屋上に出てベンチに座り、いつものように夜空を仰ぐ。オリオンは西に傾き、星空のステージから降りようとしている。BGMはバッハのBWV639。果てしない宇宙には重厚なパイプオルガンの音色がふさわしいのだが、屋上に置いてないので、かわりにぼくが口笛を吹く。北斗七星の横を尾を曳いて星が流れる。あれだけ強く輝きながら、まったく無音。ジェット機はあれよりずっと小さいくせに唸りながら飛ぶ。ぼくの物語にはバッハが流れ、不意に流星が飛ぶ。そしてぼくはときどきつぶやく。ぼくの物語はこんなふうに続く。
ムーミン谷のカバは冬眠から覚めただろうか
二匹の犬
夜、風呂から上がって屋上に出た。遠くで犬が吠えている。それが山に跳ね返って、もう一度聞こえる。すると犬がまた吠える。犬は別の犬が吠えたと勘違いしているらしい。二匹の犬は交互に吠え続けていた。
本に埋もれて
あの時君は若かった。今も若いけど

今日はずいぶん久しぶりでしたね。
びっくりしました。結婚したなんて。2年前?でしたっけ。
しかも出産のために帰って来たなんて。
あのころとなりに座っていた無口なおじさんもきっとビックリするでしょう。うーん、あの頃が懐かしいですね。
ファーブルな一日
マジナイの文字

白熱電球タイプの蛍光灯が出回り始めた頃の話。電気代4分の1、寿命5倍、ってことで、古い電球が切れる度に、当時まだ高価だった最先端のこの電球に取り替えたものだった。ところが、この新しい電球がよく切れる。白熱灯より先に切れる。何度もそういうことがあって、ぼくはこの最先端の蛍光灯電球に不信感を抱くようになった。こんな単純な電気製品が簡単に壊れるなんて思いもしないので電気店のレシートも保存していない。以来、ぼくは最先端の電球を買うと真っ先に日付を書き記し、レシートを保存しておくようになった。ところがそれからというもの、ウソのようにまったく切れない。切れてくれない。なんだかこの数字がマジナイの文字に見えてきた今日この頃。














