昼過ぎ、いつものオネエさんがコーヒーを買いにいらした。カウンターに腰掛けるなり、いつもにも増して浮かぬ顔でぼくを見つめるので、どうしたんですか、と聞くと、今にも泣きそうな顔で「歯が痛くて。歯医者の帰りなんです」と、おっしゃる。そこで、かわいそうに、というと、いっそう悲劇的な様子になった。そこでぼくはこのドラマのバランスを適正化するために、今朝ぼくに訪れた、悲劇一歩前的な話をすることにした。それは次のようなものである。
今朝、ぼくはいつものように目覚め、洗面所に向かった。顔を洗っていると、突然激しいめまいと吐き気に襲われた。ベッドに戻り、しばらくじっとしていると、歩ける程度に回復した。血圧が低いので、このようなことは度々起きる。でも、今朝のはいつもと程度が違っていた。アタマのどこかで非常事態を告げるランプが激しく明滅している。しかし今日は店を休むわけにはいかない。今日中に済まさなければならない仕事が山積みなのだ。車を運転し、坂を下りきったところで再びめまいに襲われた。世界が上下左右に揺れている。必死にハンドルを操ってカーブをそろそろ曲がり、橋を渡って左折、車を止めようと思った。が、そこでめまいが少し治まった。そのまま走り続けていると、まためまいと吐き気が。だめだ、どこかに車を止めて迎えに来てもらおう。と、思いつつ、結局、ずるずると走り続けてしまった。事故を起こしたら大変なのに。店が近づいてきた頃、まためまいと吐き気がひどくなった。なんとか店にたどり着き、イスに座ったところで動けなくなった。体が冷えていくのがわかる。まずいな、救急車を呼ばなくては、と思いつつも、人が集まってきたらカッコ悪いし、などと、遠のいていく意識の中でぼんやり考えていた。どれくらい時間がたったのだろう。手のひらが温かくなってきたのに気づいた。意識もはっきりしてきた。甘いものを食べたい、と感じたので、冷蔵庫にあった果物を全部食べた。そしたら嘘のように具合が良くなってきた。
と、以上のような話をすると、オネエさんは、たぶん、低血糖じゃないかな、と言った。低血糖?ぼくはきょとんとした。ぼくは何か重大な病気の前触れではないかと、ずっと気を揉んでいたのだ。そういえば、ぼくは朝食をとらない。昨日は半日、山や畑を歩き回っていた。その間、食事は摂らずコーヒーばかり飲んでいた。ん~、たしかにそれかもしれない。たぶんそうだろう。そうであってほしい。
オネエさんは、歯の薬が効いてきたらしく、いつもの笑顔に戻り、健康って大事だよねー、と明るく言った。
“臨死体験一歩前” への2件の返信
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臨死体験より写真が観られなくて寂しい・・・ではなくて、ホントニ病院へ行かれるのが正解です。信号無視は危ないですから。私の場合クラクラ病(すぐに魅せられる症候群)かなぁ、真面目な話:めまいと嘔吐の信号から通院が始まりました。低血圧&白血球減少症候群プラスマルヒ病etcですが。
くれぐれもお大事になさって下さいね。
追伸
リンク~残して下さって嬉しいです。パソコンの引っ越しを機にHP解約しましたのでお手数ですが、掲示板URLでリンクさせて下さいませ。スミマセン。
今朝病院に行ってきました。原因は分からない、という答えでした。よくあるパターンなのかもしれません。というわけで、南のお告げに聞きに行かなくてはならないのかもしれません。ストーリーはまだまだ続きそうです。
リンクの件、了解しました。