夜の帳が下りて店じまいを始めようとする頃、自宅にいるはずのヨッパライ某から電話があった。買い物から帰って玄関を開けようとしたら、鍵が壊れていてドアが開かない、という。そういえば数日前、鍵を回そうとして少々てこずった覚えがある。閉店後、ぼくは車を飛ばし、家に帰り着いた。当然ながら家は真っ暗。ヨッパライ某は駐車場の車の中で待っていた。どれどれ、とキーを差し込み、フォースを効かせて回そうとしたがビクともしない。ふっ、今日はフォースの調子が悪いようだ。腹もへってるしな。ぼくはアタマを空き巣モードに切り替えた。おそらく二階のあそこが開いている。あそこから入ろう。さっそくぼくは家の傍らの駐車場の屋根に上がってみた。家のひさしに手が届いたが、ぼくの懸垂力では無理。高さを稼ぐためにイスを置いてみた。だめだ。まだまだ高さが足りない。そこでイスの上に傘立てに使っている木の樽をのせてみた。まだ足りない。そこで、その上にもう一つ傘立てをのせてみた。高さはなんとかクリアしたが、かなり不安定だ。下で見ているヨッパライ某も不安そう。三段重ねの足台に上り、ひさしをつかみ、はい上がろうとしたその時、ポキ。心臓のあたりで変な音がした。ひさしが鋭角にとがっており、そこに胸を当てて体重をのせたのがよくなかった。肋骨にひびが入ったのかもしれない。さわると心臓のあたりが刺すように痛む。しくじった。ベランダに出るドアが開いていたので、そこから入って玄関を開けた。肋骨は失敗だったが、なかなか楽しい夜だった。
かばん
二日前
忘年会その2
一番鶏
家に帰りついたのは午前3時だった。シャワーを浴びて屋上に上がると、空は星でいっぱいだった。オリオンは西に傾き、その上で木星が輝いていた。星は音もなく冷たく輝いている。その静けさが風呂上りの肌に心地よかった。4時を回ったころ、遠くで一番鶏が鳴いた
二人でお鍋を 2
スタンプラリー
さっきコーヒーを飲んでいてふと思った。人生ってスタンプラリーみたいだな、って。あるとき、それまで漠然と付きまとっていた、拭いきれない、手に負えない違和感が、うっすら形になって目の前に現れる。そしてそれが、あっちだ、と指差す。指差したほうには何も見えない。でも、とにかくぼくは歩き出す。このやりきれない違和感から開放されたいから。歩いていくとなにか見えてくる。でもそこはゴールではない。次の指示が待っている。あっちだ、と
ヨッパライの独り言
ファインマンさんいわく「科学はすべて近似にすぎない」。つまり、いくら頑張ったって科学は真理に達し得ない。そりゃそうだ。そもそもこの私、認識の主体がどこから来たのかだれも知らない。思考の立脚点の実在を証明することなんてできない。ぶつぶつ。フロ入って寝よ