やさしい朝

081114_01
ぐっすり眠ると、ぼくは人にやさしくなれる。これは本当だ。昨夜ベッドに入ったのは12時だった。いつもより2時間早い。今朝、通勤途中の曲がりくねった狭い坂を下っていると、前から恐ろしくヘタクソな車がヨタヨタと上ってきた。見ると、髪の長い女の子が必死にハンドルにしがみついている。ぼくは左の土手に車体がこするほど寄せて停止し、彼女の車が余裕で通れるようにしてあげた。自分でも驚くほどやさしい態度だった。しかし、すれ違うときに彼女を見たら、彼女は男だった。とたん、わけのわからない怒りがふつふつと湧き上がってきた。でも、眠り足りていたせいか、その怒りは坂を下りたあたりで霧のように消えていた。しかし、その先で広い道路に出ようとしたときに、突然、目のうつろなじじいが斜めに突っ込んできて道路をふさいだ。死ぬほど驚いた。何を考えているのだろう。さすがに腹が立ち、窓を開け、バカヤロ~と叫びそうになったがやめた。そう、眠り足りたぼくはやさしい。やさしくないとすれば、それは世の中の方だ。