奇妙な題名の本

おととい、某所でシロクマを食べた帰り、いつもの本屋に寄った。整然と並んだ書架の間を歩いていると、なんだか自分がインテリになったような気分になって、ちょっとうれしかった。ネットでamazonをうろついてもそんな気分にはならない。ヨッパライ某は珍しく新書コーナーに陣取り、なにかを探していた。ぼくは図鑑コーナーで魚の写真を眺めた後、いつものようにブルーバックスの書架で何かおもしろそうなのはないか探した。すると「科学者はなぜ神を信じるのか」という、奇妙な題名の本が平積みになっていてぎょっとした。ブルーバックスといえば自然科学を専門に扱った新書のはず。「科学者はなぜ神を信じるのか」なんて問いを立てた本を出すのは非常識とは言わないまでも変じゃないのか。深読みするなら、神を信じない科学者は科学者とは言えない、とも読める。そんな本が、こともあろうにブルーバックスから刊行されている、というわけで、さっそく買って読んでみた。

結果からいうと、これが意外にもおもしろかったし、勉強になった。予想した突飛な論述はひとつもない。物理学、特に、量子力学は哲学的でもあり、スリリングで興味深かった。ソルベイ会議のとき、ホテルで研究者たちが科学と神について語り合った様子については、一流の科学者たちの謙虚で誠実な態度に感動すらした。

以下、そのソルベイ会議部分の抜粋


ところで、この時のソルベイ会議は、量子力学をになう若手研究者たちが一堂に集まったという意味でも、特筆すべきものでした。ド・ブロイ、シュレーディンガー、ハイゼンベルク、パウリ、ディラックらの、錚々たるメンバーです。ある夜に、彼らのうちの幾人かがホテルのラウンジに残り、科学と神について語り合った模様をメンバーの一人のハイゼンベルクが書き留めた、実に興味深い記録が残っています。邦訳はされていませんので、私のつたない訳ですが、その抄録をご覧いただきましょう。