珈琲の袋を手にしたお客さんを見送って時計を見ると、12時を少し回っていた。冷蔵庫から弁当を取り出し、電子レンジに入れる。いつもは、ご飯とみそ汁の二つなのだけど、今日は昨夜の残りのタイカレーがプラスされていて三つある。全部温めると5分以上かかる。この待ち時間が厄介だ。短いようで長く、いつも持て余す。たいてい、近くに積んである本をつかみ、適当にめくって、そこを読む。
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「やあ、こんばんは。こちらはラジオK・E・Bのポップス・テレフォン・リクエスト。ラジオ聴いててくれたかい?」
僕は口の中に残っていたチーズクラッカーを慌ててビールで喉の奥に流し込んだ。
「ラジオ?」
「そう、ラジオ。文明が生んだ最良の機械だ。電気掃除機よりずっと精密だし、冷蔵庫よりずっと小さく、テレビよりずっと安い。君は今何してた?」
「本を読んでました」
「チッチッチ、駄目だよ、そりゃ。ラジオを聴かなきゃ駄目さ。本を読んだって孤独になるだけさ、そうだろ?」
「ええ」
「本なんてものはスパゲティーをゆでる間の時間つぶしに片手で読むものさ。わかったかい?」
チン! そこで電子レンジが鳴った