アイス曇り

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「曇った空に、ブラックモンブランは似合わないわ」
君は笑顔でそう言ったね。
今でもおぼえてる。あのときの君の横顔を。
ぼくはなにも考えず、ただ笑ってうなずいた。
でも、君はほんとうは笑ってなんかいなかったんだ。
君はそれきり、電話に出なくなった。
あれがさよならの言葉だっただなんて。

空のコマンド

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もう灰色の空には飽きてしまった。
ぼくはポケットからリモコンを取りだし、空に向けてボタンを押した。
 上 上 下 下 左 右 左 右 B A

三分の二

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よく降る雨。知られたくない何かを洗い流そうとするように。
踊り続ける小さな雨。
一楽章が終わり、二楽章も終わる。
そしてワルツ。雨と一緒にぼくも踊る。
※ しばらくコメントにお返事できそうにありませんので、コメント欄を閉じます。

やわらかなもの

吹く風が心地よい。どうやら風邪が治ったようだ。風邪をひいている間は、いろんなものが硬く感じた。空気が硬く、水が硬い。硬い言葉、硬い表情。そんな硬さがイヤだったせいか、ぼくの言葉はクラゲのようになった。風邪をひいているあいだ、ぼくはぼんやりした頭でこう思った。やわらかいのが良いな、と。やわらかなものに、ゆるやかに包まれていたいな、と。開高健によれば、ルイ11世の言葉にこういうのがあるらしい。
飲むのはつめたく
寝るのはやわらかく
垂れるのはあたたかく
立つのはかたく
とにかく、今日は気分がいい。
風邪をひく前と比べ、5歳くらい若返ったような気がする。

熱のある日

今日のぼくはいつもと違っていた。
熱があるせいだとおもった。
めまいがするし、少し、吐き気もする。
それに、指の先が、電気を帯びたようにピリピリする。
これはもしかすると、スプーンが曲がるかもしれない、と思い、椅子に座って、スプーンの首をしばらくこすってみた。
しかし、何も起きなかった。

雨の午後かぜをひいているぼく

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風邪をひいたようだ。手のひらがほてっている。そうして
ぼくの時計は次第にゆっくりまわり始め、どんどん遅れていく。
1秒が1.2秒になって、やがて1.6秒くらいになる。
そういう世界では、人の声も、トンネルを歩いているゾウのオナラのように響く。
ゾウさん、もう少し小さな声で、そしてゆっくりしゃべってくださいよ。と、ぼくはテレパシーで文句を言う。通じないけど。
窓の外は雨
いつもと違ってきこえる、雨の音。
何か、ぼくに話しかけているように聞こえるのだけど。
「わたしのこと、いつになったら思い出してくれるの」
そういって、ぼくを責めている。

SURF BREAK from

今日は休みだった。
そんなわけで、日がな一日、波の音に浸っていた。
ザザーン
ザブーン
シュワシュワ
ザザーン
ザブーン
シュワシュワ
そんな中で、ぼくは洗濯物をたたんだり、掃除機をかけたり、料理を作ったりした。
ザザーン
ザブーン
シュワシュワ
ザザーン
ザブーン
シュワシュワ
わが家の家事担当は、風邪で寝込んでいる。
だから、ぼくが代わりに家事をしている。
ザザーン
ザブーン
シュワシュワ
ザザーン
ザブーン
シュワシュワ
ステレオからは、日がな一日、浅井慎平のSURF BREAK from JAMAICAがかかっていた。
ザザーン
ザブーン
シュワシュワ
ザザーン
ザブーン
シュワシュワ

さそり座と木星

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雨上がりのせいなのか、空が煙っている。夜中だというのに、空はずいぶん明るい。ここに引っ越してきた頃は、星もたくさんみえたのに。
だけどこんな空でも、星の見える空は、やはり、うれしい。