ノルウェーの島には「世界の終末」のために備えられた「世界種子貯蔵庫」があるそうだ。貯蔵庫内は摂氏マイナス18~20度に保たれ、万が一、冷却装置が故障した場合にも永久凍土層によってマイナス4度を維持できる環境に置かれているという。
時にカルミンはぼくにとってエイトマンのタバコのような役割を果たす重要なお菓子であったが、昨年3月をもって生産を終了してしまった。世界の終末のことは感覚的によくわからない。しかし、ぼく個人が慣れ親しんでいる主観的な世界は常時終末の危機に晒され、日々浸食され続けている。これは痛切な現実だ。たとえば、昨年に引き続き、行きつけの喫茶店を今年も一つ失った。
今日は夏の疲れの第二波のようなものがぼくを襲った。熱いコーヒーを何杯も飲んだが、効果はなかった。ぼくは貯蔵庫から今では入手不可能となったカルミンを取り出して口に放り込み、心の奥の井戸に水が満ちてくるのを待った。