閉店間際、仕入先の若いニィちゃんがやってきた。
彼は日本人ドミニカ移民の2世。当店の人気珈琲豆「田畑農園」の生豆は彼の会社から仕入れている。
「明日、こんなものが入ってきますよ」カウンターの椅子に腰かけるなり、彼は大きな封筒から一枚の紙切れを出した。
紙面には「赤外線を当てると青く輝く琥珀」と書いてあるだけで、もったいぶって封筒から出すほどのものじゃない。
しかし、ぼくの興味は大いにそそられた。
なぜなら、琥珀はその生成上きわめて保存状態のよい小動物の化石をふくんでいることがある。
マイケルクライトンの「ジュラシックパーク」はそこに着目して出来上がった小説だ。
「虫が入ってるのを探して持ってきてくれ」ぼくはポケットをたたいて見せた。
(ポケットには大金が入っている…フリ)
じゃあ原石を持ってきます。虫が入ってるのもあると思いますよ、と彼は言った。
ドミニカ…ぼくの頭には琥珀の産地としてインプットされている。
珈琲も最近仲間入りしたが。