胸が痛む夜

夜の帳が下りて店じまいを始めようとする頃、自宅にいるはずのヨッパライ某から電話があった。買い物から帰って玄関を開けようとしたら、鍵が壊れていてドアが開かない、という。そういえば数日前、鍵を回そうとして少々てこずった覚えがある。閉店後、ぼくは車を飛ばし、家に帰り着いた。当然ながら家は真っ暗。ヨッパライ某は駐車場の車の中で待っていた。どれどれ、とキーを差し込み、フォースを効かせて回そうとしたがビクともしない。ふっ、今日はフォースの調子が悪いようだ。腹もへってるしな。ぼくはアタマを空き巣モードに切り替えた。おそらく二階のあそこが開いている。あそこから入ろう。さっそくぼくは家の傍らの駐車場の屋根に上がってみた。家のひさしに手が届いたが、ぼくの懸垂力では無理。高さを稼ぐためにイスを置いてみた。だめだ。まだまだ高さが足りない。そこでイスの上に傘立てに使っている木の樽をのせてみた。まだ足りない。そこで、その上にもう一つ傘立てをのせてみた。高さはなんとかクリアしたが、かなり不安定だ。下で見ているヨッパライ某も不安そう。三段重ねの足台に上り、ひさしをつかみ、はい上がろうとしたその時、ポキ。心臓のあたりで変な音がした。ひさしが鋭角にとがっており、そこに胸を当てて体重をのせたのがよくなかった。肋骨にひびが入ったのかもしれない。さわると心臓のあたりが刺すように痛む。しくじった。ベランダに出るドアが開いていたので、そこから入って玄関を開けた。肋骨は失敗だったが、なかなか楽しい夜だった。

かばん

131212_01この四角いカバンの中には、なにが入っているのでしょう。
それは彼女が最近買った、あるもの

忘年会その2

131209_01昼から雨になる、ということでドライブはあきらめ、店のBGM用のCDをツタヤに借りにいった。帰りに団地の近くにできたソバ屋で昼食131209_02今夜はわが家の忘年会。今回は息子がプロデュース。まずは家族ピンポン大会。優勝賞金100,000円!だったらハッスルしたのだけどね。意外に強かったのがヨッパライ某とその母。ぼくとヨッパライ某はほぼ互角だった131209_03ピンポンに熱中して腹がへったところで会場をスシ屋に移し、みんなで乾杯。今回の忘年会が好評だったので、来年も息子が担当することになった。もちろん費用は担当者が負担131209_04

一番鶏

家に帰りついたのは午前3時だった。シャワーを浴びて屋上に上がると、空は星でいっぱいだった。オリオンは西に傾き、その上で木星が輝いていた。星は音もなく冷たく輝いている。その静けさが風呂上りの肌に心地よかった。4時を回ったころ、遠くで一番鶏が鳴いた

スタンプラリー

さっきコーヒーを飲んでいてふと思った。人生ってスタンプラリーみたいだな、って。あるとき、それまで漠然と付きまとっていた、拭いきれない、手に負えない違和感が、うっすら形になって目の前に現れる。そしてそれが、あっちだ、と指差す。指差したほうには何も見えない。でも、とにかくぼくは歩き出す。このやりきれない違和感から開放されたいから。歩いていくとなにか見えてくる。でもそこはゴールではない。次の指示が待っている。あっちだ、と

ヨッパライの独り言

ファインマンさんいわく「科学はすべて近似にすぎない」。つまり、いくら頑張ったって科学は真理に達し得ない。そりゃそうだ。そもそもこの私、認識の主体がどこから来たのかだれも知らない。思考の立脚点の実在を証明することなんてできない。ぶつぶつ。フロ入って寝よ

ストーブ

131203_0111月も終わりに近づいたある寒い朝、某コーヒー店の奥に忽然と石油ストーブが現れる。昨年もそうだった。なぜだろう。エアコンが壊れたわけでもないのだが。ここでその理由を書くと長くなるのでやめる。ストーブを焚いていると、時折奇妙な光景を目にする。ストーブの前にかがんで写真を撮っているお客さんがいるのだ。理由を聞くと、珍しいから、という。ストーブのどこが珍しいのだろう。昨年はアラジンのブルーフレームを置いていたが、これは、ちょっと珍しいので、写真を撮る女性が何人かいた。しかし、今年のはトヨトミだ。なんでこんなのが珍しいのだろう。