歩いても歩いても、目の前に現れてくるのは白い砂ばかり。ぼくは太陽がじりじり照りつける砂漠を歩き続けた。ふと風が止まり、見上げると地平線の彼方に瑞々しい緑のヤシが揺らいでいる。
ああ、やっとたどり着いた。
そう思ったのも束の間、すでにそこには何もない。幻だった。あるのは、あいかわらず、どこまでも続く白い砂。
今日は土曜日。珈琲と音楽好きの仲間がK氏宅に集まった。明かりを落とした薄暗い部屋の両隅で、その装置はかすかな唸りを上げてスタンバイしていた。
突然、人々のざわめきの中にトランペットの乾いた音が立ち上がった。部屋は一瞬にして無限大に広がり、右手前方7、8メートルのところにトランペットを口にしたマイルスが立った。曲は「Time After Time」。
写真は、今回の鑑賞会の主役、「グラスマスター」という真空管アンプ。優れたオーディオ装置は録音現場の音場をリアルに再生する。ぼくはそこにマイルスの幻を見た。幻を追い続けて実体に至ることはないが、幻を追わないと実体の美しさが見えてこない、ような気がしたK氏宅での夜。
なお、写真はK氏のHPから拝借しました。
“男は幻を追う” への4件の返信
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大人の男たちの集まり。って感じですね。かっこいいです!私が真空管アンプを初めて見たのは、50代の男性の家です。お家自体が素敵だったのですが、石蔵の反響を利用したその方の音楽に対するこだわりが印象に残っています。こだわりにこだわってしまうところは、大人の男性の魅力の一つだと思います。それにプラス可愛さがあれば…私はツバメになります(爆)。
うちは珈琲豆を売ってるのですが、わざわざマメで買い、自分で挽いて自分で淹れる奇特な方がお見えになるお店です(笑)
缶コーヒーやインスタントもあるのに。こだわってるんですね。ここはそんなお客様ばかり。こだわり病の人が集まってくる。音にこだわり、車にこだわり、映画にこだわり、女性にこだわ…ってるのはぼくだけかもしれないけど(爆)、まぁ、変な人ばかり。役に立ちそうもない妙な美学を追求するんですよ、ぼくらは。
そういえば前出の「幸福の王子」の作者、オスカーワイルドはこんな余計なことも言ってますよ。
男は退屈から結婚する。
女は物好きから結婚する。
そして双方とも失望する・・・ほんとかね。
一度失望すると、今度は希望が出てきますよ。また裏切られたりするのかもしれないけど…(失笑)今は希望中です!
希望っていい言葉ですよね。
たしかパンドラの箱も最後に希望が残されてたんでしたよね。
ぼくの人生のモットーは、求めよ!です。
望まなければ得られない、と思ってます。