今日は何もすることがない。朝、外に出ようとしたら二人の職員に止められ、外出禁止です!との事だった。昨日から本ばかり読んでるせいか頭が重い。ブックリーダーでたまたま選んだ本がどれも主人公が闘病生活をする話で、なんだか滅入った。気分を変えようとロビーで挽きたてを謳うカップコーヒーを買ったが、これがひどく薄くて力が抜けた。窓の外はビルの群れ、空は灰色、頭はカラッポ。このまま悟りの境地に入ってもおかしくない
今日は誰かの誕生日
フラワー
明日から休まないといけないのです
雨の月曜日
失われた時を求めて
ぼくは疲れきっていた。遅い夕食を終え、テーブルを立とうとしたとき、ふと傍らに小さなお菓子の箱があるのに気付いた。ふたを開けると柏餅と桜餅が入っていた。ふだんはこういうものには手を出さないのだが、酔っていたせいか桜餅に手が伸びた。口に放り込むと懐かしい香りが広がった。と、突然部屋が天然色に色彩を帯びて明るく広がったように感じられ、思わずあたりを見回してしまった。そういえば、ある本に同じようなことが書いてあった。ただしそれは桜餅ではなくマドレーヌだったが。
しかし、お菓子のかけらのまじった一口の紅茶が、口蓋にふれた瞬間に、私は身ぶるいした、私のなかに起こっている異常なことに気がついて。すばらしい快感が私を襲ったのであった、孤立した、原因のわからない快感である。その快感は、たちまち私に人生の転変を無縁のものにし、人生の災厄を無害だと思わせ、人生の短さを錯覚だと感じさせたのであった、あたかも恋のはたらきとおなじように、そして何か貴重な本質で私を満たしながら、というよりも、その本質は私のなかにあるのではなくて、私そのものであった。私は自分をつまらないもの、偶発的なもの、死すべきものと感じることをすでにやめていた。
マルセル・プルースト 失われた時を求めて
なお、翌日ぼくは柏餅でも試してみたが、何も起こらなかった





























