムシ、回虫、ジストマ、ギョウチュウ、エイリアン。いわゆるパラサイトの類だ。用心しないと、いつの間にかこいつらに体を乗っ取られてしまうのである。というわけでパラサイト退治の定番、カレーを食べに某インド料理店に出かけることにした。写真は店の正面のシャッターアート。
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ぼくは一番辛いのを注文した。さすが本格インド料理店だけあって、家庭で作るカレーライスとは別のものであった。
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ぼくはカレーライスが食べたかったので米を頼んだが、ヨッパライ某はナンを注文。このナンがとてもうまかった。
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作ってくれた人

空気のような謎

人に聞いたり、本で調べたりしても分からない謎がある。その謎は、ふつうじゃない謎だ。とても大きく、リアルで切実な謎なのに、気づかない人も多い。

ぼくのあの傘、どこへいったんでしょうね

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空は今日も泣いていた。ぼくはポケットに1000円つっこみ、車のキーをひねった。車は曲がりくねった坂を登り続け、やがて雲の中のドライブインに着いた。ぼくは傘を差して吊橋に向かった。
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橋の下の谷にはアジサイが群生している。吊橋の中ほどから見下ろすと、アジサイはちょうど満開のようであった。傘を肩に載せて写真を撮っていると、俄かに風が吹き渡って、ぼくの傘を舞い上げた。傘はくるくる回りながら飛んでいって、谷の斜面に引っかかった。先日買ったばかりのビニール傘。
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ぼくはだれもいないのを確かめ、土手を下って傘を取りに行った。もちろん、道などない。するとどこからか男の声がした。
「命と傘と、どちらが大事か!」
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見ると、おそらく観光で来たと思われる恰幅のよい初老の紳士がこちらを見おろしている。ぼくにしてみれば、これくらいのことは茶飯事なので、ずいぶん大げさな、と思ったが、なんとなくうれしくて、
「ええ、十分に気をつけますから」と手を振った。
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彼はこちらを見つめたまま「気をつけるんだよ」と言い、
「これはあれだな、麦藁帽子の」と笑った。
「ええ、西条八十のあれですね」とぼくは応じた。
無事、ビニール傘を取り戻し、ぼくは帰路に就いた。
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途中、家の近くの某運動公園に寄ってみたら、某博覧会の後片付けをやっていた。
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