仕事を終え、家に帰りついたのは午後8時だった。喉が渇いていたので、夕食前にヨッパライ某を誘い、屋上で缶ビールを開けた。空は雨雲に覆われていたが、わずかな雲間から西の空には太った三日月、南の空には木星と土星が顔を出していた。ぼくはビール片手に、あれが木星、その左が土星、と説明した。ビールを飲みながら映画の話をしていると、流れる雲間から、ベガとアルタイル、続けてデネブがひょっこり顔を出した。ぼくはすかさず、あれが織姫と彦星、そして白鳥座のシッポ、と説明した。満天の星だと星が多すぎて、どれが何なのか説明しにくい。でも、舞台に立った役者にスポットライトが当たるように星が登場したおかげで簡単に説明できた。