記憶の中の点滅

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通勤途中の山に山桜が咲いている。それが山桜とわかるのは咲いている時だけ。散ると山にとけてなくなってしまう。そして一週間もしないうちにぼくも忘れる。

片思いの友人たち

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今の仕事を始めてから、友人がずいぶん増えた。ぼくが勝手にそう思っているだけで、相手はぼくのことを友人と思っていないかもしれない。もしかすると嫌っているかもしれない。でも、それで全然かまわない。ぼくはそれで幸せだから

マリモ日記その11

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2年前のちょうど今頃、社員研修で北海道に行った。そのときぼくは自分へのみやげにマリモを買った。以来、星の王子さまがこの世に一つしかないバラにそうしたように、ぼくは特別な愛情をこめて世話をした。今日は、福岡の友人が持ってきた、期間限定、桜ひよ子を食べさせてあげた。かったが、無理なので見せてあげた。ところで今日は春分の日。数ある祝日の中で一番好きな祝日。地球と太陽の関係を祝う祝日だ。こんなに壮大な祝日は、春分と秋分のほかにはない。

空気の底

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この季節になると、空気の底からいろんなものが湧いてくる。
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それらは好きな形になって、風に揺れる。
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ぼくは空気の底をとぼとぼあるく。
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草原は輝く

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草原はいつも輝いている。うそじゃない。
ぼくはうそつきだが、いつもうそを言ってるわけじゃない。
草原はいつも輝いている。ほんとうの話だ。
これはとてもかんじんな事実なのだが、
よく知られているように、かんじんなことは目に見えない。

スパゲッティの正しい巻き方について

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低気圧が近づいているのかもしれない。なぜそう思うのかというと、特に理由もないのに憂鬱だから。そんな憂鬱な夜、こういう本を読むと、少しは気が晴れるように思う。その本には、たとえばこんなことが書いてある。「強風下におけるマッチの正しい使い方」
著者は伊丹十三。書名はヨーロッパ退屈日記

Back to the Future

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ぼくはよく後ろ向きに歩く。特に理由はない。何も考えていない。道にだれもいなかったり、広場を歩いているときなど、いつのまにか後ろ向きに歩いている。横に歩くことができれば横向きに歩くかもしれない。後ろ向きに歩くと時をかける少女のように時間を遡るのだったらおもしろいのだけど、そうはならない。

こっちをむいてよ

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庭にほったらかしにしてあったプランターに水仙が咲いた。植えた覚えがないし、去年は別の植物が植えてあったはず。とてもきれいな水仙だけど、残念ながら東を向いて咲いている。東は隣の家だ。プランターの向きを変えればいいのだろうけど、水仙にも考えがあって東を向いているのかもしれない。だからそのままにしてある。

ぼくと月だけ

みんな寝ている。
ぼくは風の音と月が気になって寝られない。
ドアを開け、外に出て月を見ている。
起きているのは、月とぼく

機械とお話

ずいぶん昔、ぼくがまだ学生だったころの話。ある夜、となりの部屋から妹の怒鳴り声が聞こえてきた。「だめだめ、あー、ばか。もう」ぼくはびっくりした。こんな夜中にいったい誰と話しているんだろう。だれか泊まりに来ているのだろうか。翌日得た答えは意外なものだった。妹はその日テレビを買い、自分の部屋に置いたのだ。そしてその夜、イヤホンをしてサスペンスドラマを見ていたのである。彼女はドラマの主人公に忠告を与えていたのだった。さて、今度iPhoneに音声認識機能「Siri」の日本語版が備わるのだそうだ。ぼくは持ってないからどうでもいいが、いわく、「いつもと同じ自然な話し方でSiriに話しかけて、したいことを伝えましょう。Siriはあなたの言葉だけでなく、その意味も理解し、音声で返事もします」のだそうだ。ぼくはこのニュースを読んで、忘れていたあの時の情景が浮かんだのだった。